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第十三話

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ライズレット殿下とお会いする約束のために、王宮へと向かった。

「わざわざお時間を作っていただき、ありがとうこまざいます」

「堅苦しい挨拶はいい、座ってくれ」

ライズレット殿下に促され席に着いた。

「体調は良くなったのか?」

心配そうに声をかけてきた。

「そのことなのですが、決して私は体調が悪かったわけではありません。商団を立ち上げておりまして、そちらが忙しかったのです」

「なるほど。いないのでは都合が悪いと思い、体調不良にしたのだな」

たしかに、それも一理ある。

「殿下からの手紙が私の元に届かなかったもので、いない旨を伝えられませんでした」

「ベリル嬢が忙しくて見忘れた可能性もあるのではないか?」

そんな風に言われてしまえば、返答に困る。そんなことはあり得ないとは言い切れない。実際にココの実が手に入った時のことを考えて、必要な道具を思い出して、探し回っていた。
かと言って、ルーシー様がわざと見せないようにしているというのは確信を持てない以上言えない。

「たしかに…その可能性も考えられます」

「助けてくれるいい家族じゃないか」

捉え方が違うとこんなにも変わるものなのね。

「妹にプレゼントを下さったようで、ありがとうございます」

「君にも送ったはずだが?」

やはり、私に送ってはいたのね。

「継母から、私には何も届いていないと言われました」

ライズレット殿下はうーん、と少し考え込んだ。

「宛名を書かなかったのかもしれないな。それで誰の物かわからなかったのかもしれん。次からは気をつけよう」

どうしてだろう…何かと継母の肩を持つような答えが返ってくる。
何も知らない人が聞いたら、私が継母を告げ口しているように聞こえてしまうような気がする。

「私もきちんと確認をすれば良かったのです。申し訳ありませでした」

「いや、私も悪かった」

「サーシャは新しい環境の中でも、明るく元気で素直な子だな。ベリル譲も新しい家族と仲良くしてみてはいかがかな?」

ルーシー様には嫌悪感を抱かれ、サーシャは私の話を聞かないことを言った所で、きっと2人の肩を持つだろう。

「はい…努力いたします」

「良かった。さぁ、美味しいお菓子も用意させたんだ、食べてくれ。」

殿下はいつもの王子スマイルで、何事もなかったようにお茶会を再開させた。

ルーシー様の「言っても無駄だけどね」の意味がやっと分かった。




ベリル譲が帰っていった庭園で、私は新しく入れてもらった紅茶を飲んでいた。

「ある程度落ち着いたら帰るのだろうが、あそこまで好き勝手させておいていいのだろうか?
侯爵が何も言わないのであれば、私からも言わない方がいいだろう」

「父上からも、丁重に持て成せと言われているしな…」

誰もいなくなった庭園を眺めながら深いため息をついた。

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