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⒋
しおりを挟む「王都へお帰りを。自身の責任を最後までお果たしください」
「王都より馬車が到着しました。陛下よりすぐ戻るよう……王命にございます」
兄が扉を開いたままの応接室に入ってきた。
そして私と親友だった男との間に割って入る。
「お客様のお帰りだ。丁重に馬車までお連れしろ、丁重にな」
兄の命令に、私兵が男の両腕を掴んで強引に立たせる。
「公爵家のことは」
「すでに新しい公爵家当主と共に両親を殺した罪を告発して王都へ護送した。運が良ければ王都で会えるだろう」
「そうか……」
男は新聞により王子の立場を剥奪されたことが公表されている。
そして裁判が開かれたのちに……罰を受けるだろう。
それまでは貴族牢に収容される。
その貴族牢には一足先に前公爵夫妻が収容されている。
力なく俯いて連行されていく男に同情しない。
紙面には大人三人の遺体のほかに吊り下げられた小さな身体が三体……救いたかった彼女の子供たちの姿がそこにはあった。
家族を救えなかった女性は身を投げた。
両親と夫、三人の可愛い子供たち。
その幸せを王子の欲望によって砕かれたのだ。
一家の悲劇はこの国の崩壊と再生を語る上で避けられないものとなった。
その事実があったからこそ、国民は王家に憎しみをぶつけた。
婚約者にとっても私にとっても『真実の愛』を教えてくれた大切な女性は、目覚めることなくこの世を去った。
それはまるで、自分たちの運命を踏みにじった男の末路を見届けて安心したように。
彼女の遺体は、クーデターによって取り戻されて丁寧に埋葬された愛しい家族と共に眠っている。
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