魔法少女に恋をして

星来香文子

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第43話 怪しい二人 前編

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「突然ダブルデートだなんて……びっくりしました」
「ごめん、迷惑だったかな?」
「いえいえそんな! メースケくんの大切な友達の頼みですもの! それに、遊園地なんてもうずっと行けてなくて……嬉しいです!!」

 ダブルデート当日、先に待ち合わせの場所についたのは俺だった。
 次に来たのは守夜美月。
 今日は遊園地ということで、花火大会の時とは違って、動きやすい大きめの白いTシャツにハーフパンツ……を多分下に履いている。
 Tシャツの丈が長いから、ちらりとしか見えないが、多分そう。

 魔法少女の衣装の時も短めのスカートだから、脚は結構露出している方だけど、少しだけ目のやり場に困ってしまう。
 なんというか、彼シャツを着ているように……見えなくもな…………いや、なんでもない。

 とにかく、残りの二人を待とう。

「やぁ! お待たせ! メースケ!」

 次に現れたのは、理央だった。
 相変わらず、女子にしか見えない。

「お! はじめまして!! 君がメースケの彼女だね!!」
「か、彼女!? ……は、はい。そうです」
「ボクは理央!! よろしくね!」

 人懐っこい笑顔で、理央は彼女と呼ばれて恥ずかしくなっているだろう守夜美月と握手をしてブンブンと振る。

「メースケくんの大切なお友達だって聞いていたので、男性だと思っていました。まさかこんなに可愛らしい女の子だったとは……」
「あはは! 違うよ! ボクは男だよ!」
「えっ!?」

 守夜美月は驚いてまじまじと理央の顔を見る。
 うん、そうだろう。
 俺だって、女だと思っていた。
 今日だって、水色のTシャツにジーンズだ。
 どちらとも取れる。

 普通顔や声で男か女かすぐにわかるものだけど、理央の場合、多分学ランを着ていてもどちらか分からないだろう。
 脱いだらさすがにわかるけど……

「男性なんですか? え? 信じられません……」
「もう! みんなそう言うんだよね! 仕方がないなー」

 理央はジーンズのファスナーを下ろそうと手をかけた。

「おいこら!!! やめろ!!!」

 守夜美月にナニを見せるつもりだ!!!!

「えー? だって、この方が早いでしょ? ボクは別に見られて恥ずかしいことは何もないんだけど……」
「そりゃ……お前のは立派だけど!!! 公衆の面前でやめろ!!」
「え……? 立派? 立派って何がですか?」

 守夜美月は首を傾げる。

 何が立派かは聞かないでくれ!
 察してくれ!!

「そんなの、男のシンボルに決まってるでしょ?」
「だから、やめろって!!」

 本気なのか冗談なのか、理央はまたジーンズを下ろそうとする。

「ほら、やっぱり見せないと信じてもらえな————」

 けれど、急にピタリと手が止まって、顔を真っ赤にした。

「ちょっと、この私を呼び出しておいて、何のつもり?」

 紅会長が来たのだ。
 守夜美月とは正反対に、ヘソが出る短い真っ赤なシャツに黒いスキニーパンツ姿だった。
 もちろん、いつものように、谷間はくっきりと見えていて、理央の視線はそこに釘付けだ。


 * * *


 はぁ……何だこの状況。

 一応、事前に紅会長には理央が怪人族であることは伝えてある。
 純血以外に興味はないと言われたので、理央が黄河家の三男であることも。
 もちろん、一般人である守夜美月に、怪人族の話をすることはないが、一応これはお見合い……のようなものだ。

 紅会長と理央がうまく行けば、純血である俺も(あと父さんも)もう紅会長に迫られることはないだろう。
 とりあえず一安心で、守夜美月と彼氏彼女のあれこれができるものだと思っていた。

 だけどいざ、ダブルデートが始まると、なぜかあれだけ人懐っこく、積極的だと思っていた理央がずーっと、俺に引っ付いてモジモジしながら歩いている。
 紅会長が好きすぎるあまり、近づけないようだ。

「おい、何を考えてるんだよ!! しっかりしろ!! お前が紅会長を紹介してくれって言ったんだろう!?」
「だ……だって、仕方がないじゃないか!! きききき緊張しちゃって、うまく話せないんだよ!!」

 ちくしょう!
 なんでこんなことに!!
 守夜美月と並んであるくつもりが、せっかくのデートが、なんで隣にいるのが理央なんだ!!

 今まで乗ったアトラクションは全部隣が理央になってしまった。
 守夜美月とジェットコースターに乗って、手とか繋いじゃって……と、色々期待していた俺の時間を返して欲しい!!

「どうしたんですか二人とも! お化け屋敷に行きますよ?」
「お、おう!」

 守夜美月は久しぶりの遊園地にはしゃいでいて、そのことになんの疑問も持っていないようだ。
 普通に紅会長の横に並んで、俺たちの先を歩いて行く。


「まったく……何がダブルデートだ。これじゃあ、俺とお前が付き合ってるみたいじゃないか!!」
「やめてよ! ボクはそんな趣味ないよ!!?」
「誰のせいだよ!!」

 前を歩く二人に聞こえないように、小声で言い争いながらついて行くと、くるりと紅会長が振り返って言った。

「このお化け屋敷は男女ペアらしいから、そこの二人! いい加減離れなさい! ……まったくもう。あなたたち、本当はデキてるんじゃないの? 怪しいわね……」

 そんなわけあるか!!


「め、メースケくん!?」
「先に行こう! あいつはもう知らん!」

 俺は理央を振り払うと、守夜美月の手を取って先にお化け屋敷の中に入った。

「ちょ……ちょっと!! メースケ!! 置いていかないで!!」

 理央が叫んでいたけど、無視して突き進んだ。


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