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第三章

ここまで申せば動きの鈍いあなた方の頭でもお分かりになりますわよね?

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御目文字おめもじ叶い恐縮至極にございます。サフェール国第五王女レティシアと申します」
「おお、頭を上げられよ。遠きよりよく参られた」

顔を上げると、聞いていた通り威厳があるものの優しさも兼ね備えた顔をしている。
しかし、その表情には影が差している。

「お疲れのようですね」
「ええ、不肖の息子が仕出かした不祥事をすでにご存知なのでしょう?」
「はい。まだ十三歳、いえ当時はまだ十一歳だった少女の家族を……まだ二歳だった弟も含めて皆殺しにしたこと。そして一家惨殺を揉み消すために少女を聖女にしたてあげようとしたこと。そして聖女の資格を持っていることを知って、家族の殺害を正当化した」

私の言葉に国王と宰相の目が驚きで見開かれている。

「ええ、ええ。よく知っていましてよ。あなた方が殺したのは私の姉、サフェール国第二王女メルベールとご夫君。ご夫君の尊父と尊母。そして、私の甥二人と姪一人。ここまで申せば、聖女がサフェール国国王の孫娘、我が姪であることをご理解いただけますよね」

宰相はすでに青ざめた顔で震えている。
国王の方は顔色を失い白くなり、一瞬でも気を抜いたら死んでしまいそうだ。
だからといって手を抜く優しさは持ち合わせていない。


「ウリスレア伯爵及びウールレッド公爵、そしてあなたの弟ボルテ・スーレディア公爵の身柄を引き渡しなさい。仮にも一国の王孫を「売れ」といい、断れば王女一家を惨殺。さらに、その棺も国に渡さず紛失。こちらの調査では、三貴族は共に孤児を引きとってはをしては無惨に殺してきたそうですね。ときには近隣から誘拐していたとも聞き及んでおります」
「お、まち……ください。それは……何かの、間違いです」
「あぁ……それ、は……」
「まさかとは思いますが、現実逃避と権力や立場を使っての揉み消しを狙っていますか?」

私の言葉に二人は黙った。
では立場を弁えていただきましょうか。

「国王陛下。あなたの弟ボルテ・スーレディア公爵が我がサフェール王家第二王女一家を惨殺し、聖女の資格を持っていた我がサフェール王の王孫を一年幽閉しました。さあ、アノール国はその責任をどのようにとっていただけるのでしょうか?」

彼らからは謝罪の言葉は出ませんね。
では……もう一つ、目をそらしている真実をお伝えしましょう。

「お忘れのようなのでお伝えしますわ。我が姉メルベールのご夫君フロストイは隣国ドゥヴェール帝国の出身。その国母はフロストイ殿の実妹パスエール王妃。ここまで申せば動きの鈍いあなた方の頭でもお分かりになりますわよね?」
「失礼します! 陛下! 緊急事態です‼︎」

無作法に大きな音を立てて扉が開かれた。
理由はわかっているので口は挟まないでいましょう。

「何事だ!」
「重要な話をしている最中だぞ‼︎」

二人の声に、飛び込んできた兵士は怯むことなく大きく息を吸い込み、肺にたまっていた息を吐くように重大な内容を吐き出した。

「ドゥヴェール帝国が攻めてきました‼︎」

兵士の言葉に「攻めて来たんじゃないわ。話し合いに来ただけよ」と告げると、兵士は驚きの表情を向けてきた。

「使者が来たらこちらへ。私と同じ話をしに来ただけよ」
「はい、わかりました。それでは失礼します」

兵士は国王と宰相の表情を確認していたが何も指示をされないため、私の指示に従うようだ。
このような状態で困惑している兵士を落ち着かせるために堂々とした態度をとるのは王族にとって当然なのに。

「あなた方はサフェール国王女と王孫三人、そしてドゥヴェール帝国王妃のご両親である前ラインセルナ公爵夫妻と兄フロストイ殿を殺した。つまり、二国の王家を敵に回したんですから……こうなるのは当たり前よね」

フフフ……トドメを刺して差し上げます。
でも引導はまだ渡しませんわ。

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