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最終章 受け継がれるもの

第63話 人魚の肉

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 人魚の肉を食べ、生死の境を彷徨った娘は、それから5日後に目を覚ますと、父は受領を殺そうとした罪で打ち首となっていた。
 兄からその話を聞いた娘は、怒りのあまり女と受領を殺そうとした。

 しかし、娘一人では傷をつけることすらできない。
 怪我をするのは娘の方だった。

 だがそこで、娘は気づいた。
 自分が人ではなくなっていることに。

 どんなに殴られようと、体を切られようと、娘の体は元に戻る。
 不老不死となってしまったことに、娘は気がついた。
 人魚の肉を食べると、不老不死になるという伝説は、本当だったのだ。

 この体を利用して、どうにかして、あの女に復讐をしようと思っていた時、一人の旅の僧侶が現れて言った。

「あの女は人間ではない。妖狐という、狐の妖怪だ。大陸からきた妖怪だ」

 僧侶はあの女を受領の元から追い払ったが、逃げて行っただけで、完全に退治したわけではない。
 いつか、必ず復讐をすることを心に誓った娘は、僧侶について旅へ出た。

 そうして、自分も比丘尼となり、旅を続けている内に、何度か妖狐の噂を聞くことになる。
 妖狐はやがて玉藻前と呼ばれるよになり、各地に封印されたことを知った。

 封印されたままでは、復讐もできない。
 封印はいつか解かれる可能性があることも、その旅の中でわかっていた。
 その時こそ、復讐する好機だと考え、余命いくばくもない者たちにその命を与え、その代わりにその体の中に入りこみながら生きてきた。



「————この絶えることのない命がある限り、次にあの女狐が姿を現わすことがあれば、なんとしてでも、復讐すると決めたのです。しかし……私一人の力では、あの女狐を完全に滅することはできません。だからこそ、滅することができる者を手伝うことにしたのです」

 茜は俺のポケットに手を突っ込んで、中に入っていた契約書を引っ張り出すと、それを広げて見せた。

「信じられないと言うのであれば、これを。これは先代の呪受者・飛鳥と交わした契約書です。妖狐を滅するのは、呪受者となるほどの力————それも、歴代の誰よりも力のある者でなければならない。最初に妖狐を殺生石として封印した、あの巫女の力以上でなければ……それは、飛鳥ではなく、颯真だったのです」

 慧様は茜のその話を聞いた途端、何かを察した……いや、何かの声を聞いたようにハッと驚いて、そして、笑った。

「なるほど……そう言うことか。颯真————君は……あの巫女の生まれ変わりだったのか」


「えっ!?」

(俺が……巫女の生まれ変わり!?)


「ならば、恐れることは何もない。てっきり、歴代の呪受者よりは力がないと思っていたが…………あの巫女の生まれ変わりなのであれば、話は別だ」

 予想外の話に、戸惑う俺をよそに、話は進む。

「颯真、そして、茜。汝らに、神の名のもとに命じよう。今すぐに、白虎の竹林へ向かい、妖狐と愚かな裏切り者を殲滅せよ」

 こうして、俺たちは刹那がいる白虎の竹林へ向かうことになった。









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