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第五章

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「そういえば……あの二人が」
「ええ……とうとう、ですわ」
「嬉しいです!」
「そうね。あの子たちには幸せになってほしいわね」

モーリトス国王太子という立場が、レヴィアス国王陛下とイリア王妃に王子が誕生したことで無事に返上されたクーデリア・リリィ・アリステア。元サンジェルス国、いまはモーリトス国レヴィリア領となった地を拝領されてアリステア公爵を叙爵された彼女は、サンジェルスの国民だった頃からより良い領地にしようと努力していた。農地改革はサンジェルス国を取り囲んでいた岩盤を取り除いたため陽射しも満遍なくあたり、風が宿ることもなくなったことで澱みも消え、麦ですら育ちが悪かった土壌も大きく改善されて様々な作物が作られるようになっている。
ユーレットとソレイユが起こした婚約破棄事件に巻き込まれたフォンノ侯爵家令嬢マジェスタをはじめとした令嬢たちは、その知識の高さからレヴィリア領の領主となったクーデリアの側近として採用された。

「一国が滅び領地となる。それがあの子たちにとって最初の苦難になるわね」
「でも一人ではないわ」
「そうね。古い膿はレヴィアスたちが引き受けて片付けてくれるわ」
「あら? レヴィアスじゃなくてイリアたち戦乙女が嬉々として働くわよ」
「すでに迎え入れる準備は整っているわ。あとは勘違いした彼らがゾロゾロやってくるだけ」
「国が滅びて、彼らはすでに貴族じゃないのにね」
「その事実を知ったとき、彼らはどうするのかしら」
「「「楽しみよね~♪」」」

女性たちの楽しそうな声に男性陣は苦笑する。
国が滅びた後でも爵位がそのままだと思い込む貴族は多い。そしてそれを認めない貴族がレヴィリア領には多くいる。そのため、イリア王妃がそんな貴族たちを王都へ寄越すように言ったのだ。

「楽しそうだな」
「サンジェルスは女性より男性、平民より貴族の方が偉いっていう国だったからね。リリィが領主となったときに集団で乗り込んできて、祝辞にきていたレヴィアス国王陛下の前で暴言を吐いたからな」
「アヤツらはアシュラン家の長兄を覚えていない。たとえサンジェルスの学院に席を置いても一度も通わず、事実があってもだ。その時点で失策だろう」
「リリィは自分たちが暮らす国の王妹で、暫定とはいえ王太子という立場だ。彼らのお好きなに、女性というだけで見下しての暴言。それも佩刀したまま。十分罪に問えたのにな」
「そんな奴らでもリリィが許すから……」
「おかげで戦乙女たちは準備万端で迎撃できるのよ!」

目を輝かせている女性たちに、それぞれの配偶者は微笑む。結局、この兄弟姉妹とその配偶者たちは似た者同士。
類は友を呼んだのだ。
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