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4、訪れる運命の日
しおりを挟む(きゃー、盛り上がっております。不定期とか言っときながら、カキカキですわぁー!あと夜に1話投稿しますね!)
その日は、司が寝坊したぁあああーーーってドタバタ起きてきた。何回も声を掛けても全然起きなかったから、なんで起こしてくれなかったの?!という司に、何回も起こしたと返す。
朝ごはんとしておにぎりと弁当が入った袋を渡すと、大慌てで駆け出して行った。車には気をつけろよー!っと背中に声をかけと、わかったー!と返事を返してくれる。
父親が交通事故で死んでから、司はちゃんと周りを見るようにしているから、急いでいても大丈夫だろう。俺やアイツ同様運動神経は、抜群だからな。
朝ごはんをゆっくりと食べて、洗濯や家の掃除をしていた時、ピンポーンとチャイムが鳴った。インターホンを確認すると陽斗くんが見えた。扉を開き迎え入れると、元気よく、おはようございます、飛鳥さん!と挨拶してくれる。
「おはよう、陽斗くん。ごめんね、今日司部活なんだ。」
申し訳なさそうに言うと、
「あ、今日は飛鳥さんに用事があって伺ったんです。ほら、僕結構泊まっているでしょ?だから、親がこれ持っていきなさいって。」
そう言って目の前に出されたのは、有名なケーキ屋さんの箱だった。
「そんなの、良かったのに・・・」
内心甘いものに目がない俺は、目を輝かせたらしく、ふふって笑われてしまった。バレバレだったか。頬をポリポリかいて、せっかくなんで一緒に食べるかと誘うと、満面の笑みを浮かべて、はいっ!って元気よく返事をして、律儀にお邪魔しますと言い、中に入っていく。
勝手知ったる第2の家のような感じで、洗面所に行き、手を洗い、これまて勝手知ったるやつで、手際よく紅茶を入れている。もう、なんというかこの家に完全に馴染んでいる姿に笑ってしまった。
俺は、甘さが控えめなケーキを司用に取り分けて、ショートケーキを2つ用意する。大きな苺がのった美味しそうなケーキだ。思わずヨダレが垂れそうになって慌てた。
カチャと音を立てて、紅茶セットをテーブルに置く音にハッとすると、笑いを堪える陽斗くんがいて、羞恥に顔が赤くなる。誤魔化すように、
「お、美味しそうだな。親御さんにお礼を言っておいてくれ。」
そう言うと、
「本当に美味しそうですね。今すぐ食べちゃいたいぐらいです。」
そう俺の顔を見ながら言われて、何故か心臓がドキンと跳ねた。
ケーキのことなのに・・・。火照る頬をパチパチと叩いて冷ましていると、ふわっといい匂いが香る紅茶を差し出され、一気にケーキと紅茶に心をシフトさせる。本当に美味しそうだ。司は、アイツに似てあまり甘いものが得意じゃないから、久々のガッツリとした甘味に、頬が緩んでしまう。
フォークで、慎重にケーキに刺し込むと、スっと入ってふわっと掬うことが出来た。そのまま口の中に入れると、俺好みの甘さとふわふわな食感が口いっぱいに広がる。しあわせ~~~♡普段絶対食べない高級な味に、うっとりしてしまう。
体格がよくてゴツイ俺が、ケーキ屋さんに並ぶのはなかなかの試練だから、本当に嬉しい!パクパクと食べてしまって、残り少しになると、もう無くなってしまうと、悲しくなった。
「飛鳥さん、そんなにケーキ好きなんですね。」
はっ、そ、そうだった。俺一人じゃないんだ。すっかり陽斗くんのことを忘れて、気を緩ませてしまっていた。
はずかしくて、顔を上げれない。
「そ、そうなんだ。昔から、甘いものが好きで・・・。おかしいだろ?俺が甘いもの好きだなんて・・・。」
自虐めいた言葉が、つい漏れてしまう。
「そんなことないですよ。持ってきたケーキをそんな嬉しそうに食べてくれて、僕も親も嬉しいですよ。
僕実はお菓子作りが趣味なんです。今度食べてくれますか?」
「お菓子作れるのか?」
「はい。最近姉と一緒に作ってみたら、意外と楽しくて今度、タルトに挑戦するんですよ。作ったら持ってきますね。」
魅力的な言葉に、喉が鳴ってしまった。
「ほ、本当にいいのか?」
久しぶりに甘いものを食べて、甘味に対する欲求が高まってしまった俺は、そう言っていた。
そんな俺に、笑いながら、ぜひ、食べてくれると嬉しいです。出来たら感想聞かせてくださいねと嬉しい言葉をくれる。それから俺の好きな味や食べ物とか色々聞かれて、質問されるまま、答えた。
またお菓子が食べられる。それが、とても嬉しくてニコニコしてしまった。それが、陽斗くんの理性を崩壊させてしまうとは知らずに・・・。
残りのケーキも食べてしまい、紅茶を飲むと心が満たされてホッと息を吐いた。再度お礼を言おうと陽斗くんを見ると、俺の顔をジッと真剣な眼差しで見ていてドキッとする。
そんな表情見たこと無かったから驚いてしまった。
「あ、片付けしないと・・・」
その瞳を見ていられなくなった俺は、慌てて椅子から立つと、皿に手を伸ばしたら、その手を取られる。
「飛鳥さんは、座っててください。」
そう言われると、何故か動けなくなってしまった。
そんな俺に、ふふっと笑うと、台所へ皿を持っていき、手際よく食器を洗っている。
ガチャガチャと食器の音を遠くに聞きながら、自分の手を見た。ゴツゴツとした男の手。手入れをしているからか、以前に比べて滑らかで、ツヤツヤしている。だけど、さっき触れた陽斗くんの手は、俺とは違って柔らかかった。
それに陽斗くんの手は凄く熱く俺の手にもその熱が移ってしまったようで、ジンジンとしてしまい、反対の手で握って、冷やす。陽斗くんの微笑み。いつもの笑みとは違ってなんか、花を纏っているようなそんな笑いだった。
あんな顔をすることあるんだ。
考える俺の顔を、カウンターキッチンから陽斗くんに見られていることには気が付かないで、ただ触れた手を握りしめていた。
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