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27、夏休み突入
しおりを挟む遂に夏休み突入した。いつも恒例の実家に遊びに行く。久しぶりにあった両親は、初孫である司を溺愛している。アイツが亡くなった時は、率先して手伝いに来てくれて本当に助かった。近くに住む姉ちゃん夫婦と甥っ子と姪っ子も遊びに来てて、みんなで旅行に行くのが恒例の行事だ。まだ姉ちゃんとこの子供は、小さくてワンパクだ。小学生だからな。
それが終わると、今度はアイツの実家に。義理の弟である晃くんが、海外から帰省したタイミングで会いにいっている。彼には司が特に懐いているんだ。
それに、お義姉さんの子供、つまり司にとって従兄弟がいるんだけど、司より年上だから気が合うみたい。普段から色々相談もしているみたいだから、嬉しそうだ。
夕飯の支度をしているお義母さんを手伝う。いいわよーと言ってくれるが、料理を俺に色々教えてくれたのはお義母さんだ。うちの母とは違ってかなり美味しい。だから、味を覚えさせてくださいと言って手伝っている。
人数が多いから、出来たらすぐにテーブルに持っていく。既に大人たちは晩酌している。子供たちは、我先にご飯に食いついていて賑やかだ。お義姉さんは仕事でまだ来てない。やっとひと段落ついて、俺とお義母さんと2人、皆とは違うキッチンにあるテーブルで食べている。あっちでは落ち着いて食べれないからな。
「んまっ!お義母さん、これすごく美味しい。絶対これ作ろっと。」
アイツの家族とは高校からの付き合いだから、気心が知れているし遠慮は特にない。だけど、お義母さんの発言に、ぶはっと唾を吐くことになった。
「ねぇ、ねぇ、飛鳥ちゃん、いい人出来たの??」
ちょうど飲んでいたお茶を吹いてしまって、咳き込む。
「ごほっ、ごほっ、な、なんて?」
いや、俺の聞き間違えだよな?!
「だ、か、ら、恋人いるんでしょ?」
聞き間違えじゃなかったぁーーーーー!
「どんな人なの?あら教えてくれてもいいじゃない。反対なんてもちろんしないわよ。だって飛鳥ちゃんこんなに可愛くて素敵なんだもん。まだ若いんだから、いっぱい恋愛しなきゃ♡」
キャピキャピして話しかけてくる。
「ただいまぁ~!はぁ、疲れたぁ。母さん、お、飛鳥ちゃんお久!なになに?なんの話?」
や、ヤバい。お義姉さんがきてしまった。こうなったら白状させられてしまう。逃げないと・・・
「あ、じゃあ、俺ご飯ついできますね!」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、ガシッと腕を掴まれて、ギラついた目とかち合った。あ、逃げれないやつだ。
しくしく。
白状させられた・・・。まだ誰にも言ったことないのに。しかも夫の母親と姉。
泣いている俺の横で、バクバク豪快にご飯を食べながら、お義母さんと盛り上がってる。キャーキャー言って、陽斗くんの写真も見させられた。絶対この美少年、逃がすなって言われてしまった。そして、絶対結婚式に呼べって。シクシク。
ピロロロン♪、ピロロロン♪・・・
その時スマホが震える。隠そうとした時には既に遅く、お義母さんたちに陽斗くんの文字を見られる。キャーキャー言って、早く出なさいって凄まれた。
「も、もしもし?」
『あ、飛鳥さんこんばんわ。今、いいですか?あれ?まだ賑やかですね。寝る前じゃないんですか?』
よく気がつくことで。
「あ、ああ。まだ大人組が起きて飲んでいて、俺はちょっと今・・・都合が悪いというか・・・。」
ジッと見てくる2人の目。
『ん?どうしたんですか?』
「あああっ、焦れったい!ほら、貸してちょうだい!」
突然、お義母さんからスマホを取られてしまった。
「初めましてぇ。司のおばあちゃんです。貴方が陽斗くん?」
『え?司の?じゃあ飛鳥さんのお母さんですか?初めまして。陽斗といいます。』
「うふふ。違うわぁ。もう1人のおばあちゃんなの。」
『?!!飛鳥さんの旦那さんの・・・』
うわぁ。なにこのカオス!絶対陽斗くん勘違いしているよ!
「あ、警戒しなくて大丈夫よ。貴方と飛鳥ちゃんの仲を応援したくて♡」
『え?』
「もう、これまで飛鳥ちゃんに再婚しないの?って散々勧めてきたのに全然だったのが、今日同じこと伝えたら顔を真っ赤に染めたの♡もうピーンと来ちゃって、問い詰めたら恋人がいるって言うからぁ。もう私、興奮しちゃって♡ぜひ、結婚式には呼んで欲しいわぁ。
私に協力することがあったら、遠慮なく言ってちょうだい。」
口が挟めない・・・。なんでこうなったんだ?
『・・・応援してくれるんですか?本当に。』
「ええ!ちなみに私の娘も同じ気持ちよ。」
『じゃあ、早速相談なんですが、飛鳥さん僕との結婚を受け入れてくれないんです。僕が、社会に出たら自分が重みになるって言って。そんなことないって言っても信じてくれないんですけど、どうしたらいいですか?』
マジ相談?!なに、その相談!
流石にスマホを奪おうとしたけど、お義姉さんに羽交い締めにされた。しかも口を塞がれてもごもごしか言えない。
絶対ろくでもないことを言う!それなのにそれを止められない。
「あ、それ簡単よ。既成事実を作ればいいのよ♡♡♡飛鳥ちゃんのことだから、子供が出来れば受け入れてくれるわ♡」
やっぱりぃーーーーーー!!なんてことを言うんだ?!
『それしか無いですよね。』
「あら、もう考えているのね。結婚式のウエディングドレスは、私に任せてちょうだい。実は私、何でも作れるのよねぇ♡息子と飛鳥ちゃんの結婚式のタキシードも私が作ったのよ♡ちゃんと陽斗くんの要望に叶えてみせるわ!
いつ結婚する予定?1回採寸させて貰えないかしら?もしろん、成長期もあるから、タイミングが大切だけど。」
なにぃーーーーーー!?!
「もがもがもがーーーー!!」
「ダメよ、今大切なところなんだから!」
それから、陽斗くんとお義母さんは、俺の目の前で盛り上がり、最終的にはお義姉さんも混じってワイワイしていて、俺はもうテーブルに突っ伏して泣いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は屍のようになってシクシクと泣いて寝た次の日、朝ごはん作りを手伝うべく下に下りると、お義姉さんと一緒にきゃあきゃあしながら、話し合ってる2人がいた。なんか嫌な予感がする。逃げるべく体の向きを変えたその時、
「飛鳥ちゃん、おはよう。こっち来てちょうだい♡」
ギギギと体を硬直し振り返ると、ニッコリと笑っている。
渋々近づくと、テーブルの上には、何枚も何枚もタキシードのイラストがあった。しかも色つき。
「写真でみた印象だから、アレなんだけど、どれがいい好みかしら?」
「俺、まだ結婚とか考えられません。」
「飛鳥ちゃん、あれほどの美人さん、絶対逃がしちゃダメよ?私、縁続きになりたいわ!!大人になったら、また違う色香を纏っているか、想像するだけで興奮しちゃう♡♡」
そう言って無理やり何点かのイラストと、タキシードのパンフレットを渡されてしまった。
そんなこんなで、濃厚なお泊まりが終わって、俺はやっと家に帰ることが出来たのだ。そして、家の鍵を差し込もうとした時、ガチャ。中から扉が開いて、
「お帰りなさい。飛鳥さん、・・・司。会いたかった。」「おっ、陽斗じゃん。来てたんだ。ただいま!腹減ったぁ。なんかある?」
「そう言うと思って、お菓子作ってるし、父さんたちから手土産も貰ってある。食べてていいよ。」
「やりぃ!サンキュー!」
バタバタと中に入っていく司。
まだ外で、陽斗くんを見ていると、
「飛鳥さん、早く入っておいで。」
にっこり微笑まれる。玄関に入ると、抱きついてきて至近距離でおかえりなさいと再度言われた。ドキッと心臓が大きく跳ねる。返事をしない俺に、首を傾げて催促してきて、顔を真っ赤にしながら、
「た、ただいま。」
と言うと、嬉しそうに笑う。
「やっと、飛鳥さんに触れることが出来ます。」
そういうと、触れるだけのキスをされた。わたわたしてしまう。
「大好きです。いま、司お菓子を食べていますから。」
そして、またキスをされる。
久しぶりの陽斗くん。
玄関だというのに、舌を絡め合うキスをする。ペチャクチャと水音を響かせながら、遠くで蝉の声が聞こえた。
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