愛のゆくえ【完結】

春の小径

文字の大きさ
上 下
4 / 13

しおりを挟む

「王都へお帰りを。自身の責任を最後までお果たしください」
「王都より馬車が到着しました。陛下よりすぐ戻るよう……王命にございます」

兄が扉を開いたままの応接室に入ってきた。
そして私ととの間に割って入る。

「お客様のお帰りだ。丁重に馬車までお連れしろ、な」

兄の命令に、私兵が男の両腕を掴んで強引に立たせる。

「公爵家のことは」
「すでに新しい公爵家当主と共に両親を殺した罪を告発して王都へ護送した。運が良ければ王都で会えるだろう」
「そうか……」

男は新聞により王子の立場を剥奪されたことが公表されている。
そして裁判が開かれたのちに……罰を受けるだろう。
それまでは貴族牢に収容される。
その貴族牢には一足先に前公爵夫妻が収容されている。

力なく俯いて連行されていく男に同情しない。
紙面には大人三人の遺体のほかに吊り下げられた小さな身体が三体……救いたかったの姿がそこにはあった。

家族を救えなかった女性は身を投げた。
両親と夫、三人の可愛い子供たち。
その幸せを王子の欲望によって砕かれたのだ。

一家の悲劇はこの国の崩壊と再生を語る上で避けられないものとなった。



その事実があったからこそ、国民は王家に憎しみをぶつけた。

婚約者にとっても私にとっても『真実の愛』を教えてくれた大切な女性は、目覚めることなくこの世を去った。
それはまるで、自分たちの運命を踏みにじった男の末路を見届けて安心したように。
彼女の遺体は、クーデターによって取り戻されて丁寧に埋葬された愛しい家族と共に眠っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様はとても一途です。

りつ
恋愛
 私ではなくて、他のご令嬢にね。 ※「小説家になろう」にも掲載しています

お姉さまは最愛の人と結ばれない。

りつ
恋愛
 ――なぜならわたしが奪うから。  正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――

私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました

あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。 自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。 その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。

この愛は変わらない

豆狸
恋愛
私はエウジェニオ王太子殿下を愛しています。 この気持ちは永遠に変わりません。 十六歳で入学した学園の十八歳の卒業パーティで婚約を破棄されて、二年経って再構築を望まれた今も変わりません。変わらないはずです。 なろう様でも公開中です。

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

塩対応彼氏

詩織
恋愛
私から告白して付き合って1年。 彼はいつも寡黙、デートはいつも後ろからついていく。本当に恋人なんだろうか?

処理中です...