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しおりを挟むそう、クーデターによって国は大きく変動した。
国王をはじめとした王族は全員が塔に幽閉された。
一人ずつ取り調べられて、人心に寄り添った考えをもつ王子や王女たちは塔からだされて私室や離宮で軟禁された。
側妃も塔から解放されていった。
そうなると、騒ぐ者が現れた。
塔に一人一部屋で幽閉されたこと。
塔から解放される者が現れたにも関わらず、自身は取り調べられても解放されないこと。
焦りからか、他者の悪事を訴えて解放を求める者も現れた。
そんなことしても、事実を調査する。
そして嘘だった場合、解放は見送られることとなった。
国王と王妃はひとことも言葉を発しなかった。
立場を理解しているからだ。
「「私たちの生命でこのクーデターが落ち着くのなら」」
そう、自身たちが処刑されることでクーデターが終結する。
二人はそう考えていた。
しかし、彼らは生涯地下牢に移されて幽閉されることとなる。
「死は赦し。そう簡単に安らぎなど与える気はない」
地下牢には段階がある。
第一の牢は男女別でまとめて入れられる。
悲劇の一家が入れられた地下牢は、一家で分けられる第二段階目の牢だった。
そして最下層には……明かりがない。
自然光は届かず、牢の中を照らす人工の光もない。
手足につけられた枷と左右を繋ぐ鎖がこすれる音でその存在がわかる程度だ。
動かないため食事の回数も少なく、一人一本の黒パンだけ。
明かりは、役人が足を踏み込むときに持ってはいるカンテラのみ。
それが鉄柵で遮られた自由と希望の灯火だった。
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