嘘つきは私かもしれない

koyumi

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第1話

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 ドンッ!ドンッ!ドンッ!


 朝7時。まだ夢から覚めてもいないのに、頭を打つような激しい音に、私は飛び起きた。

(いねえのか?ここだよなぁ、名波、詩、……まめえ?なんかこれ地名じゃねえのか?こんな名前あんのかよっ)

(ええ?……いや、これ……菓子かなんかの名前じゃね?マジかよっ、間違えてるよこれ、やっべえな……)

(馬鹿たれっ!!確認せえやっ!通報されっぞ。)

 明らかにヤバい感じの人達の声が、玄関ドアの向こうから聞こえる。

 名波ななみ、合ってるよ!
 でも、地名じゃないし。伊豆いずとかじゃないし。
 もちろん、まめじゃないし、菓子じゃないし。

 だけど、そんなこと正している場合じゃない。

 なんかわかんないけど、ヤバくない?ヤバすぎない?

 私何かしたっけ?
 ど、どうしよう?


 音を立てないように、そーっと覗き穴から外を見た。

「…………」

 怖い…………

 見るんじゃなかった。
 でも、気づいてよかった。

 彼らは本物だ。

 でも……何故?
 なんでうちの前に?
 なんで私の名前を?

 
 またまたそーっと忍び足で動き、玄関から離れてベッドまで行く。

「…………」

 枕元にある携帯電話を手に取り、ゆっくりと布団に潜り込んだ。


「…………」


 何一つ音がしない。
 ひとまずドンドンドアを叩くのはやめたようだ。
 
 月曜日の朝、ただでさえ憂鬱なのに尋常じゃないことが起こっている。

『ブー、ブー、ブー、』
「ひゃっ」

 不意に携帯電話が鳴り、思わず悲鳴をあげた。
 ヤバい、気づかれたかっ!?

 そっと電話を操作し、今きたメールを開いた。

(ん?父さんからだ……)

『すまない。今手を打った。もうじき奴らはいなくなる。そしたら至急帰ってくるように。悪いな、しず。』

「えっ!?」

 つまり、この状況をうちの親は知っているということか!?
 なんで?なんで?なんでこんなことに?

 素早く父親に電話をかけるものの、繋がらない。母親にかけても留守電になる。弟にかけても、やっぱりダメだ。

 とにかくパニックの私は、それから15分、玄関前からドカドカと3人組が去って行く音を確認できるまでベッドから出なかった。


 そーっとまた覗き穴から彼らの不在を確認し、
「………ふ、ふぅ~」
と、忽ち安堵すると、慌ててトイレに駆け込んだ。
 
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