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番外編
オリオン皇太子殿下の情事
しおりを挟む――王都にある高級娼館の貴賓室。
薄いピンクの髪の毛が、腰を打ちつける度に、揺れ動く。
「あぁん、殿下! きもちいのぉぉ!」
メリアとは色が似ているだけで、顔の作りは違う。
この鼻にかかった媚びるような声も全然違う……。
「もっと、あんっ!」
卒業パーティーで、婚約発表しようと思ったのに、目の前で振られた。
隣国の王子を見つめるメリアは、今まで見たことのない程の甘い表情で、直ぐに敗北を悟った……。
「んぅ……っ 殿下、好き! こっちを見て?」
アメジストの瞳と目が合う。違う、メリアの瞳はもう少し淡い色だった。
でも、少しはメリアに、好きと言われているような気がして、火がついた。
腰を持って、ベッドから下ろすと、壁に手をつけさせ、後ろから突く。
「あっ、あっ、奥まで来るの~! お上手っ」
大きな胸を両手で揉めば、メリアを犯しているような錯覚がおきる。
あぁ。大切にしたいのに、自分を選んでくれなかった事が辛くて、乱雑な愛撫になってしまう。
それでもこのメリアの面影があるこの女性は、反応良く喘いでくれて、救われる思いだ。
無我夢中で、腰を降ると、射精感が高まってくる。
「っく、出る」
中が蠢いて、精を吸い取られる。その感覚に、何故か罪悪感を覚えて引き抜く。
ベッドに横になると、これでもかというほど、丁寧にお掃除フェラしてくれた。
***
在学中、学園で侍らせていた、下位貴族令嬢達は、順番に手を出していた。
卒業後、慰めてくれる彼女達に甘えて、まとめてご奉仕してもらったが、メリアに振られた衝撃で、下半身が役に立たなくなってしまった。
目の前で振られた事だけでも、プライドが許されないのに、男としての尊厳も傷つけられて、あまりのショックで、枕を濡らした日々。
そんな俺を見兼ねて、側近達が娼婦を見繕ってくれた。
勃たなかったら、ただ話すだけで良いからと。
言われるがままに、高級娼館の貴賓室に入った俺は目を見張った。
薄いピンク色のふんわりとした髪に、アメジストの瞳。メリアの色を持った娼婦だったから。
「初めまして、殿下。フロラと申します」
顔はメリアと全然違う。メリアは小動物のような庇護欲そそられる印象に対して、目の前の彼女(フロラ)は、ぷくりとした唇と、その下にホクロがあって、色気のある美人系な顔立ちだ。
「……殿下……?」
小首をかしげる仕草が、メリアに重なって見える。すると、下半身に熱が帯びてくるのが分かった。
「今から俺は君を無理矢理襲う。嫌だと抵抗しつつも、最後には受け入れてくれるか?」
コクリと頷いた。そして、衝動的にフロラに覆い被さる。
「いや、おやめください! 殿下!」
「やめない。お前はいつも俺から逃げる」
無理やり口付ける。硬く閉じている唇を、強引に舌でこじ開け、口の中を犯す。
「んぅぅ……っ」
なんて愉快だ。俺はメリアを、あの男から寝取りたかったのかもしれない。
「あの男がそんなに良いのか? なんで俺を選ばない」
「やぁ」
いけない事をしている感覚に、高揚感でいっぱいになる。
「本当は俺が良いんだろう? ほら、舐めろよ」
ベルトを乱雑に取って、下を脱ぐ。ご無沙汰の相棒が、そそり勃っている。
先走り汁を、娼婦(フロラ)の唇に押し当てると、徐々に吸い込まれていく。
メリアを服従させているようで、良い気分だ。
***
あれから何度も何度も娼館に通い詰めて数年が経った。
他の女性には不思議と勃たないままだったからだ。
「フロラ、いつもすまない」
「いいえ。殿下に気持ちよくしてもらって幸せですわ」
交わっていない時、フロラは常に微笑んでいた。
まるで、全てを受け入れてもらっているような、そんな安心した気分にさせてくれる。
「実は今夜、殿下に大切なお話がありますの」
「……なんだ?」
嫌な予感に、胸がざわつく。
「この度、借財を返済し終えましたので、娼婦を辞めようと思うのです」
――上手く言葉が脳で変換されない。
「殿下のお心、少しは晴れましたか?」
――フロラは辞めると言ったか……?
「駄目だ! 君まで俺を捨てるのか」
(嫌だ嫌だ嫌だ)
「捨てるなど。私は再三お伝えしているではありませんか」
「え?」
フロラは綺麗な笑顔で、俺の手を握った。
「お慕いしております。でもこの想いが報われることはないでしょうね……」
「!? 好きと言っていたのはベッドの中で喜ばせてくれているものだと」
すると、キッと可愛く睨まれた。
「そのような事、貴方様にしか申しておりません」
「っ!」
久しぶりに胸がギュッと苦しくなる。あぁ、この人だけは、誰にも渡したくない。
「でもオリオン殿下には忘れられぬお方がいらっしゃるのでしょう。だから……っきゃ!」
引き寄せてキスをした。初対面の時とは違う。フロラだけを考えた口づけ。
いつからだろう。メリアの面影を感じなくなったのは。
いつからだろう。薄いピンクがフロラの色と認識したのは。
「君だけは失いたくないんだ。俺と一緒になってくれないか」
「でも、私は娼婦で……」
「お願いだ、フロラ」
「……よろしくお願いいたします」
破産した商家の娘で、娼婦だったフロラは、皇太子の正妃として認められなかった。
しかしオリオン・グロウムーンは、生涯正妃を迎える事なく、側室フロラをこよなく愛したという。
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