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第一章
「それは正しい判断です」
しおりを挟む「全員を収監せよ。準備が整い次第、王都へ護送する」
隊長が部下たちに指示を出して、十七人の罪人を檻状馬車に積み込んでいく。
騒いだり、暴れたり、逃走を阻止するため、全員を眠らせてあるのだ。
このままずっと眠り続け、目が覚めたときには牢獄の中だ。
「では報酬をお送りさせて頂きます」
そう言った書記官が自身のステータスを操作すると、私のステータスが音と共に開き、莫大な賞金と宝石などの物品が贈られてきた。
特SSランクの賞金首八人と新規手配書の八人に特別手配書一人。
新規の八人の内一人と特別手配書一人が他者より賞金が高かった。
新規手配書の一人は言わずと知れたシャクヒン元王子、もう一人は……
「ユーゲリアの王太子妃?」
「はい。王太子に毒を盛り逃げた罪人です。王太子は一命を取り留めましたが。そして、その前後にいなくなったのがシャクヒン王子です。王太子妃を追いかけたとも、二人はグルだったとも言われています」
「それはどうだろ……。少なくとも、シャクヒンの方は私に「ユーゲリアの城まで送っていけ」と言いました。そうしたら、生命の恩人として城に住まわせてやる、と。興味がなかったし、馬車の前に飛び出してこなければ助けるどころか見殺しにする気でした」
「それは正しい判断です」と書記官に言われた。
もちろん、大体の位置を確認して町などで報告する必要はあるが。
それも、義務ではない。
今回みたいに武力行使でくる犯罪者もいるため、善意で報告するだけだ。
「王太子妃はグレイモス皇国の第四皇女です。もしかすると、王太子妃の方はグレイモス皇国に戻るつもりだったのかもしれません。ですがユーゲリア国より王太子妃の手配書が出ており、引き渡しを求められています。そのためグレイモス皇国が王太子妃を匿えば、ユーゲリア国と開戦になっていた可能性があります」
部下たちに指示を出して戻ってきた隊長が話に加わった。
グレイモス皇国の方がたしかに国土は広く豊かだ。
しかし軍事力はユーゲリア国の方が上回っている。
開戦になった場合、短期決戦ならユーゲリア国の勝ちだが、持久戦や最悪人海戦術になればグレイモス皇国にも勝機が傾く。
ただ、『漁夫の利』を狙う国はいくらでもある。
ここアノール国もその一国だ。
両国が疲弊すれば一斉に襲いかかり、二国は千々に分断されるだろう。
もちろん、両国の王族は戦争の責任を負うこととなる。
生きて償うなら地獄、死んで償うのもまた地獄。
─── そう考えれば、グレイモス皇国は「嫁いだ時点ですでに我が国とは縁を切っている」として突き出して身を守るだろう。
拷問に屈した第四皇女が「父から王太子を毒殺するように言われて嫁いだ」と証言しなければ……だ。
証拠や証言などは、どのようにも作ることは可能なのだから。
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