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第15話
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あと少しで出て行けたのに!
「……立ち聞きとは、下品極まりないな。」
「何いってるの?立ち聞きなんてしていないわ。たまたま扉が開いてたから入ってみただけじゃない。しかもここは夫婦の部屋でしょ?」
「お前……!!」
何抜かしてんのよ。仮にも妻、いえ、妻本人なのよ私はっ!不本意だけどね!
「近重さん、私に何か御用ですか?」
私たちのやり取りをひっそりと、居た堪れないといった雰囲気で聞いている近重さんに話を変えた。
「あ、はい……本日茶道の先生が、お着物でのレッスンを所望されておりますので、若奥様にもお着替えいただこうと思いまして。」
「着物?私、持ってないけど」
「こちらに用意しております。きっとお似合いですよ。」
見ると、近重さんが着物をわざわざ私の部屋まで運んでいるようだった。
「ふんっ、せいぜい頑張れ。すぐに根をあげて踏ん反り返るお前の姿が楽しみだ。」
当然その場にいた夫は全て聞いていたようで、また嫌味を楽しげに話す。
私はもうそんな夫を無視して、着物を着るために自分の部屋へと向かった。
ドアを閉めて、思い切り溜息をついた私に、
「大丈夫ですか?若奥様。坊っちゃまは少々ぶっきらぼうな所がありますので、お察しします。」
と、近重さんは同情心を寄せてきた。
「あのぅ、いつもあんな感じなんでしょうか?あの人。」
私の質問に戸惑いつつも、
「昔はもっとお優しかったそうですが……きっとお忙しすぎるのでしょう。差し出がましいかと思いますが、きっと若奥様のお力添えに期待しているのではないでしょうか?それを上手く言葉にできないのかもしれません。私共はいつもそう願っております。」
と、真面目に答えてくれた。
私に期待?
あの俺様野郎が何を望んでいるってのか?
「あ、申し訳ありません。忘れ物をしてしまったので、1階に戻ります。すぐに参りますので。」
近重さんは何か小物を忘れたみたいで、慌てて私の部屋を出た。
入れ替わりに武田さんと毛利さんが入ってきて、本日いらっしゃる茶道の講師の方のプロフィールなどの資料を持ってきた。
茶道も華道もやったことなどない。
書道は学校の授業で少し筆を使ったくらいだ。
考えれば考えるほど頭が重たくなるが、あの夫にバカにされたくはない。
だから、なんとしてもやってやる!
私は今までにない反骨精神とやらに満たされ、それから1週間、2週間と様々な講義を受けてきた。
だが、遠藤家に来てからちょうど3週間目に当たる日に、ベッドから出られないくらいの高熱が出てしまった。
☆☆☆
頭が痛い……、体が熱い。
視界がぼやけ、思うように言葉が紡がれない。
「詩豆ちゃん、大丈夫!?顔が真っ赤だわっ。無理してしまったのねきっと。ゆっくり休むのよ。」
姑が来たらしい。
この屋敷で私を名前で呼ぶのは義両親以外にいない。
「……はぁ、はぁ……はい……ありがとうございます……」
たったの3週間で根をあげるなど、予定には無いことだ。
悔しいけど、今はそれどころじゃない。
39度の熱が出たことで、毛利さん近重さん武田さんは交代交代で夜通し看病してくれている。
たまに解熱剤が効いてきて、周りの状況に気がつくが、すぐにまた上がってきてしまう。
意識が朦朧とする中、私は夢を見た。
あの、嫌味ったらしい傲慢チキな夫が泣いてる夢を。
大人げなく、鼻水もダラダラと流しながら、必死に私の名前を呼んでいた。
だけど私は夫の手を振りほどき、ここを出て行った夢……
ああ、もしかしたら半分現実なのかな。あの夫が、私を惜しむように泣くなどあり得ない話だけど、私が出て行くのは……ありそうな話。
だって、ほら、彼には女がいるし……
あの電話の相手は……誰?
「……立ち聞きとは、下品極まりないな。」
「何いってるの?立ち聞きなんてしていないわ。たまたま扉が開いてたから入ってみただけじゃない。しかもここは夫婦の部屋でしょ?」
「お前……!!」
何抜かしてんのよ。仮にも妻、いえ、妻本人なのよ私はっ!不本意だけどね!
「近重さん、私に何か御用ですか?」
私たちのやり取りをひっそりと、居た堪れないといった雰囲気で聞いている近重さんに話を変えた。
「あ、はい……本日茶道の先生が、お着物でのレッスンを所望されておりますので、若奥様にもお着替えいただこうと思いまして。」
「着物?私、持ってないけど」
「こちらに用意しております。きっとお似合いですよ。」
見ると、近重さんが着物をわざわざ私の部屋まで運んでいるようだった。
「ふんっ、せいぜい頑張れ。すぐに根をあげて踏ん反り返るお前の姿が楽しみだ。」
当然その場にいた夫は全て聞いていたようで、また嫌味を楽しげに話す。
私はもうそんな夫を無視して、着物を着るために自分の部屋へと向かった。
ドアを閉めて、思い切り溜息をついた私に、
「大丈夫ですか?若奥様。坊っちゃまは少々ぶっきらぼうな所がありますので、お察しします。」
と、近重さんは同情心を寄せてきた。
「あのぅ、いつもあんな感じなんでしょうか?あの人。」
私の質問に戸惑いつつも、
「昔はもっとお優しかったそうですが……きっとお忙しすぎるのでしょう。差し出がましいかと思いますが、きっと若奥様のお力添えに期待しているのではないでしょうか?それを上手く言葉にできないのかもしれません。私共はいつもそう願っております。」
と、真面目に答えてくれた。
私に期待?
あの俺様野郎が何を望んでいるってのか?
「あ、申し訳ありません。忘れ物をしてしまったので、1階に戻ります。すぐに参りますので。」
近重さんは何か小物を忘れたみたいで、慌てて私の部屋を出た。
入れ替わりに武田さんと毛利さんが入ってきて、本日いらっしゃる茶道の講師の方のプロフィールなどの資料を持ってきた。
茶道も華道もやったことなどない。
書道は学校の授業で少し筆を使ったくらいだ。
考えれば考えるほど頭が重たくなるが、あの夫にバカにされたくはない。
だから、なんとしてもやってやる!
私は今までにない反骨精神とやらに満たされ、それから1週間、2週間と様々な講義を受けてきた。
だが、遠藤家に来てからちょうど3週間目に当たる日に、ベッドから出られないくらいの高熱が出てしまった。
☆☆☆
頭が痛い……、体が熱い。
視界がぼやけ、思うように言葉が紡がれない。
「詩豆ちゃん、大丈夫!?顔が真っ赤だわっ。無理してしまったのねきっと。ゆっくり休むのよ。」
姑が来たらしい。
この屋敷で私を名前で呼ぶのは義両親以外にいない。
「……はぁ、はぁ……はい……ありがとうございます……」
たったの3週間で根をあげるなど、予定には無いことだ。
悔しいけど、今はそれどころじゃない。
39度の熱が出たことで、毛利さん近重さん武田さんは交代交代で夜通し看病してくれている。
たまに解熱剤が効いてきて、周りの状況に気がつくが、すぐにまた上がってきてしまう。
意識が朦朧とする中、私は夢を見た。
あの、嫌味ったらしい傲慢チキな夫が泣いてる夢を。
大人げなく、鼻水もダラダラと流しながら、必死に私の名前を呼んでいた。
だけど私は夫の手を振りほどき、ここを出て行った夢……
ああ、もしかしたら半分現実なのかな。あの夫が、私を惜しむように泣くなどあり得ない話だけど、私が出て行くのは……ありそうな話。
だって、ほら、彼には女がいるし……
あの電話の相手は……誰?
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