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第五話
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外へ出ると、屋敷の裏には山が聳え立っていた。
この山でなら果物を作れるかもしれない。
あまり目立たない場所を探してみる。
奥の方なのか、上の方なのかわからないが、だいぶ山道を進んできた。
「まだ体力がないから、疲れる…」
今日はここまでにして、自室へ一度戻ることにした。
またこの場所に戻れることを願い、目印を書いておいた。
自室へ戻り、スムージーを片手に厨房を探す方法を考えていた。
ゲームでは敵から見えにくくする魔法があったはず…でも、具体的に思い浮かべるのは難しい。呪文があれば楽なんだけど、この世界にはないらしい。
「念じるだけでもいける?」
とりあえずやってみよう。
「認識阻害…私のことは見えない見えない…」
うーん…魔法がかかっているのかわからないけど、とりあえず部屋を出てみる。
いつも使用人からは無視されるから、魔法の威力がわからない。わざと使用人の前で止まってみた。
「痛っ!」
「えっ!?何かにぶつかったはず?えっ!?どういうこと???何もないのにぶつかった???」
尻もちをついた使用人は首を傾げながら、どこかへ行ってしまった。
「これは魔法の効果ありね」
厨房を探しに行きましょう。
ちょうど良いタイミングで、香ばしい匂いがしてきた。きっと夕食の準備をしているのだろう。
匂いを辿って厨房へと向かった。
「厨房の近くに食べ物の保管庫があるはずよね…」
厨房の中に入り、地下へと続く階段を見つけた。
「これでお肉もゲットできる!」
胃の調子が良くなってからは、肉を食べて体力作りをしなくちゃね。
保管庫の奥の方にまた目印をつけて、自室へと戻った。
「これで、調味料も手に入るから料理の幅が広がる~」
るんるん気分でこれからどんな料理を作ろうか悩んでいると、ドアが勢いよく開いた。
ドアの方を確認するために体の向きを変えようと思った時に頬に鋭い痛みが足った。
「おまえは私の言ったことが聞けないのか?」
頬の痛みが強すぎてなのか、この声の持ち主に恐怖してなのかわからないが、声が出ない。体も動かない。どうすればいいのかわからないでいた。
「部屋から出るなと言ったはずだ。こんな簡単なこともできないのか?役立たずのお前をここに置いてやってるだけ感謝すればいいものを…」
「聞いているのか!」
大きな声と共に、もう片方の頬に痛みが走った。
これはとりあえず謝って、この場をやり過ごすしかない。
「す…すいませんでした。ど…ど…どうかゆ…るしてくだ…さい」
両頬の痛みをなんとか我慢しながら、なんとか声を発することができた。
「ふん!生きていたければ、もうこの部屋から出るな!」
なんとかこれで許してもらえそうだ。
「魔法が使えない娘なんぞ、我が一族の恥だというのに!これでは嫁にもだせん、使い道のない奴め!」
「まぁまぁ、お父様。そんなに怒ってはお体に悪いですわ」
また胡散臭い笑顔で微笑む妹の姿があった。
「あぁ、ラリマーは本当に天使のように優しいな。一緒にいるだかで癒されるようだ」
はいはい、美しい親子愛ですねー、私の部屋から出てからやってくれないかしら?
「あぁ、お姉様。お父様の言うことはきちんと聞かないとダメですよ?」
笑顔で私に近付き、抱きついてきた。そして、耳元で小さな声で言った。
「はやく死んでほしいなぁ、邪魔」
天使のような笑顔の下は、醜い悪魔がいる。このままこの家にいてはいけないと確信した。
この山でなら果物を作れるかもしれない。
あまり目立たない場所を探してみる。
奥の方なのか、上の方なのかわからないが、だいぶ山道を進んできた。
「まだ体力がないから、疲れる…」
今日はここまでにして、自室へ一度戻ることにした。
またこの場所に戻れることを願い、目印を書いておいた。
自室へ戻り、スムージーを片手に厨房を探す方法を考えていた。
ゲームでは敵から見えにくくする魔法があったはず…でも、具体的に思い浮かべるのは難しい。呪文があれば楽なんだけど、この世界にはないらしい。
「念じるだけでもいける?」
とりあえずやってみよう。
「認識阻害…私のことは見えない見えない…」
うーん…魔法がかかっているのかわからないけど、とりあえず部屋を出てみる。
いつも使用人からは無視されるから、魔法の威力がわからない。わざと使用人の前で止まってみた。
「痛っ!」
「えっ!?何かにぶつかったはず?えっ!?どういうこと???何もないのにぶつかった???」
尻もちをついた使用人は首を傾げながら、どこかへ行ってしまった。
「これは魔法の効果ありね」
厨房を探しに行きましょう。
ちょうど良いタイミングで、香ばしい匂いがしてきた。きっと夕食の準備をしているのだろう。
匂いを辿って厨房へと向かった。
「厨房の近くに食べ物の保管庫があるはずよね…」
厨房の中に入り、地下へと続く階段を見つけた。
「これでお肉もゲットできる!」
胃の調子が良くなってからは、肉を食べて体力作りをしなくちゃね。
保管庫の奥の方にまた目印をつけて、自室へと戻った。
「これで、調味料も手に入るから料理の幅が広がる~」
るんるん気分でこれからどんな料理を作ろうか悩んでいると、ドアが勢いよく開いた。
ドアの方を確認するために体の向きを変えようと思った時に頬に鋭い痛みが足った。
「おまえは私の言ったことが聞けないのか?」
頬の痛みが強すぎてなのか、この声の持ち主に恐怖してなのかわからないが、声が出ない。体も動かない。どうすればいいのかわからないでいた。
「部屋から出るなと言ったはずだ。こんな簡単なこともできないのか?役立たずのお前をここに置いてやってるだけ感謝すればいいものを…」
「聞いているのか!」
大きな声と共に、もう片方の頬に痛みが走った。
これはとりあえず謝って、この場をやり過ごすしかない。
「す…すいませんでした。ど…ど…どうかゆ…るしてくだ…さい」
両頬の痛みをなんとか我慢しながら、なんとか声を発することができた。
「ふん!生きていたければ、もうこの部屋から出るな!」
なんとかこれで許してもらえそうだ。
「魔法が使えない娘なんぞ、我が一族の恥だというのに!これでは嫁にもだせん、使い道のない奴め!」
「まぁまぁ、お父様。そんなに怒ってはお体に悪いですわ」
また胡散臭い笑顔で微笑む妹の姿があった。
「あぁ、ラリマーは本当に天使のように優しいな。一緒にいるだかで癒されるようだ」
はいはい、美しい親子愛ですねー、私の部屋から出てからやってくれないかしら?
「あぁ、お姉様。お父様の言うことはきちんと聞かないとダメですよ?」
笑顔で私に近付き、抱きついてきた。そして、耳元で小さな声で言った。
「はやく死んでほしいなぁ、邪魔」
天使のような笑顔の下は、醜い悪魔がいる。このままこの家にいてはいけないと確信した。
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