魔法少女に恋をして

星来香文子

文字の大きさ
上 下
47 / 51

第47話 未来から来た理由

しおりを挟む

「やっと見つけた!!」
「えっ!? 魔法幼女!?」

 どうにか解放され、遊園地に戻ろうとしていた俺の頭上に、魔法幼女が浮いていた。
 俺にはそんな性癖は全くないのだが、頭上にいるもんで、幼女のうさぎさんパンツが丸見えだった。

「まったく! どこに行っていたのパパ!! 探したんだからね!!」
「探したんだからね……って、俺を落としたのはお前じゃないか……」
「それはそうだけど……」

 魔法幼女はふわりと地上に降りると、頬を膨らませて口を尖らせる。

「急にいなくなるなんて聞いてなかったわ! ダメじゃない、ちゃんとどこにいるか私に報告してくれないと……」
「いや、俺だって急に連れて行かれたわけだし……」

 そもそも、なんで俺がそんな報告しなきゃならんのだ。
 それに、どうやって報告するんだよ。
 その手段すら知らないのに……

「まぁいいわ。それより、パパ、私が未来から来たパパの娘だって話をしに来たのよ————って、あれ? よく考えたら、こちらの世界では初めましてよね? どうして、私が魔法幼女だって知ってるの?」

 し、しまった!
 すっかり忘れてた!!
 あの時俺は狐の仮面をつけてたから、魔法幼女とは会っていないことになっているんだった!!

「あー……えーと、その、ママにちらっと聞いたんだよ! それより、俺は信じられないんだけど、本当に未来から来たのか?」

 理央のこととか、ダブルデートに浮かれて忘れてたけど、よく考えたら俺はこの魔法幼女が本当に未来の娘なのかどうかも確認できていない。
 あの場にいなかったことになっているから、守夜美月に聞くこともできなかったし……

「本当よ、信じられないのも無理はないけれど……私は今から10年後の未来から来たの。こう見えて、5歳よ」
「いや、年相応だよ見た目は……」

 その割に口調は妙に大人びているというか、おませさんって感じだけど……

「とにかく、私がここに来たのには理由があるの。それを説明するためにこの時代のパパを探してた……。一つ目の任務は無事に完了したと思ってたんだけど……なかなか難しいものね。一つ変更すると、他で別の悪いことが起こっちゃう……まぁ、とにかく今から私がする話を聞いて欲しいの」

 魔法幼女はこの時代へ来た理由を話し始めた。


 * * *


「な、なんだよそれ……そんなことって……!!」
「信じられないかもしれないけど、これは事実よ」

 魔法幼女の話によると、俺が紅家に連れて行かれていた間に、暴れていた怪人族と戦う魔法少女の姿を目撃した人物がいて、その人物は魔法少女の正体に気づいてしまったらしい。
 本来なら、あの花火大会の時にそれが起こるはずだったのだが、魔法幼女が魔法少女の変身バッチを勝手に持ち出したおかげで、回避できた。

 しかし、今回の目撃された現場には未来で知らされていた数と違う多くの怪人族が現れてしまったため、代わりに怪人を退治しようとした魔法幼女だけの手には追えなかったのだ。
 だから、魔法少女に手伝ってもらおうと連れて行ったのだという。
 それに、俺にもファン様としてサポートをお願いしたかったのだとか……。

 それが実際には俺は行方不明になってしまったし、仕方がないから親子二人で怪人を退治して来たらしい。
 それで、その現場を目撃されたというわけだ。

 そして、その目撃した人物というのがなんと、上下部長。
 上下部長はあの日、魔法少女を助けずに撮影を続けていた日に俺が気を失わせていたため、記憶が飛んでいたそうなのだが、つい先日急に全てを思い出して、守夜美月が魔法少女ではないかと疑い始めていたところだったらしい。

「明日の夜、上下がカメラを持ってママを訪ねてくるわ……生配信で事実を確認しに来るの……————魔法少女に直撃インタビューって銘打ってね」

 この生配信の映像のせいで、守夜美月が魔法少女であることが世間にバレてしまう。
 最初は正義の味方としてもてはやされるのだが、魔法幼女がいる10年後の未来で事件が起こる……
 過去に魔法少女が退治した紅家の怪人族の子供が成長し、その映像を見て魔法少女を引退した守夜美月を殺しに現れる————


「私はそれを阻止するために、この時代に来たの。お願い、パパ……ママを助けて」




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

処理中です...