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4章 聖地内戦終結
吹きすさぶ。
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「なんだあのマナの量……っ」
「マッデンから……ヒトからマナが溢れ出てる……だとっ!?」
騎士団達が蒼白になっていた。
その相対する大きな人影からは今、大量のマナが溢れてきているのがハッキリと見えるのだ。
「我の願いはただ一つなり。この世界を流れるたゆたいの流れに、水神の命脈をもう一度招来させたまえ……っ! そは原初っ! そは始まりにありし色っ! 流れたゆたえ……」
マッデンは今、呪文を一心不乱に唱えている。
その一言一言が紡がれる都度、世界には崩壊と変異が起こり続けていた。
それは間違いなく世界、言い換えれば自然界の変貌。
「こんなの……。マナが人から生まれるだなんて事……神じゃあるまいしっ」
そう、目の前の人間は自然の論理すらも従え、改ざんしていっているのだっ!
「これが……人類を導く使徒……。俺らを救済する勇者の力」
間違ってはいけない。マッデンは間違いなく神の使徒である。
言い換えれば勇者。
例えどんなに性格が悪く人間として最低のカスで、畜生にも劣る人間であっても……だ。
「シュッ……っ!」
ひゅっ!
パキキッ!
ジキムートがマッデンめがけて投げたナイフはあっさりと、届く事無く凍ってしまった。
しかもそれだけではない。凍った状態で空中で静止し、落ちないのだ。
「近づくのは無理そうだな……。これだから凡俗やってると嫌になる。全く」
ジキムートが呆れたように、1人きりボッチになったマッデンを見やる。
ジキムートは裏切った傭兵だけでなく水の民全員を見事、懐柔して見せた。
100対1の状況を作り上げたのだ。
だが……神に選ばれた勇者なら恐らく、簡単に100対1を覆してしまうだろう。
それが勇者……。
「我は神の子なりっ! 天上よ涙せよ、我の大地へと降り注ぐ慈愛の涙を乞うっ」
マッデンが叫ぶと懐からあの、〝エイクリアス・ソリダリティー(水の誓約旗)″を天に掲げみせる。
そしてそれが眩しく、神々しく光ると……っ!
ぽつっ……ぽっ……ザアアアアッ!
「クソっ、なんだこれっ。雨がこんなに大量に……」
突如振り出した雨。
それは一瞬にドシャ降りになり始めたっ!
しかも……。
「おぉっ……どういう事だっ!?」
どこからともなく地面から……大地の中から水が湧き出し始めのだっ!
そしてそれはあっという間に1メートル、2メートルとグングンと水位を上げていく。
「おっ、おいおいっ!? すぐ高い所にっ……ぷあっ」
急激な水位の上昇っ!
そして逃げ場のない平坦な市街。
マッデン以外の人間達は右往左往しているっ!
だが増大を続ける水はあっさりとジキムート達を飲み込みそして……津波を起こし始めたっ!
津波は人を押し流すっ!
「ぐぁあっ!?たっ助けっ!?」
「手を取れっ! 手をっ……あぁっ!?」
伸ばした腕もろとも、濁流が押し流してしまったっ!
鎧を入れて90キロ。その程度ならば津波の前では木クレと同じ。
「くそっ! しからば逆に水の中を行けばっ」
バシャンっ!
自ら濁流の中に飛び込んだ魔法士。
そして……。
浮いて来ない。
「ダっダメだっ!? 魔法は使えないっ! ここでは水の魔法は全てディスペルされるぞっ!」
「なんだってっ!? じゃあどうすりゃ良い……ぷあっ!? うぁあーーーっ!?」
ただただ自然の脅威を目の前にして、人間などは無力。
悲鳴と怨嗟が響き続けるっ!
ピシャアアッ!
「くっ!? 稲光まで……。くそっ、マッデンは天変地異を一人で起こしたとでもっ!?」
ずぶ濡れになりながら、騎士団も傭兵達も全員が行き場を失っていたっ!
周囲の大地だった部分は完全に、荒ぶる津波が押し寄せているっ!
それは完全に天変地異だ。ものの2分で起こされた自然災害。
「はーっはっはっ! 我らは軍の兵器開発にも従事しているのだぞっ。この程度どうと言う事ないわっ! 死ね、溺れ死ねっ。ぶつかって死ね、飲まれて死ねっ! そしてワシの力に足掻けずに、無様に死に晒せーーーっ!」
光るその〝エイクリアス・ソリダリティー(水の誓約旗)″の下、マッデンは一際高い建物へと逃げていたっ!
彼は溺れている人間たちを楽しそうに眺め、侮蔑の言葉を吠え猛るっ!
「おっ……おやめください、マッデン様っ! この場所でその呪文はまず……い。魔力の強い環境に置かれ続ける……と、うぅっ。住民達全員が原初まで戻される可能性が……あり……ま……ぅくっ」
苦しそうにその取り巻きだったろう1人が、水の中でマッデンに乞う。
その水の民は少し、体の輪郭がおかしくなったようにデロリ……と水に溶け始めていた。
「ふんっ、この聖地の為じゃっ! 奴らふとどき者の神への狼藉を我らが止めんでどうするっ!? 我ら一族郎党の苦しみを押してでも、神への不忠は止めねばならんっ」
「ですがもうすでに我らは死に過ぎましたっ! 同胞たちは数を減らし続けているっ。こうなると、神への我らの雑事も滞る恐れがあります。人手が足りねば神からの叱責を免れないっ!」
「そんな物、お前たちが寝ずにやれば済む話。古の水の民は24時間をたった3匹で保持したというっ! なれば我らにできぬはずがないのだっ。なに、安心せよ……。最悪我とゴディン。そしてもう一人女、それさえ人間の姿で残ればそれでよい。それで神への面目は立つっ!」
「ばか……な」
「だがどうすると言うのかっ!? 指をくわえて我らが人に下れとでもっ!? 今ならあやつらをこの手で始末し、この神の水都ディヌアリアを見事……っ! そうもう一度独立の道へと戻してみせれば良いだけだと言うにっ!」
「マッデン様……もうあきらめましょうっ! 独立なぞ意味がありませぬっ! 神は人を愛しているっ! 神は人の浅ましさすらも愛しておられるのですっ! 我らも……っ」
「ふんっ!」
ヒュンっ!
グサッ!
「ぐあぁっ!?」
氷の刃が同族へと突き刺さるっ!
「神は人を愛しておっても、人はわしらを愛さぬ。そして神は……戦いを否定はしておらぬのだよ。それは我らであってもだ……くくっ」
黒い液体を残し、青に溶けていく水の民。
あっさりと進言はかき消され、世界は狂気の津波が襲い続けるっ!
「さぁて、あの男。確か……ジキムートとか言うたの。あのゴミはどこにおる。奴だけは我の手で自ら殺さねば気が済まぬわっ! 奴に女がおらんのが残念じゃよ。おればわしが手籠めにして切り裂き……奴の目の前で嬲ってやろうと言うのにっ!」
下賤な笑み。
どうやらようやく一人の傭兵の名前を覚えたようだった。
自分が今最も殺すべき、その羽虫の名前を。
「……マジかよアイツ」
ここはどこかの家の中。
ジキムートはなんとかその洪水を逃れていた。
だが……じり貧なのは間違いない。
外ではマッデンが自分を探しているのが見える。そして目の前には轟々と荒ぶる洪水っ!
(マッデンは俺の事を優先で警戒しているはず。俺が上に上がるってのは無しだっ! 絶対にあがれねえっ。)
上に上がれば地獄のハチの巣。
そして下に居れば。
「うあぁぁっ!? 助けてくれ……ぷあっ!? はぁはぁっ。助け……」
ぶくぶく……と人が沈んでいく。
もう2度と、生きては浮かばないだろう。
水位は一時ほどの速さは無くともじわりと、音もなく水かさを上げ続けていた。
それに……。
ザバァッ!
まるでマグロ漁に出たかのごとしっ!
この波に打たれれば、ジキムートでも恐らく体勢の維持は難しい。
近接攻撃方法しか持たない彼には、手も足もでないっ!
「万策尽きたな」
ふふっと笑うジキムート。
魔法も使えず、攻撃力も防御力も遠く及ばない彼。
もう……勝てる要素が一ミリもなさそうだ。
「上がって消されるか……意地汚く隠れ続けて、魔力の消耗を待ちながら死ぬか。それ以外だ、それよりマシなのをケツからでも良いっ! ひねり出せ……」
考えてそして彼は……ある事を思いつく。
「いや……。良く考えりゃ、これは好機かもしれねえな……っ」
ジキムートは笑ってそして、その場を離れた。
「マッデンから……ヒトからマナが溢れ出てる……だとっ!?」
騎士団達が蒼白になっていた。
その相対する大きな人影からは今、大量のマナが溢れてきているのがハッキリと見えるのだ。
「我の願いはただ一つなり。この世界を流れるたゆたいの流れに、水神の命脈をもう一度招来させたまえ……っ! そは原初っ! そは始まりにありし色っ! 流れたゆたえ……」
マッデンは今、呪文を一心不乱に唱えている。
その一言一言が紡がれる都度、世界には崩壊と変異が起こり続けていた。
それは間違いなく世界、言い換えれば自然界の変貌。
「こんなの……。マナが人から生まれるだなんて事……神じゃあるまいしっ」
そう、目の前の人間は自然の論理すらも従え、改ざんしていっているのだっ!
「これが……人類を導く使徒……。俺らを救済する勇者の力」
間違ってはいけない。マッデンは間違いなく神の使徒である。
言い換えれば勇者。
例えどんなに性格が悪く人間として最低のカスで、畜生にも劣る人間であっても……だ。
「シュッ……っ!」
ひゅっ!
パキキッ!
ジキムートがマッデンめがけて投げたナイフはあっさりと、届く事無く凍ってしまった。
しかもそれだけではない。凍った状態で空中で静止し、落ちないのだ。
「近づくのは無理そうだな……。これだから凡俗やってると嫌になる。全く」
ジキムートが呆れたように、1人きりボッチになったマッデンを見やる。
ジキムートは裏切った傭兵だけでなく水の民全員を見事、懐柔して見せた。
100対1の状況を作り上げたのだ。
だが……神に選ばれた勇者なら恐らく、簡単に100対1を覆してしまうだろう。
それが勇者……。
「我は神の子なりっ! 天上よ涙せよ、我の大地へと降り注ぐ慈愛の涙を乞うっ」
マッデンが叫ぶと懐からあの、〝エイクリアス・ソリダリティー(水の誓約旗)″を天に掲げみせる。
そしてそれが眩しく、神々しく光ると……っ!
ぽつっ……ぽっ……ザアアアアッ!
「クソっ、なんだこれっ。雨がこんなに大量に……」
突如振り出した雨。
それは一瞬にドシャ降りになり始めたっ!
しかも……。
「おぉっ……どういう事だっ!?」
どこからともなく地面から……大地の中から水が湧き出し始めのだっ!
そしてそれはあっという間に1メートル、2メートルとグングンと水位を上げていく。
「おっ、おいおいっ!? すぐ高い所にっ……ぷあっ」
急激な水位の上昇っ!
そして逃げ場のない平坦な市街。
マッデン以外の人間達は右往左往しているっ!
だが増大を続ける水はあっさりとジキムート達を飲み込みそして……津波を起こし始めたっ!
津波は人を押し流すっ!
「ぐぁあっ!?たっ助けっ!?」
「手を取れっ! 手をっ……あぁっ!?」
伸ばした腕もろとも、濁流が押し流してしまったっ!
鎧を入れて90キロ。その程度ならば津波の前では木クレと同じ。
「くそっ! しからば逆に水の中を行けばっ」
バシャンっ!
自ら濁流の中に飛び込んだ魔法士。
そして……。
浮いて来ない。
「ダっダメだっ!? 魔法は使えないっ! ここでは水の魔法は全てディスペルされるぞっ!」
「なんだってっ!? じゃあどうすりゃ良い……ぷあっ!? うぁあーーーっ!?」
ただただ自然の脅威を目の前にして、人間などは無力。
悲鳴と怨嗟が響き続けるっ!
ピシャアアッ!
「くっ!? 稲光まで……。くそっ、マッデンは天変地異を一人で起こしたとでもっ!?」
ずぶ濡れになりながら、騎士団も傭兵達も全員が行き場を失っていたっ!
周囲の大地だった部分は完全に、荒ぶる津波が押し寄せているっ!
それは完全に天変地異だ。ものの2分で起こされた自然災害。
「はーっはっはっ! 我らは軍の兵器開発にも従事しているのだぞっ。この程度どうと言う事ないわっ! 死ね、溺れ死ねっ。ぶつかって死ね、飲まれて死ねっ! そしてワシの力に足掻けずに、無様に死に晒せーーーっ!」
光るその〝エイクリアス・ソリダリティー(水の誓約旗)″の下、マッデンは一際高い建物へと逃げていたっ!
彼は溺れている人間たちを楽しそうに眺め、侮蔑の言葉を吠え猛るっ!
「おっ……おやめください、マッデン様っ! この場所でその呪文はまず……い。魔力の強い環境に置かれ続ける……と、うぅっ。住民達全員が原初まで戻される可能性が……あり……ま……ぅくっ」
苦しそうにその取り巻きだったろう1人が、水の中でマッデンに乞う。
その水の民は少し、体の輪郭がおかしくなったようにデロリ……と水に溶け始めていた。
「ふんっ、この聖地の為じゃっ! 奴らふとどき者の神への狼藉を我らが止めんでどうするっ!? 我ら一族郎党の苦しみを押してでも、神への不忠は止めねばならんっ」
「ですがもうすでに我らは死に過ぎましたっ! 同胞たちは数を減らし続けているっ。こうなると、神への我らの雑事も滞る恐れがあります。人手が足りねば神からの叱責を免れないっ!」
「そんな物、お前たちが寝ずにやれば済む話。古の水の民は24時間をたった3匹で保持したというっ! なれば我らにできぬはずがないのだっ。なに、安心せよ……。最悪我とゴディン。そしてもう一人女、それさえ人間の姿で残ればそれでよい。それで神への面目は立つっ!」
「ばか……な」
「だがどうすると言うのかっ!? 指をくわえて我らが人に下れとでもっ!? 今ならあやつらをこの手で始末し、この神の水都ディヌアリアを見事……っ! そうもう一度独立の道へと戻してみせれば良いだけだと言うにっ!」
「マッデン様……もうあきらめましょうっ! 独立なぞ意味がありませぬっ! 神は人を愛しているっ! 神は人の浅ましさすらも愛しておられるのですっ! 我らも……っ」
「ふんっ!」
ヒュンっ!
グサッ!
「ぐあぁっ!?」
氷の刃が同族へと突き刺さるっ!
「神は人を愛しておっても、人はわしらを愛さぬ。そして神は……戦いを否定はしておらぬのだよ。それは我らであってもだ……くくっ」
黒い液体を残し、青に溶けていく水の民。
あっさりと進言はかき消され、世界は狂気の津波が襲い続けるっ!
「さぁて、あの男。確か……ジキムートとか言うたの。あのゴミはどこにおる。奴だけは我の手で自ら殺さねば気が済まぬわっ! 奴に女がおらんのが残念じゃよ。おればわしが手籠めにして切り裂き……奴の目の前で嬲ってやろうと言うのにっ!」
下賤な笑み。
どうやらようやく一人の傭兵の名前を覚えたようだった。
自分が今最も殺すべき、その羽虫の名前を。
「……マジかよアイツ」
ここはどこかの家の中。
ジキムートはなんとかその洪水を逃れていた。
だが……じり貧なのは間違いない。
外ではマッデンが自分を探しているのが見える。そして目の前には轟々と荒ぶる洪水っ!
(マッデンは俺の事を優先で警戒しているはず。俺が上に上がるってのは無しだっ! 絶対にあがれねえっ。)
上に上がれば地獄のハチの巣。
そして下に居れば。
「うあぁぁっ!? 助けてくれ……ぷあっ!? はぁはぁっ。助け……」
ぶくぶく……と人が沈んでいく。
もう2度と、生きては浮かばないだろう。
水位は一時ほどの速さは無くともじわりと、音もなく水かさを上げ続けていた。
それに……。
ザバァッ!
まるでマグロ漁に出たかのごとしっ!
この波に打たれれば、ジキムートでも恐らく体勢の維持は難しい。
近接攻撃方法しか持たない彼には、手も足もでないっ!
「万策尽きたな」
ふふっと笑うジキムート。
魔法も使えず、攻撃力も防御力も遠く及ばない彼。
もう……勝てる要素が一ミリもなさそうだ。
「上がって消されるか……意地汚く隠れ続けて、魔力の消耗を待ちながら死ぬか。それ以外だ、それよりマシなのをケツからでも良いっ! ひねり出せ……」
考えてそして彼は……ある事を思いつく。
「いや……。良く考えりゃ、これは好機かもしれねえな……っ」
ジキムートは笑ってそして、その場を離れた。
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