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4章 聖地内戦終結
哀しみの力。
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ただ……そう、生きているだけとも言えた。
服はボロボロでほぼ半裸に近い。
血で汚れたサラシからは、巨大な胸が完全に露出してしまっている。
その美しい白肌の顔は血をまとい、息は絶え絶えなんとか続くだけ。
手をだらんと垂らし、うつむく彼女。
「あぁ……痛てぇ」
目の前には、ヴィン・マイコン。
コキッ! と鳴り響く首の音。
いかんせんそれは余裕で生きているし、かすり傷しか負っていない。
「化け……はぁはぁ。物め。ふふっ……。あはは……」
「うむ。なかなか長時間見ると、肌色の乳首も良いもんだな」
「……そうでしょう。なかなか良いものですよ。くくっ」
「……ご機嫌斜め?」
覗き込むように聞くヴィン・マイコン。
もう彼の勝利は揺るがない……はず。
「当然です。一つしか良い事がなかったのですから。もう一つはとても、悪いお知らせです」
「良いほうから聞こうか」
そう言って剣を抜く傭兵長殿。
平然とノーティスに歩き……。
「1つ。この私、ノーティスが勝てない事が分かりました」
「悪いほう」
剣を振り上げ……。
「1つ。あなたの能力の出どころが分かった」
ぴた……。
その言葉にヴィン・マイコンの目つきが変わったっ!
少し興味を惹かれたらしい。
「へぇ……マジで? 悪い方の、俺の能力を言って見なさいよ。当たったら……もしも当てちゃったら速攻で、本気で虫のように殺してやるから」
「まぁまぁ……せっかくの記念です。ゆっくり聞いてくださいよ。ふ……ふふっ」
そう言うと彼女はゆっくりと歩き出した。
いずこへ行くわけでも無く、敵からも背け……。
「あなた……マナサーチしてますね?」
ヒュンっ。
グサリ……と、胸部のど真ん中に刺さるナイフっ!
血が胸の外角を好んで伝い、腹を濡らす。
「早漏は嫌われますよ」
「……」
全く動じないノーティス。
その薄気味悪い雰囲気に、ヴィン・マイコンが非常に興味を持った。
(なんだ……コイツ。色が強くなってる。)
「あなたの能力の出どころは単純に、マナサーチだ。あなたは永続的にマナサーチしている。しかもただのマナサーチではなく恐らくは、傑出した究極のマナサーチ……。言い換えれば、ウルティマナサーチをしている。ウルティマナサーチ……良いですね、コレ」
「おぅ……イカすネーミングだなそれ。広めようかな?」
中二病は世界を超えるっ!
なぜか2人ともうなずいてしまう。
「マナサーチとはマナの在りかを記した、宝の地図。どこにでもあるし、どこかそこいらにはある物を探すための手順だ。その程度だと、私も考えていました。だがどうやらあなたはそれを極限まで読み込み、本来のマナの全て……。物の最小単位は原子と言うらしいですが、そこまで細かく分布を見れるようになってしまったのでしょう」
ゆっくりと自分の胸にあったナイフを引き抜くノーティス。
びしゃっ! と血が地面に垂れ、雨水ににじむ。
「そしてあなたは、マナの形状や色の微細な違いまでもを解読、解明する事を会得。高精度で物体を特定したり、あまつさえその力学までもをマナだけで理解できるようになった……と。私はそう読みましたよ」
「へぇ何故?」
ぺったぺったと音をさせ、水の至宝をもてあそぶ傭兵長。
ゆっくりとノーティスの周りをまわりながら、気を抜かずヴィン・マイコンが問う。
目には狼のそれが宿っていた。
「あなたが魔法を必ずと言っていい程、事前に知っていたように避ける。なのにあの空間……。水のマナが飽和状態の、暴風雪に満たされた神殿。その中では明らかに水のマナに対してだけ鈍った」
「そんなの普通じゃねえか……。雪山で雪合戦するんだ、おかしくねえはず」
「ええ。だけど物質を完全に読んでいるのがあの……〝発煙硝酸″と〝発破爆弾″、そして透明の針。それらを避けられた時に分かったんです。魔法だけじゃなく物理を完全に読んでいるし、効果範囲までもを理解をしている。そんな事は目を頼りにしているだけの人間では絶対にありえない。そう思った。発煙硝酸はただの赤い液体だ」
例え危険を察知して逃げたとしても、延焼の範囲までは分からない。
爆薬もただの黒い粉。
「だがそれだと、魔法で体に細工している可能性、それも捨てきれねぇハズよな? 例えば……そう〝風馬一辺(ワールド・コネクト)″みたいな、よ。誰でも何時でもイーグルアイを手に入れれる、特殊な魔道具も存在するぜ。特別なトリックがあるだけに見えるはずだが?」
「それなのになぜ、神殿では水のマナからの攻撃に疎くなるんです? 見えない物も見抜いてみせるあなたが……。一体あの場所で、私の水の攻撃は何に邪魔され見えずらくされていたんですかね? あなたは……聖域に入るべきじゃなかった」
「……」
その言葉にヴィン・マイコンが苦笑いする。
「問題はあなたが居た場所だ。聖域でもあなたの能力は変わらなかった。水の力が乱舞する神殿でも、最強の力であるその〝エイクリアス・ソリダリティー(水の誓約旗)″を持っていた私だけは見失わなかった。マナの色の違いが顕著過ぎたのでしょう。あそこは魔法を使って私の居場所を探れる場所じゃない」
「……」
ヴィン・マイコンがノーティスの指摘に再度苦笑いし、天を仰いだ。
叫びそうだ、クソったれのかm――。
「当たりだ、ノーティス。それを見破ったのはお前が3人目。レキは除外だがな」
「へぇそれで。残りの2人はどこへ。……?」
上を指すノーティス。天国か……と言う事だ。
「そうだよ」
笑ったヴィン・マイコン。
「物質には固有のマナが湧く。そしてその動きにブレはねえな、今ん所。。魔法を唱えりゃマナが必要分先に動く。そんでもって剣を動かせばま~大体? 風のマナが先に揺れるんだ。ヤバいかどうかは濃淡で分かるってヤツさ。覚えるには時間がかかっちまったが……幸いこちとら生き残るだけが脳で、暇だったんでね」
「ふふっ。簡単に言う……」
笑うノーティス。
そんな事が可能になるまでにヴィン・マイコンは、幾つの死線を潜り抜けたのかは言うまでもなかった。
マナ分布の微妙な違いなど分かるはずがないのだ。
一度体験したければ、あなたが今から言う色を検索してみると良い。
狐色・琥珀色。柿茶色・樺色。
それを見分けられるようになるのがどれほど難しいか、すぐに分かる。
「まぁそれでもあん時、吹雪の中で飛んでくる氷のマナはさすがに見えずらかったけどよ。だが普通の魔法ならどんだけ適当に撃っても、マナは結局はルールを曲げねえ。同じ動きをするのさ。進行方向に重心がかかっちまうからな」
「それ、聞きましたね。知り合いから。物理とかいう話です確か。錬金術もそう。この世の摂理を解読する学問だと大仰に吹聴していた。そして分厚い本を書いては私に見せて、眠気を誘ってくれましたが……ふふっ。アレを完全に修めたなんてキチガイ染みた人間を、私は一人しか知りませんよ」
紙飛行機を飛ばせば、草原に広がる風のマナの流れ、そして紙飛行機が持つ浮力という名のマナを解析。
それを〝経験上″どこで落ちるか分かるようになったヴィン・マイコン。
「その究極さは誰もが憧れる伝説の魔法士……ラス・ナナコゥを思い出します。確か彼も、風のマナを完全に手中に収めた時編み出した独自の力があった。自分に近づく物質全ての重量と特徴を、瞬時に頭にイメージさせる能力。あなたはあの伝説の魔法士、それと似た力を持つと言えると?」
「いんや。あの伝説の男は4柱から愛されていた。一説によれば、生まれた時に奴を受け止めようとする4枚の手。それが複数の人間に見えたらしいな。抱きかかえるように守る神の手が、よ。だが俺はありがたい事に、神からの自立心が旺盛でね……。〝ライト・ディバイン(光の加護)〟を受けて一人で生まれてこれたんだよ」
……。
「光からの……加護っ!? あなた〝捨て子″なんですかっ!?」
そのヴィン・マイコンの言葉に思わずノーティスが目を見開くっ!
それはどんな言葉よりも想定外の返答らしい。
「あぁ、捨て子捨て子……その言葉を何度聞いたか。教会様も困って軽くて光り輝く〝ライト・ディバイン(光の加護)〟を与えてくださったのさ。神の代わりに……第八階層の俺に、よ。可哀そう過ぎて涙が出るだろう? ひひっ」
この世界には〝光″と言う属性はない。
光はあくまで物理上での現象の一つであり、神の御業の範疇ではないのだ。
だが、神に愛されない子供を見た時人は驚きと嘆きのあまり、その子に光というありもしない属性を与えた。
いわば憐れみと侮蔑の産物。
嬉しそうに人間達が、神に1つずつ様々なパンをもらって生まれてくる片隅で、ヴィン・マイコンはサルにドングリを貰った訳だ。
「信じられない男だ……。そんな事がこの世にあるのか? あぁなるほど……だから神殿で最初、私を追ってこなかったのか。追いかけっこになれば、魔法を使って逃げれる私には勝てないと踏んだのね」
唖然とし、そしてなぜか歓喜し笑うノーティス。
「そうだ。こっちにも限界があるんでね。あんま無茶は言わんで欲しいぜ。こんな水ばっかの所で秘密基地見つけろ……っつってもなぁ。そんなもん見える訳がねえ。なんせお探しの秘密基地も水だらけなんだからよっ」
聖地を見渡すヴィン・マイコン。
聖地についた当初、よく秘密基地をなぜ見つけれないのかと質問を受けた。
だが彼にも限界があったのだ。
「ですが素晴らしい能力っ! 世界には神のおかげでマナが溢れる。そう声高に叫び、神の愛を値踏みする事しかしないクソ信徒共ばかりだっ! ですがそいつらに是非教えてあげたいものだっ! この男を見ろ、神に愛されなかった男が光を示して見せた、とっ。神などいらないのだ……ってね」
サルにドングリを貰ったヴィン・マイコンはそれを植える。
そして樹がなったのを見たその男は一人、頑丈なイカダを作り上げ、太平洋を一人で横断したみせた。
根性と生き汚なさが生んだ大偉業であるっ!
服はボロボロでほぼ半裸に近い。
血で汚れたサラシからは、巨大な胸が完全に露出してしまっている。
その美しい白肌の顔は血をまとい、息は絶え絶えなんとか続くだけ。
手をだらんと垂らし、うつむく彼女。
「あぁ……痛てぇ」
目の前には、ヴィン・マイコン。
コキッ! と鳴り響く首の音。
いかんせんそれは余裕で生きているし、かすり傷しか負っていない。
「化け……はぁはぁ。物め。ふふっ……。あはは……」
「うむ。なかなか長時間見ると、肌色の乳首も良いもんだな」
「……そうでしょう。なかなか良いものですよ。くくっ」
「……ご機嫌斜め?」
覗き込むように聞くヴィン・マイコン。
もう彼の勝利は揺るがない……はず。
「当然です。一つしか良い事がなかったのですから。もう一つはとても、悪いお知らせです」
「良いほうから聞こうか」
そう言って剣を抜く傭兵長殿。
平然とノーティスに歩き……。
「1つ。この私、ノーティスが勝てない事が分かりました」
「悪いほう」
剣を振り上げ……。
「1つ。あなたの能力の出どころが分かった」
ぴた……。
その言葉にヴィン・マイコンの目つきが変わったっ!
少し興味を惹かれたらしい。
「へぇ……マジで? 悪い方の、俺の能力を言って見なさいよ。当たったら……もしも当てちゃったら速攻で、本気で虫のように殺してやるから」
「まぁまぁ……せっかくの記念です。ゆっくり聞いてくださいよ。ふ……ふふっ」
そう言うと彼女はゆっくりと歩き出した。
いずこへ行くわけでも無く、敵からも背け……。
「あなた……マナサーチしてますね?」
ヒュンっ。
グサリ……と、胸部のど真ん中に刺さるナイフっ!
血が胸の外角を好んで伝い、腹を濡らす。
「早漏は嫌われますよ」
「……」
全く動じないノーティス。
その薄気味悪い雰囲気に、ヴィン・マイコンが非常に興味を持った。
(なんだ……コイツ。色が強くなってる。)
「あなたの能力の出どころは単純に、マナサーチだ。あなたは永続的にマナサーチしている。しかもただのマナサーチではなく恐らくは、傑出した究極のマナサーチ……。言い換えれば、ウルティマナサーチをしている。ウルティマナサーチ……良いですね、コレ」
「おぅ……イカすネーミングだなそれ。広めようかな?」
中二病は世界を超えるっ!
なぜか2人ともうなずいてしまう。
「マナサーチとはマナの在りかを記した、宝の地図。どこにでもあるし、どこかそこいらにはある物を探すための手順だ。その程度だと、私も考えていました。だがどうやらあなたはそれを極限まで読み込み、本来のマナの全て……。物の最小単位は原子と言うらしいですが、そこまで細かく分布を見れるようになってしまったのでしょう」
ゆっくりと自分の胸にあったナイフを引き抜くノーティス。
びしゃっ! と血が地面に垂れ、雨水ににじむ。
「そしてあなたは、マナの形状や色の微細な違いまでもを解読、解明する事を会得。高精度で物体を特定したり、あまつさえその力学までもをマナだけで理解できるようになった……と。私はそう読みましたよ」
「へぇ何故?」
ぺったぺったと音をさせ、水の至宝をもてあそぶ傭兵長。
ゆっくりとノーティスの周りをまわりながら、気を抜かずヴィン・マイコンが問う。
目には狼のそれが宿っていた。
「あなたが魔法を必ずと言っていい程、事前に知っていたように避ける。なのにあの空間……。水のマナが飽和状態の、暴風雪に満たされた神殿。その中では明らかに水のマナに対してだけ鈍った」
「そんなの普通じゃねえか……。雪山で雪合戦するんだ、おかしくねえはず」
「ええ。だけど物質を完全に読んでいるのがあの……〝発煙硝酸″と〝発破爆弾″、そして透明の針。それらを避けられた時に分かったんです。魔法だけじゃなく物理を完全に読んでいるし、効果範囲までもを理解をしている。そんな事は目を頼りにしているだけの人間では絶対にありえない。そう思った。発煙硝酸はただの赤い液体だ」
例え危険を察知して逃げたとしても、延焼の範囲までは分からない。
爆薬もただの黒い粉。
「だがそれだと、魔法で体に細工している可能性、それも捨てきれねぇハズよな? 例えば……そう〝風馬一辺(ワールド・コネクト)″みたいな、よ。誰でも何時でもイーグルアイを手に入れれる、特殊な魔道具も存在するぜ。特別なトリックがあるだけに見えるはずだが?」
「それなのになぜ、神殿では水のマナからの攻撃に疎くなるんです? 見えない物も見抜いてみせるあなたが……。一体あの場所で、私の水の攻撃は何に邪魔され見えずらくされていたんですかね? あなたは……聖域に入るべきじゃなかった」
「……」
その言葉にヴィン・マイコンが苦笑いする。
「問題はあなたが居た場所だ。聖域でもあなたの能力は変わらなかった。水の力が乱舞する神殿でも、最強の力であるその〝エイクリアス・ソリダリティー(水の誓約旗)″を持っていた私だけは見失わなかった。マナの色の違いが顕著過ぎたのでしょう。あそこは魔法を使って私の居場所を探れる場所じゃない」
「……」
ヴィン・マイコンがノーティスの指摘に再度苦笑いし、天を仰いだ。
叫びそうだ、クソったれのかm――。
「当たりだ、ノーティス。それを見破ったのはお前が3人目。レキは除外だがな」
「へぇそれで。残りの2人はどこへ。……?」
上を指すノーティス。天国か……と言う事だ。
「そうだよ」
笑ったヴィン・マイコン。
「物質には固有のマナが湧く。そしてその動きにブレはねえな、今ん所。。魔法を唱えりゃマナが必要分先に動く。そんでもって剣を動かせばま~大体? 風のマナが先に揺れるんだ。ヤバいかどうかは濃淡で分かるってヤツさ。覚えるには時間がかかっちまったが……幸いこちとら生き残るだけが脳で、暇だったんでね」
「ふふっ。簡単に言う……」
笑うノーティス。
そんな事が可能になるまでにヴィン・マイコンは、幾つの死線を潜り抜けたのかは言うまでもなかった。
マナ分布の微妙な違いなど分かるはずがないのだ。
一度体験したければ、あなたが今から言う色を検索してみると良い。
狐色・琥珀色。柿茶色・樺色。
それを見分けられるようになるのがどれほど難しいか、すぐに分かる。
「まぁそれでもあん時、吹雪の中で飛んでくる氷のマナはさすがに見えずらかったけどよ。だが普通の魔法ならどんだけ適当に撃っても、マナは結局はルールを曲げねえ。同じ動きをするのさ。進行方向に重心がかかっちまうからな」
「それ、聞きましたね。知り合いから。物理とかいう話です確か。錬金術もそう。この世の摂理を解読する学問だと大仰に吹聴していた。そして分厚い本を書いては私に見せて、眠気を誘ってくれましたが……ふふっ。アレを完全に修めたなんてキチガイ染みた人間を、私は一人しか知りませんよ」
紙飛行機を飛ばせば、草原に広がる風のマナの流れ、そして紙飛行機が持つ浮力という名のマナを解析。
それを〝経験上″どこで落ちるか分かるようになったヴィン・マイコン。
「その究極さは誰もが憧れる伝説の魔法士……ラス・ナナコゥを思い出します。確か彼も、風のマナを完全に手中に収めた時編み出した独自の力があった。自分に近づく物質全ての重量と特徴を、瞬時に頭にイメージさせる能力。あなたはあの伝説の魔法士、それと似た力を持つと言えると?」
「いんや。あの伝説の男は4柱から愛されていた。一説によれば、生まれた時に奴を受け止めようとする4枚の手。それが複数の人間に見えたらしいな。抱きかかえるように守る神の手が、よ。だが俺はありがたい事に、神からの自立心が旺盛でね……。〝ライト・ディバイン(光の加護)〟を受けて一人で生まれてこれたんだよ」
……。
「光からの……加護っ!? あなた〝捨て子″なんですかっ!?」
そのヴィン・マイコンの言葉に思わずノーティスが目を見開くっ!
それはどんな言葉よりも想定外の返答らしい。
「あぁ、捨て子捨て子……その言葉を何度聞いたか。教会様も困って軽くて光り輝く〝ライト・ディバイン(光の加護)〟を与えてくださったのさ。神の代わりに……第八階層の俺に、よ。可哀そう過ぎて涙が出るだろう? ひひっ」
この世界には〝光″と言う属性はない。
光はあくまで物理上での現象の一つであり、神の御業の範疇ではないのだ。
だが、神に愛されない子供を見た時人は驚きと嘆きのあまり、その子に光というありもしない属性を与えた。
いわば憐れみと侮蔑の産物。
嬉しそうに人間達が、神に1つずつ様々なパンをもらって生まれてくる片隅で、ヴィン・マイコンはサルにドングリを貰った訳だ。
「信じられない男だ……。そんな事がこの世にあるのか? あぁなるほど……だから神殿で最初、私を追ってこなかったのか。追いかけっこになれば、魔法を使って逃げれる私には勝てないと踏んだのね」
唖然とし、そしてなぜか歓喜し笑うノーティス。
「そうだ。こっちにも限界があるんでね。あんま無茶は言わんで欲しいぜ。こんな水ばっかの所で秘密基地見つけろ……っつってもなぁ。そんなもん見える訳がねえ。なんせお探しの秘密基地も水だらけなんだからよっ」
聖地を見渡すヴィン・マイコン。
聖地についた当初、よく秘密基地をなぜ見つけれないのかと質問を受けた。
だが彼にも限界があったのだ。
「ですが素晴らしい能力っ! 世界には神のおかげでマナが溢れる。そう声高に叫び、神の愛を値踏みする事しかしないクソ信徒共ばかりだっ! ですがそいつらに是非教えてあげたいものだっ! この男を見ろ、神に愛されなかった男が光を示して見せた、とっ。神などいらないのだ……ってね」
サルにドングリを貰ったヴィン・マイコンはそれを植える。
そして樹がなったのを見たその男は一人、頑丈なイカダを作り上げ、太平洋を一人で横断したみせた。
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