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番外編① 月下の憂鬱

月下の憂鬱(6)

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 颯真の声が大きかったおかげで、家の前を歩いていた観光客がチャイムを鳴らし、茜は佐藤に怒られたが、なんとか無事に家に入ることができた。

(変わった味だった……あれが、呪受者の血の味なのか?)


 茜は、颯真の去り際にマフラーと手袋のお礼にと、颯真の鼻にできた傷をペロリと舐めて消した。
 颯真は、ポッと頬を赤くしながら帰って行ったが、颯真のその血の味は明らかに普通の人間のものではない。

 呪受者は、その右目だけではなく、呪受者自身にも強い力があるらしいが、妖怪とはまた違う存在である茜には、血を舐めてもなにも起こらなかった。


(確か、淋海はあの女狐を倒す者のそばに、アタシがいると予言していた。もしかして、あの呪受者が?)


 色々と考えを巡らせている間に、また夜が来た。
 今夜もまた、湖が光るかもしれないと、茜は一晩中窓の外を眺める。
 佐藤にバレないようにハシゴも用意したから、窓からいつでも出入りできると、意気込んで。

 そして、夜が明ける少し前…………

 また、窓の外が光った。
 だが、昨日のものと同じに見えたが……少し違う。

(青い光…………!! でも、柱にはならないな)

 茜は外に出よう窓を開けて、ハシゴを出して下へ降りた。
 しかし、湖の方へ走り出した瞬間、中庭にいた見知らぬ男に腕を掴まれる。

「だ……っ」

 誰だと叫ぶ前に、茜は男に口を塞がれる。

「静かにしろ……ガキがこんな夜中に外にでるなんて、教育がなってねーな……この家は」

 黒い服に目指し帽を被った男はそう言うと、リビングの窓を割って、茜を抱えたまま中に入って行った。

 その後に続いて、また知らない女も…………

(強盗…………!?)



 まさかの事態が起きて、茜はまた、あの青い光を確かめに行くことができなかった。



 * * *




 強盗の男女は、ガラスの割れる音に気がついた佐藤をダイニングに縛りつけ、金目の物を探し、家の中を探し回った。

(どうしよう…………)

 相手は刃物を持ってはいるが、切られても死なない茜にとって、それは別に恐怖ではなかった。
 しかし、ここで間違った行動に出てしまえば、自分だけではなく、佐藤が殺されるかもしれない。
 なんの罪もない人が、理不尽に殺されるのは、茜が一番許せないことだ。

 それに、男の方は、何か悪いものに取り憑かれているようで、普通ではない。
 どういう行動にでるか掴めない。
 ここから動くなと言われ、リビングのソファーの上に大人しく座っているしかなかった。

「ふん……立派な家の割には、大したものはねーな」

 一階の部屋を隈なく見た後、強盗の男は2階へ上がろうとした。
 だが、その時、早朝だというのに、チャイムが鳴る。


「こんな朝早くから……? 仕方ない、家政婦のフリをして私が出るよ。あんたはその子連れて2階に行ってな」
「あぁ……わかった」

 男は茜を連れて2階へ上がる。

 だが、誰もいないと思っていた2階から、何やら物音が聞こえてくる。
 焦って物音がする部屋のドアを開けると————


「茜ちゃんをはなせ!!」



 ————窓が全開になっていた子供部屋に、幼い少年がいた。







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