覚醒呪伝-カクセイジュデン-

星来香文子

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第二章 八咫烏の揺籠

第14話 八咫烏の揺籠

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 京都に着いたのは夜9時を過ぎていて、車が止まったのは、大きな白い鳥居のある神社の裏にある駐車場だった。
 参拝時間はとうに過ぎ、神社の周りには道路の街灯くらいしかあかりはついていない。

 前を歩く春日様について、刹那、俺の順で石畳の上を歩いていく。
 刹那は比較的動きやすいようにと、最近長い髪を後ろで束ねるようになった為、後ろを歩く俺の顔に時たま揺れる髪が当たる。
 だから俺は少しだけ距離をとって歩いていた。


「お待ちしておりました。春日様」

 近くに行くまで気がつかなかったが、鳥居の前に小学生くらいの白い袴の少年が二人立っていて、俺たちを中へ通し、その内の一人が持っていた提灯にあかりを灯して、先導して歩き始めた。

 参道の端を通り、拝殿の手前あたりで少年は何か言葉を口にした。

 すると、拝殿の前に地下へ続く階段が現れる。

「さぁ、どうぞ」

 少年は刹那に提灯を手渡して、刹那と春日様が先に階段を下っていった。
 俺もその後に続こうとしたが、少年はなぜか俺の前に立ちはだかる。

「な……なんだよ」
「あなたが呪受者ですか?」
「そう……だけど?」
「やはり。通りで美味しそうな匂いがすると思った」
「え?」

 少年はそう言ってニヤリと笑うが、その笑顔に俺はゾッとした。
 今まで出会って来た妖怪と同じ、緋色の目をしている。

「お前……妖怪か?」

 全く気がつかなかった。
 少年は、人間ではない。

「さぁ、どうでしょう?」
「どうでしょうって……お前————」

「颯真! 何してるの! 置いて行くわよ!」

 刹那が俺を呼んだ。

「さぁ、呼んでますよ?どうぞ、お入りください」

(自分で邪魔しておいて、何が呼んでますだっ……)

「颯真! はやく!」

「わ、わかったよ、今行く」



 * * *





 地下へ降りると、また長い通路があり、誰かの術が施されている松明に明かりが灯っている。

 その奥の方にさらにもう一つ階段があり、降りると縁側があった。
 日本家屋が一軒、すっぽりと地下にそのまま建っていた。

 靴を脱いで、中へ入るとやけに広い和室があり、20人ぐらい人がいて、左右に分かれて座っている。


「やぁ、待ちくたびれたよ、春日。そして、一颯真……————」


 その一番奥……つまりは、一番上座に座っていたのは、先ほどの少年とより幼い少年で————


「——……早速、会議を始めよう」


 俺よりもっと白に近い髪色で、藤色の瞳をした少年だった。
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