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第四章
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しおりを挟む「アイシアのことは使用人たちが王城に直接訴えにきた。彼らは誰の指示でそうしたと思う? 次期当主の指示だよ。つまり、まだ七歳の少年でさえ『おかしい』とわかる状態を、祖父母であるお前たちが気付かない時点で無能だといっているんだ」
「もし、息子たちの言葉を信じたとして、使用人にどのような生活をしているのか手紙を書いたか? 孫娘を案じる手紙でも送ったか? 誕生日に贈り物をしたか? 実際に届いたのは、兄弟からの手紙と絵、そして妹の押し花だけだ」
宰相の言葉に四人は思い当たる点があったようで肩が揺れた。
子供たちが楽しそうに何かを作っていたのは知っている。そして、見せてもらおうとしても断られ、気が付いたらいつの間にかなくなっていた。それはちょうどアイシアの誕生日前だ。使用人たちが子供の味方なら、誰にも気付かれずに王都にいるアイシアに届くよう手配していただろう。
何故、この四人には話さなかったのか。それは簡単だ。アイシアのことを聞かれると機嫌が悪くなるか、「あんな気持ち悪いヤツの名前を二度と口にするな!」と怒鳴り……手をあげたことがあったからだ。
そんなことをすれば子供は口を噤む。ただし、口を噤んだからと言って親に従うとは限らない。そんな暴力で従う子では次期当主には不向きだ。アイシアの兄も『だったら自分たちで何とかしよう』と考えた。
アイシアの味方は使用人の中にもいる。それは王都を離れたときにアイシアがいないことを両親に伝えて殴られた彼の身を案じ、アイシアの保護を求めるため王都へ戻った使用人たちがいたからだ。そう信じた彼は、アイシアへの誕生日プレゼントを使用人に預けた。ひと月たって、小さな箱を使用人から受け取った。中に入っていたのは邸の庭に咲いている花々を束ねた小さなブーケ。それには特別な意味がある。束ねた花の色によってメッセージが決められている。届いたブーケは赤色。これは『嬉しい・ありがとう』という喜びの意味だ。
これを知っているのはアイシアのみ。だからこそ、使用人たちは味方で誕生日プレゼントは間違いなくアイシアに届けられたとわかった。何より、この花には王都内でしか咲かない特殊な花も含まれていた。そして忘れてはいけない。王都から離れた兄弟に届けられた時点で普通なら枯れている。それがアイシアが摘んだときのまま瑞々しいのは、大人たちは知らない、兄弟だけが知るアイシアが精霊に生まれ変わる前から起こしていた奇跡だった。
彼らがこの場に呼ばれたのは貴族として罰を受けるためであり、すでに事実確認は済んでいる。余計なことをいえば罪が増えるだけだと、ここにきてようやく理解したようだ。
「お前たち四人は北西の飛び地で領地管理者として四人で暮らせ。そこに侍従侍女を連れて行くことは許さぬ。自らの手で田畑を耕しそこで生きることが、精霊の少女を殺害しようとした罰だと思え。そこから出ることは禁じる。新年の祝いの品も必要ない。逆に不快なお前たちの存在を忘れられるなら、これ以上の祝いの品はないからな。そして次期当主が成人するまで、領地は王領として管理する。なお、子供たちには王都に新たに邸を与え、正しい教育を受けさせるから安心しろ」
陛下は子供たちに罪はなく、逆にアイシアの心を支えたとして評価を与え、王都に新たな邸を与えられることとなった。その邸はアイシアが住む、自分たちが生まれ育った邸の隣。庭を通して行き来できるようにと配慮されているのも、兄弟姉妹を離さないようにという心遣いからだろう。後見人には宰相が手をあげた。すでにアイシアの後見人に名乗りをあげている彼が兄弟妹をまとめて面倒をみることに反対はでなかった。
ただの後見人なのだ。養子だ養女だということではなく、子供たちを成人するまで正しく見守るための制度。ほかの国と比べても過保護なくらい国をあげて子供たちを守るのは、一族を大切にするという精霊の血が影響しているのかもしれない。
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