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34、カミングアウト

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⬛︎陽斗サイド

初めて飛鳥さんと結ばれてから半月後、司に飛鳥さんが好きだと告白した。初めは信じられないという顔をしていたが、僕の真剣な眼差しに本気だと思ったようで真剣に聞いてくれる。

「いつからなんだ?」
「初めて会った時から、好きだった。」
そう言うと考え込んでから、ああ、あれかと呟いた。
僕が挙動不審だったことを思い出したのだろう。

「本気なんだな?」
「ああ。本気だ、結婚したいと思っている。」
それの顔をジッとみてきて、複雑な顔をした。
「突然の事で、驚かせて悪い。今日は家に帰るから、ゆっくり考えてみてくれると嬉しい。でも、僕は諦めないから。」
そう言うと、部屋を出た。飛鳥さんに相談もせずに、告白したが、後悔はない。まずは、好きなこと、真剣なこと、今後どうしたいかも伝えたから、様子をみることにする。

絶対飛鳥さんとは、幸せな結婚生活を送りたいから、それには司の協力が不可欠だ。絶対に諦めないから。

その日は、自分の家に帰ってきて、トメさんのご飯を食べる。そして自室のベッドに寝そべるけど、落ち着かない・・・。司どうしているだろうか?飛鳥さんに何か言ってしまっただろうか?

でも連絡するのは我慢した。今は待つしかない。

夜に飛鳥さんに連絡すると、司が日曜日部活を休むと聞いて、内心ドキッとした。どうしたんだろうなと不思議がる飛鳥さんには、何も言えなかった。

そうして月曜日になって、学校で司に会ったけど、いつも通りの司で、ちょっと混乱してしまう。いやちょっと表情が硬いか。
そして、部活帰りの司と帰路についた。お互い無言で歩く。いつもなら、たわいも無い会話で笑いながら帰るのに、気まずい。何か話そうと思うけど、待つと決めたからあの話題も出来なくて、でも他の話題を振るのも違うかなと思って何も言えなかった。

いつも通る公園に差し掛かった時、
「ちょっといいか?」
と、公園に誘われた。

そんなに大きくもない小さな公園。
ブランコに座ると、しばらくして司が話し出した。

「ここさ、俺が小さい時よく親父と父さんでよく遊んだんだ。」
静かに話す司。

「親父は仕事に忙しかったけど休みのたんびに色々なとこに連れて行ってくれて、時間が無い時はこうして公園に連れて行ってくれた。
父さんもいつもニコニコして、家族3人いつまでも幸せに暮らせるんだと思っていたんだ。

でもそんなことはなくて、ある日突然親父が交通事故にあったって学校に連絡があって、信じられなかった。おばあちゃんに連れられて病院に行くと、親父の体に縋り付いて泣いている父さんがいた。

親父は、ただ寝ているような感じだったけど、俺が何度呼びかけても起きてはくれなかった。」

その時の情景を浮かべているのか、空を見ながら話し続ける。

「あれから俺たちの日常は変わった。父さんから笑顔は無くなったし、いや笑っていたけど、無理やり作った笑顔で、子供ながらにそれが嫌だった。
俺も親父が亡くなってショックだったし、夜になると泣いてしまって、その度に父さんが慰めてくれた。自分だって泣きたかったはずなのに。

でもそれでも時は過ぎて、いつからかまた笑えるようになっていたけど、なんか最近違うんだ。

父さんが嬉しそうに笑うんだ。今までとは違う、小さい時にみたあの笑顔。あれ、お前がさせているんだろ?」

真剣な眼差しで見てくる。
「多分な。まだ伝えていなかったけど、僕と飛鳥さんは付き合っている。」
僕の言葉に、
「やっぱりな。」
ポツリと呟く司。

「でも勘違いしないで。最初、飛鳥さんは断っていた。俺は、司の父親を愛しているからって。
でも、それでもいいって言ったんだ。何度も何度も。だって司のお父さんと愛し合って司が生まれて、飛鳥さんは、本当に幸せだったと思うから。

僕は、それを否定するつもりも蔑ろにするつもりも無い。ただこれからの飛鳥さんの人生を共に歩んで行きたいんだ。もちろん、司、お前ともだ。」

僕の気持ちをきちんと伝える。

「はあぁあああ、全く、まさか親友が俺の父親と付き合うなんてなぁ。全然気が付かなかった。いつから付き合ってたんだ?」
頭をグシャグシャにしながら、聞いてくるから、素直に答える。

またため息を、吐く。
「やっぱり、お前のおかげなんだろうな。父さんの笑顔。マジでか?お前が、俺の父親になんの??」

「司、僕は飛鳥さんを愛しているし、幸せにしたいと思っている。でも、お前の父親はただ1人だし、再婚したからと言って僕が父親になるつもりはない。
今まで通り司は、僕の親友だ。」

「そっか。そうだよな。お前を父親なんて思えないし、司は司だ。わかったよ、絶対父さんを幸せにしないと承知しないからな!」
「っ!もちろん!ありがとう、司。」
「父さんの幸せのためだからな。まさか、再婚したらどうかとか言ったけど、その相手が陽斗とはねぇ。」

「ふふふっ、本当に良かった。司に認められて嬉しい。飛鳥さん、司に拒否されたらどうしようって悩んでいたから。」
にこにこする僕に、
「・・・それなんだけど。俺に告白したこと、父さん知ってんの?」
考えながら、聞いてくる司に、伝えていないことを話す。
「じゃあさ、父さんから俺に話してくるまで何も言わないでいてくれないか?」

「・・・なんでか、聞いてもいい?」
そう尋ねると、しばらく考えてから口を開いてくれる。

「やっぱり将来のことを考えたら、父さんから俺にちゃんと話して欲しいんだ。俺は父さんの息子だから、父さんの口からこの話を聞きたい。

付き合っていることも、結婚についても、全て父さんから話して欲しい。」
それを聞いて、納得する。

「わかった。僕は、一切このことについて飛鳥さんに言わないし、促したりもしない。ちゃんと飛鳥さんに僕との将来を考えて欲しいし。」

「本当に好きなんだな。そんな顔、初めて見たぜ。完全、恋する乙女じゃん。ただでさえ、可愛い顔してんだから、破壊力ヤバいな。」
僕の顔を見て茶化してくる司にぷくっと頬を膨らませる。

「悪い、悪い、あ、もうこんな時間か。早く帰るぞ、陽斗!」
そう言うと走り出す。現役陸上部が本気出すとか有り得なくない?

追いかけながら、僕たちは走りながら笑っていた。


息を切らしながら帰り着いたけど、飛鳥さんから遅い!心配したとか怒られる。司が速攻、陽斗が下痢したんだとか言うもんだから、あ、そうなんだと飛鳥さんに言われ、ダメージを負った。反論したかったけど、これで機嫌が治るならと我慢したけど、じろっと司を睨みつけると、見えないようにペロッと舌を出している。




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