3 / 8
第一話 転校生
2 異界、あるいは遭遇
しおりを挟む
ロウヤは着慣れたタンクトップとカーゴパンツに着替え、夜の旧校舎に忍び込む。光源はない。闇の中で動く程度、能力者であるロウヤには容易いことだった。昼間の街中を歩くように進む。
昼間に確認した機械警備は、どれも既に壊されていた。自分以外にも、常世箱を狙った存在がいるのだろう。けれど、持ち出された気配はない。失敗し逃げ帰ったのか、あるいは。
「お。あれだ」
廊下の突き当りに飾られた、大きな鏡の前に立つ。木枠のつけられた鏡は、複数人が同時に姿を移せる大きさ。埃がうすく積もっているが、傷一つない鏡面はぬらぬらと光っている。目を細めて、右下の木枠に彫られた飾りを確認する。龍の彫り物の一つに、黒目がない。白目を押さえるように指を重ね、丹田に力を込める。霊力が体に満ちていく。己の目をゆっくりと閉じた。
落下する感覚。
ロウヤが目を開くと、目の前には変わらず鏡がある。けれど背後に映る世界は、紫のモヤに覆われていた。瓶の底の澱のように漂うのは、霊力と怨念。
「……ちょっとコレは、レベルの違う異界だな」
常世箱が隠された、常人では立ち入ることができない場所。異界自体はありふれている。道に迷わせる程度の低級なものばかりだが。しかし、これは違う。無限に続く廊下に、窓の外には天地のひっくり返ったグラウンド。
極めつけは低級霊――ケモノダマだ。怨念を残して死んだ生物の魂が、破れたカーテンや抜けた床穴から目を光らせている。まるであらゆる執念が、常世箱を目指して這い回っているようだった。
「集めに集めたもんだな……っと」
ロウヤは歩きはじめる。足を掴む、爪をむき出しにした手を蹴り飛ばす。肩口から襲いかかる鋭い牙を、軽く首を振って躱した。なおも首筋に齧りつこうとするケモノダマに指先を向ける。猫か猛禽類の爪のように曲げた指先で、素早く宙を掻いた。
ざん、と風を切る音がする。見えない猛獣の牙で引き裂かれたように、ケモノダマは千切れていた。小さなモヤの塊に成り果てて、空気に霧散していく。しばらくはあのままだろう。姿を取り戻して害をなすようになるまでは――二年はかかるか。きちんと手順を踏んだ封印をすればいいが、今の目的は除霊ではない。
ロウヤはため息を吐き、左の手のひらを見つめる。傷跡から溢れる力を意識した。
ずるり、と傷口の中央から最初に現れたのは、犬科の鼻面だ。濡れて光る黒い鼻が、すぴすぴと周囲の匂いを嗅ぐ。
「出てこい、ソル」
言葉に引かれるように勢いよく、獣が姿を表す。大きな顎と小さな耳。たし、と旧校舎の床に立ったのは、半透明の狼だった。陽炎のように全身が揺らめいており、実体のある存在ではない。
「よーし。気を引き締めていくぜ、相棒」
クゥ、と小さく甘えるように鳴く。霊体の狼は緩く体をロウヤの足に擦り付けると、先頭に立った。ぴく、と小さく耳を動かし、無限の廊下の角を見つめる。その方角に何かがあるのだろう。ロウヤはソルに合わせて駆け出した。
異界の中は入り組んでいる。入り口には戻れるよう印をつけておいたが、三分前に通った場所へは戻れない。背後の道はぐねぐねと変質している。ソルの鼻を頼りに、ケモノダマを蹴散らしながら進んだ。
きいん。鋭い金属のような気配が、耳を掠めた。
「――ソル、止まれ」
ロウヤは立ち止まると同時に、指先に力を込める。曲がり角の先の気配にソルも気づいているのだろう、体を低くし、喉の奥で小さく唸った。
霊力が膨れ上がっている。生半なケモノダマとは違う、練り上げられた気配。完璧に組み立てられたパズルのような、歪みのない力。
覚えがある。昼間の校庭の暑苦しい風。
ロウヤは片頬を持ち上げた。カーゴパンツのポケットに、手を無造作に突っ込んだ。ソルは不思議そうにロウヤを見上げる。微笑み返して、ロウヤは角を曲がった。
「よう」
まるで知り合いにでも挨拶するように、ロウヤは軽く手を持ち上げる。相手は不愉快そうに眉をひそめ、ゆっくりと両手で剣を構えた。青白い刀身の倭刀。白い装束は軍服のようにしっかりとしているが、細い肉体に変わりはない。伸びかけを結った黒い髪。冷酷とも見える視線で、彼は言った。
「何をしている」
黒塚ジョウ。希衣子に紹介された守り人は、刃先と敵意をロウヤに向けたままそう問いかけた。
「駄目だぜ、こんな所にいる奴とハナシをしようとしても。泥棒か強盗に決まってるだろ」
「……ならず者め」
真面目そうに長い眉を持ち上げる。ジョウの長い足の横を、するりと白い光の玉が動いた。大きな耳を持つ、四足歩行のシルエット。ふさふさと大きな尾は紐で結われている。霊体の狐は口を開いた。高い女の声が聞こえる。
「ジョウ。相手が年若いからといえ、惑わされるでないぞ。あやつは並々ならぬ霊力の持ち主じゃ」
「……わかっております。ゲッカ、力を」
ロウヤはひゅうと口笛を吹いた。ケモノダマを使い魔にしているどころか、対話している。相当の年月を修行に費やしたのだろう。そして、ハイレベルなケモノダマを味方につけた。
ゲッカと呼ばれた狐は、するりと飛び上がる。白い炎になり、ジョウの持つ倭刀に宿った。
「やる気か? いいぜ、挨拶したかったんだ」
「盗人風情が挨拶か」
時代劇めいた口調に、ふっとロウヤは吹き出しかけた。爺ちゃんが好きだったな、と目を細める。そして、拳を軽く持ち上げた。
「おう。俺は転校生、阿闍梨ロウヤだ――よろしくな」
先に動いたのはジョウだった。踏み込みが重い。いままで玄人を相手にしてきていたのだろう、剣筋に怯えがない。倭刀の切っ先がロウヤを貫こうとする。ロウヤは、斜め前に踏み込んだ。体を回転させ、ジョウの腕を掴もうとする。その筋は読まれていたのだろう、ジョウは冷静に退く。たん、といい響きを立ててウサギのようにまた踏み込んだ。
ロウヤは拳を開いた。龍の爪のように、虎の牙のように霊力を漲らせる。体をぐっと低くし、タックルするようにジョウへ飛び込む。腹に目掛けて爪を向けると、角度を変えられた倭刀の切っ先がロウヤを迎えた。
怯まない。
素手で刃を掴む。本来であれば、無意味どころか大馬鹿者の行動だ。
「なっ!」
ロウヤの両手は、霊力でコーティングされている。攻防一体の頑丈な手甲をつけているのと変わりない。全力でもぎ取ればいい。
力を込めた瞬間だった。
めら、とジョウの肩口に炎が燃える。青白い炎だ。ジョウの全身を、燐光を放つ炎が包んだ。
「――ッ?」
ロウヤの手に、痛みが走る。青い炎は徐々に刃に移り、その鋭さを増していく。
「獣神一体、雪月花」
ジョウの姿は、先程の狐と人を合わせたようなものに変化していた。黒髪をかき分けて、淡く透ける白い狐の耳が尖る。腰からは大きな尾が下がっていた。足先も指先も、手袋でも嵌めたかのように半透明の毛皮に覆われている。
「へぇ……っ、面白い、技だな」
ロウヤの軽口に、ジョウは答えない。ただ力を込め、ぎりぎりとロウヤの手に痛みを与え続ける。ロウヤは脂汗を滲ませ、力強くなったジョウの攻撃をこらえ続ける。
「俺にも教えて欲しいもんだ」
「……降伏しろ。負けを認めれば、見逃してやる」
ジョウの霊力は増し続けている。体勢を崩さないよう抗うのがやっとだ。
ロウヤは笑った。
「負けちゃいねえよ」
矢を射るような鋭い音がした。
ジョウが素早く背後を振り向く。そこには、熊ほどの大きさのケモノダマが立っている。今にもジョウの背中へ鋭い爪を振り下ろそうとしていた。
「ッ!」
霧散する巨大なケモノダマ。掻き分けるように狼が現れ、ジョウの横を抜けてロウヤの隣に立つ。
「ソル、お手柄だ」
「……なんだと」
ロウヤはソルの耳下をもふもふと掻いてやる。嬉しげに目が細められた。ジョウはゆっくりと剣を構え直す。しかしその目線には戸惑いが浮かんでいた。
「お前は――味方に、私の背中を襲わせなかったのか?」
ロウヤは頷き、伸びをする。切っ先を恐れず、肩を回した。ニッ、と大きく笑った。
「邪魔が入ったら面白くねえだろ?」
ジョウの肉体から青い炎が消える。再び一体の狐に戻り、ジョウの足元へ降り立つ。
「なんじゃ、こやつは……ジョウ。縛り上げて本家へ差し出すがよい」
高慢な姫君の口調で、ゲッカと呼ばれた狐は言う。
「それでもいいぜ。できるもんならな」
ロウヤは頷く。本家が何だかはわからないが、親玉とハナシをつけるのが早いとは思っていた。常世箱を見つけるために、人脈は多いほうがいい。ジョウは目線を揺らす。
鋭い声で、ジョウは言った。
「――帰れ。お前の素性については調べさせる」
「お。優しいねえ」
ロウヤが笑いかけると、ジョウは背を向ける。まだこの旧校舎の見回りを続けるようだった。
遠のくジョウの影に、ゲッカが近づいていく。きんきんと高い声が、ロウヤにも聞こえた。
「よいのか? それではあやつに……」
ロウヤは拳で頬の汗を拭うと、ソルを撫でる。鏡の前へ戻るため歩き始めた。
昼間に確認した機械警備は、どれも既に壊されていた。自分以外にも、常世箱を狙った存在がいるのだろう。けれど、持ち出された気配はない。失敗し逃げ帰ったのか、あるいは。
「お。あれだ」
廊下の突き当りに飾られた、大きな鏡の前に立つ。木枠のつけられた鏡は、複数人が同時に姿を移せる大きさ。埃がうすく積もっているが、傷一つない鏡面はぬらぬらと光っている。目を細めて、右下の木枠に彫られた飾りを確認する。龍の彫り物の一つに、黒目がない。白目を押さえるように指を重ね、丹田に力を込める。霊力が体に満ちていく。己の目をゆっくりと閉じた。
落下する感覚。
ロウヤが目を開くと、目の前には変わらず鏡がある。けれど背後に映る世界は、紫のモヤに覆われていた。瓶の底の澱のように漂うのは、霊力と怨念。
「……ちょっとコレは、レベルの違う異界だな」
常世箱が隠された、常人では立ち入ることができない場所。異界自体はありふれている。道に迷わせる程度の低級なものばかりだが。しかし、これは違う。無限に続く廊下に、窓の外には天地のひっくり返ったグラウンド。
極めつけは低級霊――ケモノダマだ。怨念を残して死んだ生物の魂が、破れたカーテンや抜けた床穴から目を光らせている。まるであらゆる執念が、常世箱を目指して這い回っているようだった。
「集めに集めたもんだな……っと」
ロウヤは歩きはじめる。足を掴む、爪をむき出しにした手を蹴り飛ばす。肩口から襲いかかる鋭い牙を、軽く首を振って躱した。なおも首筋に齧りつこうとするケモノダマに指先を向ける。猫か猛禽類の爪のように曲げた指先で、素早く宙を掻いた。
ざん、と風を切る音がする。見えない猛獣の牙で引き裂かれたように、ケモノダマは千切れていた。小さなモヤの塊に成り果てて、空気に霧散していく。しばらくはあのままだろう。姿を取り戻して害をなすようになるまでは――二年はかかるか。きちんと手順を踏んだ封印をすればいいが、今の目的は除霊ではない。
ロウヤはため息を吐き、左の手のひらを見つめる。傷跡から溢れる力を意識した。
ずるり、と傷口の中央から最初に現れたのは、犬科の鼻面だ。濡れて光る黒い鼻が、すぴすぴと周囲の匂いを嗅ぐ。
「出てこい、ソル」
言葉に引かれるように勢いよく、獣が姿を表す。大きな顎と小さな耳。たし、と旧校舎の床に立ったのは、半透明の狼だった。陽炎のように全身が揺らめいており、実体のある存在ではない。
「よーし。気を引き締めていくぜ、相棒」
クゥ、と小さく甘えるように鳴く。霊体の狼は緩く体をロウヤの足に擦り付けると、先頭に立った。ぴく、と小さく耳を動かし、無限の廊下の角を見つめる。その方角に何かがあるのだろう。ロウヤはソルに合わせて駆け出した。
異界の中は入り組んでいる。入り口には戻れるよう印をつけておいたが、三分前に通った場所へは戻れない。背後の道はぐねぐねと変質している。ソルの鼻を頼りに、ケモノダマを蹴散らしながら進んだ。
きいん。鋭い金属のような気配が、耳を掠めた。
「――ソル、止まれ」
ロウヤは立ち止まると同時に、指先に力を込める。曲がり角の先の気配にソルも気づいているのだろう、体を低くし、喉の奥で小さく唸った。
霊力が膨れ上がっている。生半なケモノダマとは違う、練り上げられた気配。完璧に組み立てられたパズルのような、歪みのない力。
覚えがある。昼間の校庭の暑苦しい風。
ロウヤは片頬を持ち上げた。カーゴパンツのポケットに、手を無造作に突っ込んだ。ソルは不思議そうにロウヤを見上げる。微笑み返して、ロウヤは角を曲がった。
「よう」
まるで知り合いにでも挨拶するように、ロウヤは軽く手を持ち上げる。相手は不愉快そうに眉をひそめ、ゆっくりと両手で剣を構えた。青白い刀身の倭刀。白い装束は軍服のようにしっかりとしているが、細い肉体に変わりはない。伸びかけを結った黒い髪。冷酷とも見える視線で、彼は言った。
「何をしている」
黒塚ジョウ。希衣子に紹介された守り人は、刃先と敵意をロウヤに向けたままそう問いかけた。
「駄目だぜ、こんな所にいる奴とハナシをしようとしても。泥棒か強盗に決まってるだろ」
「……ならず者め」
真面目そうに長い眉を持ち上げる。ジョウの長い足の横を、するりと白い光の玉が動いた。大きな耳を持つ、四足歩行のシルエット。ふさふさと大きな尾は紐で結われている。霊体の狐は口を開いた。高い女の声が聞こえる。
「ジョウ。相手が年若いからといえ、惑わされるでないぞ。あやつは並々ならぬ霊力の持ち主じゃ」
「……わかっております。ゲッカ、力を」
ロウヤはひゅうと口笛を吹いた。ケモノダマを使い魔にしているどころか、対話している。相当の年月を修行に費やしたのだろう。そして、ハイレベルなケモノダマを味方につけた。
ゲッカと呼ばれた狐は、するりと飛び上がる。白い炎になり、ジョウの持つ倭刀に宿った。
「やる気か? いいぜ、挨拶したかったんだ」
「盗人風情が挨拶か」
時代劇めいた口調に、ふっとロウヤは吹き出しかけた。爺ちゃんが好きだったな、と目を細める。そして、拳を軽く持ち上げた。
「おう。俺は転校生、阿闍梨ロウヤだ――よろしくな」
先に動いたのはジョウだった。踏み込みが重い。いままで玄人を相手にしてきていたのだろう、剣筋に怯えがない。倭刀の切っ先がロウヤを貫こうとする。ロウヤは、斜め前に踏み込んだ。体を回転させ、ジョウの腕を掴もうとする。その筋は読まれていたのだろう、ジョウは冷静に退く。たん、といい響きを立ててウサギのようにまた踏み込んだ。
ロウヤは拳を開いた。龍の爪のように、虎の牙のように霊力を漲らせる。体をぐっと低くし、タックルするようにジョウへ飛び込む。腹に目掛けて爪を向けると、角度を変えられた倭刀の切っ先がロウヤを迎えた。
怯まない。
素手で刃を掴む。本来であれば、無意味どころか大馬鹿者の行動だ。
「なっ!」
ロウヤの両手は、霊力でコーティングされている。攻防一体の頑丈な手甲をつけているのと変わりない。全力でもぎ取ればいい。
力を込めた瞬間だった。
めら、とジョウの肩口に炎が燃える。青白い炎だ。ジョウの全身を、燐光を放つ炎が包んだ。
「――ッ?」
ロウヤの手に、痛みが走る。青い炎は徐々に刃に移り、その鋭さを増していく。
「獣神一体、雪月花」
ジョウの姿は、先程の狐と人を合わせたようなものに変化していた。黒髪をかき分けて、淡く透ける白い狐の耳が尖る。腰からは大きな尾が下がっていた。足先も指先も、手袋でも嵌めたかのように半透明の毛皮に覆われている。
「へぇ……っ、面白い、技だな」
ロウヤの軽口に、ジョウは答えない。ただ力を込め、ぎりぎりとロウヤの手に痛みを与え続ける。ロウヤは脂汗を滲ませ、力強くなったジョウの攻撃をこらえ続ける。
「俺にも教えて欲しいもんだ」
「……降伏しろ。負けを認めれば、見逃してやる」
ジョウの霊力は増し続けている。体勢を崩さないよう抗うのがやっとだ。
ロウヤは笑った。
「負けちゃいねえよ」
矢を射るような鋭い音がした。
ジョウが素早く背後を振り向く。そこには、熊ほどの大きさのケモノダマが立っている。今にもジョウの背中へ鋭い爪を振り下ろそうとしていた。
「ッ!」
霧散する巨大なケモノダマ。掻き分けるように狼が現れ、ジョウの横を抜けてロウヤの隣に立つ。
「ソル、お手柄だ」
「……なんだと」
ロウヤはソルの耳下をもふもふと掻いてやる。嬉しげに目が細められた。ジョウはゆっくりと剣を構え直す。しかしその目線には戸惑いが浮かんでいた。
「お前は――味方に、私の背中を襲わせなかったのか?」
ロウヤは頷き、伸びをする。切っ先を恐れず、肩を回した。ニッ、と大きく笑った。
「邪魔が入ったら面白くねえだろ?」
ジョウの肉体から青い炎が消える。再び一体の狐に戻り、ジョウの足元へ降り立つ。
「なんじゃ、こやつは……ジョウ。縛り上げて本家へ差し出すがよい」
高慢な姫君の口調で、ゲッカと呼ばれた狐は言う。
「それでもいいぜ。できるもんならな」
ロウヤは頷く。本家が何だかはわからないが、親玉とハナシをつけるのが早いとは思っていた。常世箱を見つけるために、人脈は多いほうがいい。ジョウは目線を揺らす。
鋭い声で、ジョウは言った。
「――帰れ。お前の素性については調べさせる」
「お。優しいねえ」
ロウヤが笑いかけると、ジョウは背を向ける。まだこの旧校舎の見回りを続けるようだった。
遠のくジョウの影に、ゲッカが近づいていく。きんきんと高い声が、ロウヤにも聞こえた。
「よいのか? それではあやつに……」
ロウヤは拳で頬の汗を拭うと、ソルを撫でる。鏡の前へ戻るため歩き始めた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
産卵おじさんと大食いおじさんのなんでもない日常
丸井まー(旧:まー)
BL
余剰な魔力を卵として毎朝産むおじさんと大食らいのおじさんの二人のなんでもない日常。
飄々とした魔導具技師✕厳つい警邏学校の教官。
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。全15話。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる