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最終章
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しおりを挟む王立グロウムーン学園に入学したのが夏の暖かい時期だったけど、瞬く間に、冬が訪れた。
つい先日、王都も初雪が観測されたところだ。
近頃、胡蝶蘭の部屋にいるときは、暖炉の火の前で、本を読むことが気に入っている。学園は一年しか通わないから、この部屋で生活するのも後半年。この豪華でかわいいお部屋を堪能しないとね。
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あの事件が起きてから、特に社交界が大騒ぎだった。皇族大逆罪で、古くから受け継がれてきた、トワイライト伯爵家が取り潰しになったからだ。
その他にも黒い噂のあった貴族達が、貰い事故を起こした
学園内の雰囲気も少し変わった。エリザ・トワイライト伯爵令嬢が去ったことで、オリオン皇太子殿下の周りには、下位貴族令嬢たちが集まるようになった。
ひとたびオリオン皇太子殿下が椅子へ座ると、両腕に一人ずつ、両膝にも一人ずつ、後ろからハグをする人……。とにかく物凄い人気っぷりだ。
そして、一番残念な変化。それは、私の平和な生活は無くなってしまったことだ……。
「メリア嬢、今日こそ婚約を認めてもらうぞ!」
「あの……。毎日申し上げていますが、次期国王であるならば御自覚くださいませ」
「その次期国王からの求婚だぞ。そちらが折れろ」
「全力で遠慮をいたします」
「じゃあせめてヤらせろ!」
「なんて最低なんでしょう。この国の行く末が心配ですわ」
……お察しの通り、ことある毎ごとに、オリオン皇太子殿下が無駄に絡んでくるようになったのだ。勘弁してほしい。
しかも求婚しているというのに、令嬢集団はそのまま身にまとわりつかせたままだ。ふざけているとしか捉えられないところが、余計に腹立たしい。
しかも令嬢達は、穏やかで和やかな雰囲気。無駄な争いをせず「私たちは側室や妾を目指しているので、メリア様はどうか遠慮などなさらず皇太子妃になってくださいまし!」「メリア様が皇太子妃になりましたら皆大歓迎ですわ」などと言って、なぜか私のことを応援してくれている。もうやだ……。私はノアが好きなのに……。
「私、寮に帰るところでしたの。御前失礼いたしますわ」
そそくさと去ると、後ろから「あ、待て! メリア嬢!」とか聞こえてくるけど、聞こえなかったことにしよう。
あまり目立つことは好きではないのに、殿下と私が婚約するかで学園内で賭けとか横行してるし、本当に勘弁してほしい。(二回目)
賭けの比率は半々らしい。最近は、溜息をついてばかりだ。それ以外にも大きな悩みがあるというのに。
.
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胡蝶蘭の部屋に戻ってきて、制服から着替え、今日も今日とて、暖炉の前であったまる。専属メイドのケイトに入れてもらった紅茶を飲みながら、憂ごとを思い浮かべて、ぼんやりとする。
閨授業を受けて、非処女になってからというものの、あんなに性に対して抵抗感があったのに、ここ最近の私はおかしい。
入学してからずっと逢えていないノアが恋しくて、ノアのことを考えると身体が熱くなる。毎晩のように自分を慰め、お腹の奥にノアが欲しくなっては届かなくて悶々とする。
ノアの低めの体温に抱かれて、いじわるされながら、壊れるほどぐちゃぐちゃにしてほしい。他の人ではなく、どうしてもノアがいいのだ。
あの熱のこもった碧眼に、淫らかな私を見て欲しくて、堪らない。あまり表情を変えないノアが、肌を合わせている時は、少し余裕がなくなる瞬間を思い浮かべては、愛おしい気持ちがふんわり浮かぶ。
いまだに、昔に会ったことを思い出せないのが悔やまれる。それに、ノアの身の上のこともわからないままだ。迎えにきてくれるという言葉を信じているけど、もし貴族でなかったら一緒になるのが難しい。そう考えると胸が裂かれそうなほど痛んで、怖くてお兄様に聞けずにいる。侯爵家の人間として理にかなう結婚相手でないと、家族はもしかしたら認めてくれるかもしれないけど、領民からは咎められるだろう……。うっ、考えるだけでつらい。
逢えない時間が、考えを巡らせて切なくなる。
それにしても火照った体がつらい。ノアが欲しい。困ったなぁ。
あ。そういえば、事件の後……いや前から、ララお兄様に困ったことがあったら、相談するように言ってくれていた。身体が疼くなんて言うのとんでもなく恥ずかしいけど、週末の休暇は、久しぶりに実家に帰ろうかしら……。
お父様とララお兄様から貰った性具も私室にあったはずだし、こっそり持って帰るのもありかもしれない。バレたら穴に埋まりたくなること間違いなしだけど……。
よし、決まり。
「ケイト」
「はい。メリアお嬢様」
「週末の休暇は久しぶりにノックス家に帰ろうと思うの。実家に知らせてもらっても良いかしら」
「お帰りになられるのですね。承知しました」
「ありがとう」
これで、よし。
あんまり悩み続けることは、よくないって、あの事件で身に染みたから、勇気を出してララお兄様を頼ってみよう。
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