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しおりを挟む「お久しぶりにございます。公爵閣下」
「おやめください。すでに私は公爵ではございませんよ、侯爵夫人」
かつての婚約者と私はお互いに微笑みあう。
私たちの婚約破棄は悲恋の題材になっている。
互いに愛しあっていたものの、私の両親は借金を返済する気がなくなった婚約者の両親に惨殺された。
その悲しみを手を取りあって乗り越えた私たちを、今度は私に懸想した王子が婚約破棄を目論んだ。
王子の悪事に気付いた父親を闇に葬るために冤罪で捕らえた一家に、子を三人なしても美しさが衰えない女性がいた。
家族愛を知らぬ王子は、乳飲み子を含めた家族六人の生命を楯に二人の婚約を破棄し、さらに婚約者と結婚できたら生命を助けると交渉した。
しかし、だんだん罪の意識に苛まれる女性。
さらに二人は互いを思いやっていて、割ってはいる隙などない。
そして、何か切羽詰まった事情があると気付いた二人は女性に優しく接していた。
そんな優しさに触れた女性は王子の計画を話してしまう。
婚約者の二人はひと芝居をうった。
あるパーティーで盛大に婚約破棄をおこなった。
それによって、公爵家有責により借金の一括返還と慰謝料の支払いを公爵夫妻に認めさせると共に、日を改めて公爵夫妻の罪を明らかにするためだ。
その場に王子はいなかったが、婚約破棄は貴族たちによって証言された。
王子は自身の計画が成功したことをほくそ笑み、婚約破棄により悲しんでいるであろう想い人の元へ駆けつけた。
そして想い人の心の弱みにつけ込んでプロポーズしたが玉砕した。
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