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第三章
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しおりを挟む私は青年に背中に杖を突きつけられて、あのお楽しみ部屋に入った。仮眠室であるが故、欲求不満な生徒たちが、発散するために使われてしまっているあの部屋だ。
男は杖を操り、私の手首を魔法を使って後ろで縛って、ベットに拘束された。
「こ、こんなこと、おやめください……」
「ははっ。ドアの前の入室記録に、メリアちゃんの名前を書いていたからね。君、男子生徒にどう思われてるか知ってる? 顔射したい女ランキング一位だよ。直ぐお楽しみ部屋を利用してる奴らが入ってきて、君を襲ってくれると思うよ」
「っやだ……!」
「僕好きな子が、他人に触られて気持ちよくなっちゃってるところ見ること憧れていたんだよね。楽しみだなぁ。メリアちゃんが感じてるところたくさん観察してあげるからね」
……最悪だ。手首はほとんど動かない。足は動かせるけど、手首がベットにきっちり拘束されているから、魔法を使っても、縄だけ消すのはコントロールがうまくいかなくて手首ごとなくなってしまいそうだ。
どうすれば……。涙がこぼれそうになる。
でもこんなところで穢されるわけにはいかない。きっと。きっと。授業が終わったソフィーとシエナ様が無事寮に戻れたか確認するはず。戻ってないことがわかれば、警備に通報してくれるはず。
だから私は、それまで、何とか時間稼ぎをすれば良い。
ノアがくれたネックレスは、今日もつけている。媚薬は効かないだろうし、ノアが一緒にいるような心強い気分にさせてくれる。
大丈夫。きっと大丈夫。震える手を握りしめる。
「おや。早速誰か来たようだよ」
五回ノックの音が響く。私を拘束した青年が応じて、扉が開く。
「メリア様。やっぱり私と遊びたくてここに来てくださったんですの? 入室記録に名前を書くのは男の人って暗黙の了解で決まっていますのに、メリア様ったら大胆ですわね」
そこには、頬を高揚とさせた、ソフィーの姉、カレン・テイラー伯爵令嬢が現れた。以前にカレン様にお楽しみ部屋へ誘われたから、そのことを言っているんだろう。
「カレン様! 助けてくださいませ! 私この男に脅されて連れてこられたんですの!」
「な、何てこと。そこの貴方。こちらの令嬢がどなたかご存知でないの!? 直ぐにメリア様の拘束を解きなさい。……って、きゃあ!」
見知った顔に少しの希望が見えたが、瞬く間にカレン様も、男の魔法によって手首を縛られ、同じくベットに拘束されてしまった。
「カレン様!」
「貴方、この私に何をするの?! こんなこと許されるとでも?!」
「きゃんきゃんうるさいなぁ。君のこと生意気だと思ってたんだよね。あ。これでも飲ませたら、ただの雌犬になって面白いかもね」
男の手にはどこからかピンク色の液体が入った瓶が握られていた。それを抵抗するカレン様に無理やり飲ませる。
「これメリアちゃんにも飲んで欲しいんだ。ほら、嬉しいでしょう」
瓶を口に突っ込まれ、私にもピンク液体が流し込まれる。甘ったるい味が口に広がり、むせそうになってそのまま飲み込んでしまった。
おそらくこれは媚薬だろう。私はノアからもらったネックレスをつけているから効かないだろうけど、カレン様は……。
横にいるカレン様のお顔を横目で見ると、すでに火照ほてってきている。……最悪だ。即効性の媚薬だなんて……。だんだんとカレン様の息が上がってきて、太ももをすり合わせ始めた。カレン様は、涙目で男を睨むと、悔しそうに唇を噛んでいた。
「カレン様。ごめんなさい。貴女のことを巻き込んでしまって……」
本当に申し訳なくて、苦しそうなカレン様に、小声で謝る。
「んぁっ、ふぅ……。貸し、ひとつよ……っ」
強く頷くと、またもやノックが五回鳴る。
扉の向こうから、複数人の低い喋り声が聞こえてきた。今度こそ、犯されてしまうのだろうか……。手首を引っ張っても、ベットが多少揺れるだけで駄目。
そうこうしている間にも、無常に扉が開いてしまう。
「どうぞ、入ってよ。この二人が子を孕むまで、犯されたいってさ」
「ウオォ! 本物のメリア・ノックス令嬢じゃん! まさかお楽しみ部屋でお目にかかれるとは」
「お、女王様プレイのカレン嬢もいる。たまには責められたいのですか? すごい発情してらっしゃる」
部屋の中には、二人の男子生徒たちが入ってきた。舌なめずり、こちらをニタニタと見ている。
「私たちは、この男に拘束されているのよ。もしも犯したら侯爵家と伯爵家を敵に回すことになるわ。今すぐこの縄を取ってくれたら許してあげる」
「ハハッ。そんな強気なこと言ってるのに、声が震えて台無しですよ」
「安心してください。ご希望通り、孕めるように、中に子種をたぁくさん注いであげますよ」
大股でベットに近づいてくる二人。いや、触れられてしまう。
(助けて、ノア……!)
とうとう馬乗りにされた、その時。
ノアからもらったネックレスが、浮いて、まばゆい光を部屋中に放つ。
光の粒子が、段々と濃くなってきて、反射的に目を瞑る。
「なんだこの光は……!!!!」
「うわあああ!! 痛い痛い痛い」
「ぎゃああああああ!!!」
光が収まって、辺りを見渡すと、私に触れた二人は、目を手や腕で覆って、悶えてるようだった。
(な、いったい何が起きたというの……?)
呆然としていると、誰かが走って近づいてくる足音がする。
そして、足音が近づいたと思ったら、勢いよく扉が開けられた。
「メリア嬢!!!」
「メリア!!! と、あれ?! カレンお姉様!?」
そこに現れたのは、ソフィーとシエナ様だった。
シエナ様は、軽やかに足を踏み出し、犯人の男に、飛び蹴りをする。すると、呆気ないほど、そのまま倒れて、気絶した。
慣れた手付きで、三人の男たちを纏めて縄でくくる。
「ソフィー、シエナ様……! 来てくれてありがとう……!」
「メリア、今縄とくからね」
「そうしたら、カレン様からお願い。媚薬を飲ませられていて……」
直ぐにカレン様は、シエナ様にお姫様抱っこをされて、医務室へ運ばれた。間も無く警備の人たちが続々と入られて、犯人の男と、襲おうとしてきた二人は連行された。
ーーーお、終わった。
恐怖からくる緊張が解けると、縄を解いてもらってからも、腰が抜けてしばらく動けなかった。
(ノア、離れていても、助けてくれてありがとう)
涙が一粒、頬に流れた。
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