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しおりを挟む王子の目論見は最初から破綻していた。
彼は女性を脅すために『処刑命令書』を発行していた。
王子は婚約破棄の話を聞いて、書類内容を確認せずサインと押印をしていった。
その中にその命令書が紛れ込んでしまった。
その結果、悲劇の一家は公開処刑された。
そこには乳飲み子の小さな身体もあった。
その小さな遺体をみて誰かが呟いた。
「あの幼な子はなんの罪を犯したのか」と。
その小さくも大きな波紋は集団蜂起となり、王都内を揺るがすクーデターとなった。
王城を守るはずの騎士たちも、あの小さな生命を奪う命令に苦しんでいた。
そんな惑いが押し寄せた平民を押し返すこともできず、侵入を許してしまった。
人々は王を、王妃を、側妃たちを、そして王太子をはじめとした王子と王女を捕らえた。
王以外は塔に幽閉された。
それはさらなる混乱を起こさせないため。
人々もわかっていた。
この混乱が大きくなれば、王女たちに不埒なおこないをする者があらわれることを。
そのための幽閉だった。
宰相が件の処刑に関する書類を王に渡した。
処刑命令書のサインは王子のものだった。
そして……一家の罪名は空欄……だった。
「なぜ王子が処刑の権限を持っているんだ!」
そのような権限は王子にはない。
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その権限を持つのは法務大臣のみ。
しかし、法務大臣は先だっての自然災害による被害確認で現地に滞在しており不在だった。
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王の一存で処刑を止めることができたら、それこそ権力が、貴族という立場が悪用される。
「王子は!」
「親友の妹が婚約破棄をされたとのことで慰めにいくと。そして上手くいけば連れて帰る。そう申しておりました」
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その妹に懸想していることは王も知っていた。
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その片方が親友の妹だということも。
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