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【とある老人の人生】春のある日

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|| まえがき
※ いつもの注意書き
・この「【とある老人の人生】永遠のノスタルジア」の
小説シリーズのメインテーマは
「老いの良さ」「老いの楽しみ方」です。
・そこまで長くないので「あとがき」まで読んでいただけると
内容がよくわかります。

|| 本編
 今年も桜の花が咲いた。
もう春か…。そう短く思いながら
家の近くの公園の桜並木と言えるほどでもない桜並木を眺める。

昔は毎年この時期に、親友と二人で桜を見に行ったり、
友人たちと桜並木のある大きな公園で花見をしたものだ。

だが、ある時から仕事に本気で専念するために
その類いの誘いは一切断ることにしていた。

それからはその友人たちとは疎遠になり、今や何十年も時が経った。
桜は、咲く度に仕事の合間に見れる所で見るようにしていたが、
その後、仕事以外で花見はしなかった。それでいいと思っていた。

今頃、かつての友人たちは何をしているだろうか…。
気にはなるが連絡は取らない。それで良い。
会えば懐かしいだろうが、一人は一人で良いものなのだ。
今はもうただ静かに暮らしたい。

桜をふとした折に眺めに行き、
一人、純粋にただただそれを美しいと思える今の暮らしこそが
私の幸福なのだ。

この"舞姫"に希望を感じるのは何度目だろうか。
その時々を思い出しながらただただ桜花を眺める。
それで良いのだ。

|| あとがき
※ 今回の"本編"の意図
 昔は友人と桜を見るような一般的な人間関係の幸せもあったけれども
それは完全に味わい尽くし、生きるため仕事に没頭し、
年老いた余裕のある今は、
桜花を見た時々の様々を思い出して大切に反芻しながらも
ただただ目の前の今現在の命の息吹と死を興じ、満足する。
それもまた一つの老いた人生の良さ・楽しみ方・味わい方ではないかと
思い、今回の”本編”の「春のある日」を執筆しました。
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