上 下
3 / 6

「ここで殺さないでもらえます?」

しおりを挟む

ルベッカの実家は引き取りを拒否したため、爵位乗っ取りを楯に慰謝料を請求。
耳を揃えて一括でいただきました。
我が家の国外流通ルートを磐石にするため、ルベッカの実家ゼローマ伯爵家の国内外流通ルートを慰謝料に。
そして長年居座り続けて我が家の資産を食い潰してきた慰謝料として、国外に展開している商会の譲渡。
いわば我が家の支援で成り立っていたようなもの、という理由で快く譲っていただきました。
罪はそれだけではございませんが。
そのことを訴えたら、お引き取りするそうですよ。


「それで、元婚約者様? 慰謝料云々でしたらすでに当主サロンで話がすんでおりますが。いまさら謝罪などなされても減額はできませんわよ」
「慰謝料……? それは一体」
「あら、わたくしの家で何をしておりましたの?」
「ここはフェスタの家でもあるだろう!」
「いいえ、ルベッカおよびフェスタは我が家とは関係ございません。ねえ、わたくしの母の幼馴染みってだけで居座り、母亡き後も実家に帰らずわたくしに母と姉と呼ばせた不届き者で簒奪者のゼローマ伯爵家ルベッカ様?」

私の言葉に青白くなりながらソファーに座り続けるルベッカ。
フェスタとブレイドは驚きの表情で固まっている。
2人はやっと自分たちが簒奪者であると気付いたのだ。

「ねえ、エーメ。あの……」
「エーメ。君は私のことを……」

縋るように見てきたが正直気持ち悪い。
ちょうどそのとき、応接室の扉が開いて使用人が執事に小声で何かを伝えた。
そして執事が私の隣まできて使用人の言葉を告げる。

「エーメ様。お客様が到着いたしました」
「お連れして」
「はい」

執事が離れると私に怯えた表情を見せる3人。
すぐに入ってきた人たちをみて固まった2人とわかっていない1人。
仕方がない、フェスタはルベッカの実家の人たちと顔を合わせたことがないのだから。

「お、お前たち!」
「エーメ様、お許しを! ああ、お前たち、こっちに来ないか!!!」
「いやっ! 離して! 離しなさいよジジイ!」

3人の様子を見て慌ててソファーから引き摺る彼ら彼女らの正しい身内たち。
それはそうだろう。
上座に座ってる3人、下座に座らされている当主の私。
一見して簒奪者が誰かわかる座り位置。
そんな中、フェスタの暴言に……ルベッカの兄で現当主であるポールが床に投げ飛ばした。

「きゃああ!」
「やめて! やめてください、お兄様! この子のお腹には赤ん坊が!」
「そんな祝福も受けられぬ子など生まれぬ方が良い!」
「ここで殺さないでもらえます?」
「…………申し訳ない」

すぐに手を止めるポール。
一応冷静は保っているようだ。

「やめろ! 私の子を殺す話をするなど」
「何を言っている、タネなしが!」

ブレイドはポールに掴み掛かろうとして父親にぶん殴られた。
ブレイドはあっさりと床に倒れ伏した。
弱すぎる、のではなく、彼は当主に逆らえないのだ。

「ち、ち、ち、ち…………」
「こんの愚か者が!!!」
「私の、子」
「お前には子を作る機能がついておらん!」
「……へ?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

この罰は永遠に

豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」 「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」 「……ふうん」 その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。 なろう様でも公開中です。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

過去に戻った筈の王

基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。 婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。 しかし、甘い恋人の時間は終わる。 子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。 彼女だったなら、こうはならなかった。 婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。 後悔の日々だった。

百度目は相打ちで

豆狸
恋愛
「エスポージト公爵家のアンドレア嬢だな。……なにがあった? あんたの目は死線を潜り抜けたものだけが持つ光を放ってる。王太子殿下の婚約者ってのは、そんなに危険な生活を送ってるのか? 十年前、聖殿で会ったあんたはもっと幸せそうな顔をしていたぞ」 九十九回繰り返して、今が百度目でも今日は今日だ。 私は明日を知らない。

ナイトメア〜悪夢のような一夜〜【完結】

春の小径
恋愛
私、ちゃんと忠告しましたよね? 『馬鹿なことを考えず真っ直ぐ生きる努力をしてください。けっして愚かな行為に走らないように』って。 私の忠告を聞かなかったからですよ。 他社でも同時投稿

誰ですか、それ?

音爽(ネソウ)
恋愛
強欲でアホな従妹の話。

処理中です...