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第三章 新月の夜
第23話 戻り湯
しおりを挟む「きゃあああああああ!!!」
「ここは女湯よ!!!」
「どこ見てんのよおおお!!!」
もうこれで3回目だ。
流石に、洗面器はかわせるようになったが、3回目だ。
殺生石を目指して歩いていただけなのに、俺とユウヤだけが、だいたい同じような岩場まで行くと、あの手が出て来て俺たちは何度も川に投げ込まれ、なぜか女湯に戻される。
そして、警備のおっさんに捕まる。
逃げる。
また戻る。
そして、また捕まる。
また逃げる。
歩くのがいけないのかと、術で空中に浮いて岩場に足をつけることをやめたのだが、それでもしつこいくらいに、あの腕は長く伸びて、俺とユウヤの足を掴み、胴上げされて、川に飛ばされる。
「青龍の高原に行きたいだけなのに、なんなんだ一体」
「颯真、僕は綺麗なお姉さんの裸だけでいいよ。おばあさんの裸はちょっと…………」
「俺だって、見たくない…………」
警備の目を盗んで、神社の裏に隠れた俺たちは、ずぶ濡れのまま震えていた。
「とりあえず、刹那を呼ぼう。今日はダメだ」
「そうだね……僕もう、これ以上は無理」
俺が行かなきゃ意味がない。
仕方がないので、ユウヤが刹那に式神を送って、一旦引き返すことにした。
最初に上流を目指して歩き始めたのは、夕方の日が落ちる前だったのに、気がつけばもう日付が代わろうとしている。
「刹那まだかな? もう嫌だよ……心が折れた。刹那のあの綺麗な脚が見たい…………」
「ユウヤ、お前またそんなこと言ったら、蹴られるぞ?」
「だって、ひどいと思わない?僕がいるからって、今日ジャージなんだよ?」
「それはお前が触ろうとするからだろうが…………」
刹那を待ちながら、たわいもない会話をしていると、後ろから物音がする。
「何をしてるのですか?」
振り返ると、小学生くらいの白い袴の男の子が提灯を持って立っていた。
「は……狛一!? どうしてここに……!?」
「狛一は、兄の名前です。ぼくは狛六です。…………おや、もしやこの匂い……呪受者様ですか?」
あの八咫烏の揺籠にいた狛一と全く同じ顔をている少年は、不思議そうに俺の顔をじっと見る。
「おかしいな……以前ここに来た呪受者様ではないのですね。あの時は女の方だったのに…………」
( 女の方……?それって、まさか———— )
「お名前なんて言いましたかね? えーと……たしか…………ああ、そうだ。
飛鳥様でしたかね? あのお方はお元気ですか?」
( ————ばあちゃんの名前だ )
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