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泣きマネは結構です
しおりを挟む「はい。以上をもちまして、婚約は白紙に戻りました。お疲れ様でした」
婚約は白紙になっても、それは新たな契約の始まりです。
まず、二度と私と縁を結べません。
これは追加で契約書に書かれたものです。
「ランガ! あなたマルセルのこと好きでしょう! それなのに簡単に……!」
「それを願い出たのはマルセル様です」
「何をいってるの! 殴っても止めるのがあなたの仕事でしょう!」
「それはご両親であるあなた方の仕事です」
「何いってるのよ! 役立たず!」
「はい、役立たずで結構です。結婚前のまだ他人様の娘である私を使用人のように呼び捨てて怒鳴りつけるあなたを『お義母様』と呼ばずにすんでよかったですわ」
「あ、あの。ランガ、私はあなたを娘のように」
「思っていませんよね。っていうより、すでに話はついているのです。あなたの今の暴言もございますので、私には二度と接触しないでください。貴族の権力を振りかざして、マルセル様と再婚約を命じてきたり、ご長子のサミュエル様の愛人になれとか。私の人生を邪魔されたくございません」
最後を調停人に伝えたところ、黙って聞いていた彼らが私や私の両親への接触を禁止した。
そこには当主である私の父の意思も含まれている。
「我がレイエンズ家はバルビオ家と今後一切の関係を断つ」
「待ってくれ! そんなことになったら我が家は……!」
「一般人となるランガの稼ぎをあてにしているお前たち一族から娘を守る。そのためなら、長い友情を終えても構わない」
バルビオ家には慰謝料の一括支払いが命じられた。
期日は三日。
私たちは一般人となるため持参金などはなく、新居を両家が折半することになっていた。
しかし、まだ住むところまで決まっていなかった。
「ランガ、あなたはどこに住むの?」
「そんなこと関係ないでしょう? あなた方は二度と会う権利はないのですから」
マルセル様の母親にまだ絡まれましたが、調停人がキツく言うとハンカチを出して泣き出しました。
「泣きマネは結構です。進行の邪魔をするなら慰謝料の増額を命じます」
調停人にそう言われると「フンッ」と鼻を鳴らしてハンカチをしまいました。
その顔は濡れていません。
それをみて、私と両親はクスクスと笑い合い、マルセル様と父親は恥ずかしさからか顔を赤らめて俯きました。
「すまなかった。私のわがままからこのように急いで決めてしまって」
別れ際にマルセル様は私に深く頭を下げました。
そして私の両親にも深く頭を下げて謝罪しましたが、父は「二度と関わるな」といって馬車へと向かいました。
最後なのだから、ちゃんと謝罪を受けて差し上げればいいのに。
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