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この場に私たちの両親がいない
しおりを挟む「神よ。この神具を壊した者をお教え下さい」
姉の言葉に、24人全員の全身が炎のように赤く輝く。
それに裁判を見守る彼らの家族は一律に青ざめた。
マーソンとマレンダの二人が主犯なのはここにいる誰もがわかっている。
その上で、自身の子たちはただゴマをすっていただけで罪は軽いと思い込みたかったのだ。
それが今、全員が同罪だと神に示されたのだ。
「あああ……」と嘆く家族。
「なんてこと……」と嘆く家族。
そして、大半の家族は事実を受け入れられずに呆然としていた。
神具は神から与えられた錫杖。
我が国の平和のために神が下賜くださったもの。
そんな神具を物理的に粉々になどできない。
────── だからこそのこの人数。
彼らは魔力を流し、内側から破壊したのだ。
神々は愚挙を止めることができたにも関わらず、それを放置した。
それは兼ねてより計画されてきたことを実行するためだ。
『聖女制度』
これを望んだのは神ではない。
私たちの先祖が望んだことだった。
「では次に。この神聖な場において、コシモド公爵子息マーソンの宣言により、神具の破壊という冤罪を理由としてソフィー・ゾローネは聖女の称号を剥奪された。さらに次期公爵家当主の名において新たな聖女としてマレンダを任命し、マレンダは襲名を宣言した。そして二人が婚約を宣誓し、彼ら全員が呪われた宣誓を祝福した」
姉が次なる罪を公表すると家族たちだけでなく両陛下も驚きの表情で顔を見合わせた。
神殿の外だったらまだ撤回が許されただろう。
しかし彼らは神の御前においてこのすべてをおこなってしまった。
宣誓もした以上、変更は叶わない。
「お、お待ちください!」
そう言って立ち上がったのはマーソンの父、コシモド公爵だった。
そんな彼に冷たく尖った視線が無遠慮に突き刺さる。
「コシモド公爵、発言をどうぞ」
「はっ、ありがとうございます。訂正でございますが、次期当主はマーソンではなく彼の弟ネイシクスでございます。それはネイシクスが隣国に留学する際、正式に貴族院に届けております」
その言葉にマーソンが叫ぶ。
「父上! ネイシクスは公爵家に相応しくないため国外に追放したのではなかったのですか!」
「黙りなさい。罪人に発言権はありません」
姉の言葉に、彼に一番近い神が喉に手をかざす。
すると彼が喚くように口を動かしたが声はでていなかった。
神の姿をみられないマーソンは、神が声を封じたことに気付けなかったのだ。
そして今、青ざめた表情で顔を俯かせている。
「神よ、ありがとうございます。コシモド公爵、あなたは彼が次期当主だという誤解を解くことも否定することもなく、貴族院に届けをだしたからと放置し続けてきたからこのような事件が起きたのではありませんか?」
「たしかに、マーソンの言葉に否定はしてきませんでした。もし次期当主が弟だと知られれば、弟の生命が危険に晒されるからです」
「それはただの言い訳に過ぎません。もし弟に危害を加える可能性があるのなら、なぜ幽閉など対処もせず弟を国外に追いやったのですか。それは当主としての怠慢であり、我が子可愛さにより厳しい対処を怠ったがために現在あなたは公爵家を失う瀬戸際に立たされているのです」
コシモド公爵は姉の言葉に悔しそうに表情をゆがめたが反論はできない。
姉は公爵家当主の妻であり、次期当主の実母という立場を確立した相手なのだから。
彼がいるからこそ公爵家に連なる立場の姉が立っているのだ。
コシモド公爵は今までも立場を使って相手を脅して罪を握りつぶしてきた。
今回はそれを警戒した上、神々が取り囲んでいるのだ。
「……それはあなたのご実家も、いや、ここにいる全員が重い罪を背負わされるのですぞ! あなたはご実家を……」
周囲を見回してようやく気付いたのだろう。
この場に私たちの両親がいないことを。
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