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11、陽斗の親友
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⬛︎陽斗サイド
僕は、桜庭 陽斗。15歳で遂に高校生になったばかりだ。まだ入学して1ヶ月だけど、友達も出来た。僕は、自分でいうのもアレだけど、可愛いよりの美人らしい。そんなつもりはないのだが、時々冷たい印象を相手に与えるらしく、ちょっと近寄り難いみたいだ。
まぁ、騒がれるよりマシだから、相手にしたくない時は結構活用している。でも、そんな俺に1人だけ、臆することなく話しかけてくれる男がいる。それが、須藤 司だった。
甘いマスクの顔をしており、入学当初よりイケメンだと騒がれていた男。僕の横の席だったからか、よく話しかけられる。最初はちょっと馴れ馴れしいとかウザイとか思っていたけど、結構面倒見もよくクラスの人(うるさい女子)に絡まれた僕を助けてくれることも多い。それに関しては、感謝してやってもいいかな。
冷たくしても、めげることもなく話しかけてくる精神力に根負けして笑ったのは、出会ってから2ヶ月後の事だった。その時、クラスに激震が走ったらしく、姫が笑った!と叫ばれ、誰が姫だ、誰が!と怒ったら、更に歓声が湧いたのは、何故だ。
怒る僕を、どうどうと宥める須藤にも、牙をむくが笑うだけだった。そしてすぐに陽斗、司と呼び合う仲になった。司は、中学から陸上をしていて、部活に入っている。イケメンでスポーツ万能ってやっかみがられると思うのだが、性格も爽やかな司は、同級生や先輩たちからもウケがいい。可愛がられている。だけど、そんな司は僕以外に親しい人間を作らない。いや、親しい友達は沢山いるんだけど、懐にいれているのは、僕だけだ。
司は上手く立ち回っているから、周りに気づかれていない。
そして司は、放課後は部活に忙しく、色恋沙汰はそれを理由に断っている。しまいには、僕と付き合っていると騒がれ始めたのは、うんざりしてしまう。1回僕が、キレたから、それ以降はなりを潜めているが、腐女子というやからたちに、ジトッとした瞳で見られているのは、完全無視だ。
司は、父親と2人暮らしで、よく話題に父親のことを出してくる。お弁当も父親の手作りらしく、見せてもらうと彩りよく詰められた美味しそうなお弁当だった。
僕は、いつもコンビニ弁当だから、すこし羨ましい。ジッと見ていたら、
「ほら、陽斗。今日は弁当交換しよう。俺、唐揚げ弁当好きなんだよなぉ。」
そう言いながら、素早く僕の弁当を取ると、交換されてしまった。
「・・・ありがとう。」
食べてみたかったから、素直にお礼を言ったら、周りからおおおお!と言われたのは、無視。
綺麗な卵焼き。箸で掴んで口の中に入れると、程よい甘さが広がった。優しい家庭の味。とても美味しかった。無言で、パクパクと箸を動かして、あっという間に食べてしまって、空になったお弁当箱をみて悲しくなる。
「ぷはっ、陽斗もそんな顔するんだな。」
司に笑われる。
「本当に美味しかったんだからしょうがないじゃないか。いいなぁ、司はこんな美味しいご飯を毎日食べれて。」
呟くように言うと、司の顔が一瞬歪む。
俺の家庭環境は、ちょっとだけ複雑だ。この前、ポロリと司に愚痴をこぼしてしまって、それを思い出したのだろう。
僕の家庭環境は、そこまで複雑では無い。本当にちょっとだけだ。愛のない夫婦の間に産まれただけのこと。最初は好きあって結婚した2人も、今ではお互いに無関心だ。僕が美人な通り、父も母も顔は整っている。離婚こそしないが、それぞれ恋人がいるらしい。家のことは、家政婦さんがしてくれるし、一応2人も毎回家には帰ってくる。
そして僕のこともそれなりに気をかけてくれているが、基本的には放任主義だ。その代わりトメさんや歳の離れた姉が可愛がってくれている。そんな姉も、今では大学生で一人暮らしをしてここにはいない。
そんな家庭環境だったからだろうか、僕は同級生より大人びているのは。まぁ、周りから言わせると冷めているってやつらしいが。
そして、弁当を交換した週の金曜日のこと、
「なぁ、陽斗、明日俺の家に遊びに来ないか?」
そんなことを司から言われた。
「ん?部活はどうしたの?」
「ああ、明日は休むから大丈夫だ。」
陸上部は、週に1回か2回自分が決めた曜日に休めるらしい。
なんか初めて友達の家に招待されてその日は、何故かなかなか寝付けなかった。既に僕の中での司は、友人として確率されており、司曰く親友にまでなっているらしい。
昨日、「今まで友達とか家に呼んだことないけど、陽斗は親友だからな!」って。帰り際にそう伝えてきてくれて、心が熱くなった。
初めて気を許せる友人が出来たと思っていたら、親友だったとか、嬉しいに決まっている。素直じゃない僕に、初めて出来た親友。嬉しくて、家政婦のトメさんに話しちゃったのは、今思い出すと恥ずかしい。
まだドキドキするけど、いつの間にか眠っていたようで起きると、朝日がカーテンの隙間から射し込んできていた。
洗面所で、顔を洗ってリビングに行くと、既に両親は起きていて、父は新聞を見ていて、母は何故か帰っているはずのトメさんと何やらキャッキャッしている。いつもとなんか違う雰囲気に不思議に思うけど、おはようと言うと、
「お、お、おはよう!陽斗!」
いつも冷静沈着な父が、どもりながら挨拶をしてきた。心無しかいつもより声が大きい。
その声に気がついたのか母さんがパタパタ小走りで近寄ってきて、
「おはよう、陽斗ちゃん!」
は、陽斗ちゃん?!な、なに、その呼び方?!今日は、何かおかしい。いつもの朝とは全然違う光景に戸惑いしかない。
「お、おはよう。母さん。どうしたの、凄く嬉しそうだね。」
「うふふ~~♡♡そうなの、本当に嬉しくって♡お母さん、応援してるからね!」
意味不明なことを言ってくる。
その日の朝は、いつもと全然違って、朝食中も僕の顔をみて、父さんまでニマニマしていて、居心地が悪かった。
「何だったんだろ、あの2人。いつもと違ってなんかウキウキしてたような?初めてみたかも・・・。」
不思議に思うけど、考えてもしょうがないから今日のことを考える。司の家とは、バスで3駅の距離だ。バス停まで迎えに来てくれるって言ってたから、乗るバスの到着時間をSNSに送った。
何か手土産買っていかないとな。家に何かいいのないかな?そう思ってトメさんに聞くと、紙袋を渡される。しかも2つ。
「なに、これ?」
「これはですね、昨日旦那様と奥様が買ってきたお菓子でございます。」
「父さんと母さんが?」
「はい、昨日このトメが、お2人に坊ちゃんが親友の家に招待されたとお伝えしたらこのようにおふたつ。夜遅いこともあって手に入れるのも苦労されたそうです。」
笑いをこらえるように話しているが、僕はその事が到底信じられなかった。
「本当の話?トメさんの作り話でなくて?」
「もちろんでございます!旦那様も奥様も、坊ちゃんに似て、愛情を表現するのが苦手でいらっしゃいますから。全く子供が2人もいるのに、困った大人でございますわね。」
初めて聞く両親の事に戸惑いを隠せない。今まで愛のない家庭だと思っていたのに。でも本人たちから聞いた訳じゃないから、変な期待はしないでおこう。朝のアレは、風邪でも引いていたんだ。
「お菓子、ありがとう。」
「はい、お気をつけていってらっしゃいまし。」
2つある紙袋を手に持ちながら、部屋に戻ると、何故か心がふわふわしていた。なんか嬉しいかも。
出掛ける用意をして、紙袋を持つと、行ってきますと外に出る。僕の手には、紙袋が2つ。その重たさが、心を擽り、今日はいい日になりそうだと根拠もなくそう思った。
暖かな太陽の温もり、綺麗な花たちを見ながら僕は足取りが軽く、バス停に向かう。
そしてその日は、僕にとって一生忘れない運命の日になるのだった。
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でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
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前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
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