愛のゆくえ【完結】

春の小径

文字の大きさ
上 下
13 / 13

後日談&補足(3)

しおりを挟む

・公爵夫妻(夫58、夫人56)
夫は無類の女好き。
公爵家のメイドとはいえ行儀見習いの貴族の令嬢に手を出し孕ませた。
婚約者もいたから慰謝料は二倍。
ほかに子供はいなかったため、生まれた子供を買っちゃった。
その慰謝料で首が回らず、人の良い《私》の両親にお金を借りて立て直した。
しかし、その借金は返済する目処が立たず。
「死んだら返済する必要がなくなるわよね」との理由から、二人を屋敷に招いた道中で盗賊に襲われたように殺させた。
さらに息子たちが結婚してから《私》の兄を殺せば侯爵家を乗っ取れると思っていた。
残念ながら、もしそうなったとしても親戚が当主となるだけだったと…………今も知らないだろう。
なぜ自分たちの悪事がばれたのかわかっていないが、夫人が淑女の嗜みとしてつけていた日記という名の犯罪記録があったから。
それはのちに罪の立証に大変役立った。
…………あまりにも愚かだ。
ちなみに尋問に『涙の雫』の実験台として額に一滴つけられては悶え苦しんだ。
その副作用か、神経が図太いからか、心臓に毛が生えているからなのかはわからないが、どちらも地下牢で生き続ける。

「ねえ、いつになったら出してくれるのよー!」
「……そういえば、一緒に入った奴らはどこいった?」

(何十年も前に死んだだろーが!)
(あとから入った俺らより長生きしそうだな)
(百歳は超えているだろ)
(……あの元気はどこからくるんだ?)




・王子(25)
《私》の兄を親友だと思い込んでいた残念な人。
兄妹二人きりの侯爵家に先触れもなくやってきては何日も宿泊する礼儀知らず。
《私》に告白されたときは『妹のように思っている』と答えたが、異性としてみるようになってはじめて逃した魚は大きかったことに気付いて策略を謀った。
王子らしく婚約者がいたが、事故死や病死で誰ひとりとして長続きせず。
四人目の婚約者が亡くなった時点で婚約者になれる令嬢はいなくなった。
市井の噂では王子の不興をかって殺されたと言われていたが事実である。
手を下す者を雇うために国庫のお金に手をだした。
(前金を受け取った実行犯やそのグループは、成功報酬を受け取ると同時に国をでた。のではなく、口封じに殺されている)

国庫から不正にお金を引き出していたことで男爵に疑われた。
冤罪で一家を牢に入れたものの、男爵の娘を使って邪魔な婚約者を陥れようとした。
婚約破棄騒動を聞いて、精神的に弱っているであろう《私》を手に入れる算段をつけた。
書類の内容を吟味せずにサインと押印をして書類を片付けていった。
出て行くときに、開いたままの窓から入った風で机の上の書類がとんでしまったことに気付かなかった。
さらに、脅しに使って引き出しに入れていた男爵一家の処刑命令書が引き出しの隙間から落ちていたことに気付かなかった。
その結果、散らかった書類を集めた文官が落ちていた命令書も一緒に持っていったことで悲劇が起こった。

フラれた上に罪が暴かれ、毎日処刑台の上で拷問を受け続けても死ねず。
ある日、それが兄妹が作った薬で回復していることを知る。
さらに婚約破棄した二人がヨリを戻して結婚したことや、子供も産まれて幸せに暮らしていることを知ると、自身を『悲劇の主人公』のように思うようになった。

「私の想い人は誰ひとり私を選んでくれない。なぜだ! なぜ私を選んでくれないのか。私の何が悪かったというのだ。私は誰よりも上だ。知恵も人気も権力も。……王子だったからか? 王子という立場が、すべてを上回る私があの幼馴染みより劣るというのか! だったら王子を辞めれば良かったというのか……」

(間違いなく、その自意識過剰な点だよ)



・涙の雫
偶然から生み出された回復薬。
傷口は塞がるが痛みと傷あとは残る。
なぜか、元公爵夫妻と元王子には副作用がでている。
老いず、死なずで夫妻はなかなか元気。
元王子の拷問も毎日続いている。

噂では男爵一家の涙と言われているが、副作用を考えるとそれも真実ではないかと言われている。
なお、きっかけとなった《私》と彼女の兄と夫は、シワひとつなく老いずに天寿をまっとうした。



(了)
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

旦那様はとても一途です。

りつ
恋愛
 私ではなくて、他のご令嬢にね。 ※「小説家になろう」にも掲載しています

誰の代わりに愛されているのか知った私は優しい嘘に溺れていく

矢野りと
恋愛
彼がかつて愛した人は私の知っている人だった。 髪色、瞳の色、そして後ろ姿は私にとても似ている。 いいえ違う…、似ているのは彼女ではなく私だ。望まれて嫁いだから愛されているのかと思っていたけれども、それは間違いだと知ってしまった。 『私はただの身代わりだったのね…』 彼は変わらない。 いつも優しい言葉を紡いでくれる。 でも真実を知ってしまった私にはそれが嘘だと分かっているから…。

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。

ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」  はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。 「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」  ──ああ。そんな風に思われていたのか。  エリカは胸中で、そっと呟いた。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

元婚約者が愛おしい

碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

処理中です...