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最終話 魔法少女に恋をして 後編
しおりを挟む「うわぁ……広いですね!! お城みたいです!! 夜景も綺麗!!」
理央の言った通り、夜景が綺麗なスイートルームには大きな丸いベッドが置かれていた。
そのせいもあってか、豪華すぎる部屋に子供っぽくはしゃぐ守夜美月を見ていると、あの夜のことを思い出す。
偶然とはいえ、俺、魔法少女とラブホテルにいたんだよな……
謎のボタンがたくさんあって、ポチポチ押しまくるのは純粋で可愛かったけど、変なスイッチを押さないかとヒヤヒヤしたのも、今となってはいい思い出だ。
あの時、ブルータスが邪魔してこなければ、もっと早く大人の階段を————
いやいや、落ち着け俺。
まずは、そっちより、俺が怪人族だってことを話さなきゃ。
いくら夜景が綺麗で、めちゃくちゃ雰囲気のある豪華な部屋だとしてもだなぁ……物事には順序というものがあって————
「メースケくん見てください! このボタンはなんでしょうか?」
「えっ? あー……なんだろう……ボタンの上に何か書いてないのか?」
彼女が指差したのは、ベッド横についている謎のたくさん並んだスイッチだった。
こんなにたくさんスイッチがあるのに、用途がパッと見てわからないなんて、高級ホテルにしては不親切だな……なんて思っていると、やはり彼女はどうしてもボタンやスイッチがあると押したくなるようだ。
「うーん、気になって仕方がありません。押しちゃえ……えいっ!」
「あ、ちょっと……」
ポチポチ押しまくったが、さすが高級ホテル。
あのラブホのように、風呂場の壁がスケスケになったり、怪しい光もつかない。
普通に照明のオンオフとか、カーテンの開閉とかのスイッチだった。
ちょっとホッとしたような、残念なような……
「真っ暗になってしまいましたね……どれでつけるんでしょうか……」
次々とボタンを押したせいで、どのボタンが照明のスイッチかわからない。
一生懸命彼女はまたボタンを押すが、暗くてよく見えないせいで照明はなかなかつかなかった。
「あれ……? おかしいですね……」
そのうち、人より目のいい俺の方が暗闇に慣れてしまって、彼女の代わりに後ろからそのスイッチに触れる。
「あ! つきました!!」
点いたことに喜んだ彼女が、振り向いた。
俺が後ろから押したことに、暗くて気がついていなかったみたいで、顔が近すぎる。
不意のドアップ。
めちゃくちゃ可愛い彼女の顔が目の前に……
やばい……
可愛い!!
可愛い!!
可愛いいいいいいいいいいいい!!!!
「…………」
「……あの……メースケくん?」
やっぱり、守夜美月は可愛いいいいい!!
好きだ……!!
どうしよう、めっちゃ好きだ!!!
思考能力が急に低下した俺は、じーっと、もう固まったまま彼女の顔を見つめてしまった。
ずっと、ずっと見ていたい。
なんだろう、この可愛い目は。
この可愛い鼻は、唇は…………神か!?
「そんなに見つめられたら……恥ずかしいです」
————プツン
ポッと頬を赤くした彼女を見て、俺の中で、何かが切れる音がした。
その瞬間、背中からタコ足が……
「えっ!? め、メースケくん!? なんですかこれ!!?」
タコ足が、俺の意思とは関係なく守夜美月に絡みついた。
そして、彼女の体をベッドの上に乗せる。
「メースケくん!? ちょっと、これは…………あなた、まさか————!!」
「ずっと、黙っていてごめん。俺、怪人族なんだ……」
「そ、そんな……!!」
彼女の体が強張っているのが、勝手に巻きついたタコ足から伝わる。
それでも、もう止められなかった。
「隠していたことは本当に悪いと思ってる。だけど、俺は、君が好きだ。守夜美月が好きだ……だから————どうか、許して欲しい。俺が、君を……怪人族の俺が、魔法少女である君を愛していることを」
きっと、彼氏の俺が怪人族であると知ったら、ご両親は反対するだろう。
俺の両親だって、息子の彼女が魔法少女だって知ったら反対するだろう。
でも、愛さえあれば……そんなもの関係ない。
人間だって、怪人族だって、恋をするんだ。
「たまたま好きになった人が、魔法少女だった……それだけなんだよ。魔法少女だから好きになったんじゃない。中学の時から、俺はずっと、君しか見てないんだ————」
こんな俺の切実な思いが伝われば、きっと、守夜美月だって感動して、受け入れてくれるはず……————って、え?
あれ?
なんだろう?
急にタコ足が1本消えたような…………
「痛っ!!! えっ!? えっ!?」
彼女に巻きついていたタコ足が一本、消失している。
それに、いつの間にか守夜美月から魔法少女に変身してるじゃないか!!!
黒髪からピンクの髪へ。
数ヶ月ぶりに、魔法少女に変身した姿を見た。
可愛いけど……
どっちの姿でも、俺は君を愛しているけど……
でも、俺のタコ足、1本どこに行った!?
「怪人族だったなんて、私をだましてたのね!!」
「え!? ちが……いや、怪人族だってのは隠していたけど…………それは違くて……!!」
消えたタコ足の分、体が痛くて、反射的に彼女から離れたらベッドの上に立つ魔法少女が、ステッキを振り上げる。
「本物のメースケくんは!? 私のファン様をどこへやったの!?」
「えっ!? ちょっと待って!! 何言って……俺が、メースケで、ファン様だってば!!」
「問答無用! キラッとビ「うわああああああ!!! それだけは勘弁してぇぇぇぇぇ!!!!」
け、消されるううううううううう!!!!!
この後、なんとか逃げまくって、また未来から来た魔法幼女のおかげで、誤解が解けて助けてもらったけれど……
どうにか納得してくれて、俺たちはこの数日後に大人の階段を登ったけど……
結婚もしたけど……
魔法少女に恋をして、死にかけたこの瞬間を俺は一生忘れないだろう————
たまに、悪夢でうなされるんだ。
こんなことなら、魔法少女が魔法を使えなくなる前に、あの恐怖を忘れる魔法をかけてもらえば良かったな。
ふにゃふにゃぽーぽ!
なんてな。
— 完 —
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