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2章 聖地の守護者
水の神に仕える者の実力。
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投げ込まれた物は――〝瓶″っ!
「っ!?」
一瞬にして、ジキムートの脳裏に浮かぶ光景っ!
声を出す暇もない。
そこから一目散に逃げるジキムートっ!
バリンっ!
バキバキバキっ!
ビンが割れると同時、氷の猛り狂う音が聞こえ、すぐ近くまで殺意が迫ってきたっ!
それをなんとかジキムートが、店の軒先に這いあがって難を逃れるっ!
「くっ、いきなりですねっ! あの馬車の時と同じっ! こっちかっ」
ノーティスが犯人を追い、小さな路地に入っていくっ!
その姿にジキムートが、少し躊躇し――。
(これは、罠だっ! だが……。)
これは罠だと分かった。
だが、他方で脳裏によぎるのは、そもそもとして、ここに来た理由。
(ここの住民のトップがいるはず。そいつならきっと、神の素性を知ってる。なんせ聖地をしきってんだからよっ。そいつはテロリストの元締めだろうさっ! だったら、虎穴に入らずんば虎子を得ずって事かっ!)
ジキムートはヴィエッタ直属と言っても、ヴィン・マイコン達のような〝中枢″の役割は持たない。
自力でたどり着かなければならない、神への道っ!
「ハイリスク、ハイリターンってのは……、常識だよなっ!」
テロリストの巣窟であるこの、聖地。
テロという危険の先にはきっと、手掛かりがあるはずなのだ。
すぐに彼もノーティスを追いかけて、小さな路地を行くっ!
バリンっ! パリパリンっ!
「ぐっ!?」
たくさんの小瓶が投げ込まれてくるっ!
それをかわしながら、少年の影を追う2人っ!
「くっ。あの人たち……っ!? なんて早いっ!」
ネィンが焦りの声を上げたっ!
思った以上に速いのだ。
普通の傭兵でも騎士団でも、追いつかれると思った事は今まで、一度としてないのにっ!
「もうすぐっ、もうすぐです!」
ノーティス達はその、追いつきそうな背中へとドンドンと迫っていくっ!
少年は右に曲がり、左に曲がりそして右に……っ。
「神のお導きをっ!」
どこからか、祈りの声が聞こえた。
その瞬間っ!
バリバリバリっ!
地面がいきなり、鳴き声を上げたっ!
薄く張られた透明な氷が、一気に地面を走り、そしてっ!
「ぐっ!? そんなっ!?」
ノーティスが、それに足を取られてしまったっ!
驚く彼女は、目線を少年へと――。
「えっ、こんなに早くっ!? しまったっ! 靴が……、抜けないっ!」
ネィンも驚きの声を上げていたっ!
地面に縛り付けられる、ノーティスとネィンっ!
そしてそれは、一段後方にいたジキムートにも迫り……っ!
「やべっ。逃げ場がっ!?」
狭い路地は壁に囲まれ、逃げる場所がないっ!
しかし……っ!
「だったら壁にっ!」
すぐさまジキムートは、壁を蹴るっ!
彼は信じられない程身軽に、壁の上へと逃げ始めたっ!
誰もが予想外の動き。
だが――。
「壁にも来やがっただとっ!?」
逃れられないその魔法。
広範囲に、隅々まで氷が及んでいくっ!
(この感じ、嫌な予感がすっぞっ!)
手に汗握り、ジキムートが走りのギアを上げたっ!
必死に頂上を目指そうとする傭兵。
すると、ジキムートの目の前に突然――。
「……っ!?」
突如の影。
3人の上空。
そこに岩とでもいうべきだろうか?
よく、ダンジョンのトラップで転がってくる位の大きさ。
路地を埋め尽くさんとする岩氷が、いきなり出現していたっ!
「がっ!?」
意味不明に叫ぶしかないその、大魔法っ!
逃げ場がない。
そして岩氷は……っ!
ガラガラガラっ!
「うああっ!?」
重力に引かれ落下っ!
全てを巻き込み、大容量の氷がハジけたっ!
氷風が、辺りを白一色に変えるっ!
ドシャアアアアっ!
……。
「よっしっ!」
少し待ち、取り巻き2人が嬉しそうに笑い、隠れていた場所から出てくる。
モヤがかかるその一帯。
彼ら取り巻きAとBは悠々と、ジキムート達が居たところへと歩き出す。
「おい、終わったかい? 巻き込んで、殺してないよね? まさか」
「えぇ……っと。今確認してま」
ザスザスっ! ザスンッ!
「……ぅぉっ!?」
「……どうしたっ! 早く返事を」
いまだ隠れているゴディンは、周りを見渡す。
まだモヤで見えない。
そして……目の前からナイフがっ!
ヒュンっ!
「うぁあっ!? まっ、前かっ!?」
ドタンっ!
驚いて尻もちをつくゴディンっ!
すでに魔法の障壁は展開していたが、焦ってもう一度貼り直してしまうっ!
ジタバタとしながら、目の前を探す彼の……。
「……っ」
ゴディンのその後ろに突如、気配が現れたっ!
そして……っ!
バキッ!
「ぐっ!?」
ジキムートが後ろへ下がったっ!
目の前には、氷の半透明な盾っ!
「ちぃっ、なんだコレっ! いつの間に後ろまで……っ」
舌打ちをするジキムート。
どうやらこのゴディン、広範囲への魔法障壁をいつの間にか、張っていたらしい。
「つぅ……。なんだこの、汚い男は。傭兵か?」
訝しそうにジキムートを見やるゴディン。
(クソ……。この坊ちゃんがきちんと、俺のペテンを見破ったようには見えないが。なんで後ろまで盾が張られてやがるっ!? 魔力が高いって事か。それならナイフじゃ駄目だ。)
ジキムートの手には今、ナイフしかない。
細いスティレットナイフでは、氷の盾を破れないと踏んだ傭兵が少しゴディンから離れる。
「という事は、3人目がいたのか。奴らめ、きちんと人数は確認しろと言っておいたのにっ。くそっ。なんて不快な格好の、薄汚い奴だ」
後ろに湧いて出て来た傭兵。
それを不快そうに眺めながら立ち上がって、一瞥してくるゴディン。
「3人目? 何を言ってやがるコイツ。だがくそっ、剣を……取れればっ!」
真上を一瞥するジキムート。
ジキムートは剣を失ってしまっていた。
這い寄る氷が壁まで追って来た時に、壁に剣を刺し、それをバネにして飛んだのだ。
そして降り注ぐ氷塊を蹴り超え、軌道を変えて、事なきを得ていた。
「平伏せよ、サル。道を開けよ」
ゴディンの言葉と同時、傭兵の目の前に現れる、無数の氷。
その数なんと、20近くっ!
「なっ、冗談っ!?」
ゴディンから距離を取り、後ろに飛ぶジキムート。
逃げながらもジキムートが、ナイフを手のひらに射出し、投げつけるっ!
パキンっ!
ジキムートの投げたナイフで、大容量の氷の刃に風穴が開いたっ!
その風穴を縫うように、大量の氷をジキムートがかわしていくっ!
「へぇ……」
感心すると、ジキムートに歩いて行くゴディンっ!
それにビクリと、面食らうジキムートっ!
「ちぃっ!? コイツ魔法じゃなく、接近戦するタイプかよっ!?」
思わず叫ぶジキムートっ!
傭兵はゴディンの直進に怯え、ナイフを持って、舌打ちをしたっ!
(やべえぞっ!? 魔法も接近戦も得意だとかっ! この聖地の守護騎士か何かかっ!? まずったっ! ひょろそうなナリ見て騙されちまったかっ!?)
ペテン師がペテンにかかり、ジワリと汗に濡らされてしまうっ!
そして……っ!
「邪魔ね……」
ドン……。
弾かれ、道の端に飛ばされるジキムートっ!
「……っ!?」
そしてジキムートのすぐ隣を、汚い物を避けるようにシールドで避けて、通り過ぎていくゴディン。
意味が分からないジキムート。
「なかなか良い顔だ。ふむ。思った以上だよ……。そうだ。良かった」
何か言葉が聞こえた。
その瞬間……。
ビキキっ!
ジキムートが理解し、青筋を立てたっ!
(この野郎……。舐めやがってっ! 3人目ってのはそういう事かっ。しかも後ろも見せてんだぞっ! 敵に挟まれてるって考えもねえのかよっ!)
怒りと共に、ナイフを両手に出した傭兵っ!
真後ろを向いているゴディンへと投げるっ!
だが――。
「邪魔をするなよ、汚いの」
ゴディンの声と同時にまた、20に迫ろうかという魔法の雨を出現させたっ!
「クソっ!」
ゴディンからの攻撃に、身をよじってなんとか対応するジキムートだが、数本が腕と顔をかすめたっ!
「なんだコイツ!? 魔法の出が異様に早いぞっ」
尖ったゴルフボール。
それが20も一気に湧いているのだっ!
驚きを隠せないジキムートっ!
「〝スペルレス(神の寵愛深き物)″です、気を付けてっ!」
ゴディンを、ジキムートと挟むんで相対するノーティが叫ぶっ!
傷を負った右手を押さえながら、彼女は樹の魔法を放った。
「無駄だよ」
ガギンっ!
音がし、ゴディンの展開済みの氷の障壁に、樹木が阻まれるっ!
だが当たると同時、樹がシールドにへばりついていくっ!
その瞬間に、ゴディンの顔色が変わったっ!
「なにっ!? このマナは……っ」
今まで笑っていたゴディンが、驚きうめくっ!
蒼白の顔をして震え、氷の障壁を何枚も即時展開っ!
後ずさりしているっ!
ビキキ・・グキッ!
へばりついた樹は、氷のシールドに穴を穿つっ!
そしてそこから触手を伸ばし、氷を侵食してゆくっ!
「この魔法は特に、水には良く効くっ! 樹の虫に食い破られたくなければ、観念なさいっ」
虫のように動き、氷を食い破るツタっ!
恐れるゴディンを見て笑うノーティスっ!
「くぅ……。なんとなんと汚らわしいっ。神を侮辱する為に生んだ、こんな呪文を使うとはっ!? 滅せねばなるまいっ」
ゴディンはまた、氷の刃を出したっ!
今度は数十本の刃だっ!
ザスザスザスザスザスっ!
そして執拗に、樹を微塵に切り刻んでいくっ!
すると……っ!
「……っ!」
殺気に気づいたゴディンっ!
パンっ!
「っ!?」
一瞬にして、ジキムートの脳裏に浮かぶ光景っ!
声を出す暇もない。
そこから一目散に逃げるジキムートっ!
バリンっ!
バキバキバキっ!
ビンが割れると同時、氷の猛り狂う音が聞こえ、すぐ近くまで殺意が迫ってきたっ!
それをなんとかジキムートが、店の軒先に這いあがって難を逃れるっ!
「くっ、いきなりですねっ! あの馬車の時と同じっ! こっちかっ」
ノーティスが犯人を追い、小さな路地に入っていくっ!
その姿にジキムートが、少し躊躇し――。
(これは、罠だっ! だが……。)
これは罠だと分かった。
だが、他方で脳裏によぎるのは、そもそもとして、ここに来た理由。
(ここの住民のトップがいるはず。そいつならきっと、神の素性を知ってる。なんせ聖地をしきってんだからよっ。そいつはテロリストの元締めだろうさっ! だったら、虎穴に入らずんば虎子を得ずって事かっ!)
ジキムートはヴィエッタ直属と言っても、ヴィン・マイコン達のような〝中枢″の役割は持たない。
自力でたどり着かなければならない、神への道っ!
「ハイリスク、ハイリターンってのは……、常識だよなっ!」
テロリストの巣窟であるこの、聖地。
テロという危険の先にはきっと、手掛かりがあるはずなのだ。
すぐに彼もノーティスを追いかけて、小さな路地を行くっ!
バリンっ! パリパリンっ!
「ぐっ!?」
たくさんの小瓶が投げ込まれてくるっ!
それをかわしながら、少年の影を追う2人っ!
「くっ。あの人たち……っ!? なんて早いっ!」
ネィンが焦りの声を上げたっ!
思った以上に速いのだ。
普通の傭兵でも騎士団でも、追いつかれると思った事は今まで、一度としてないのにっ!
「もうすぐっ、もうすぐです!」
ノーティス達はその、追いつきそうな背中へとドンドンと迫っていくっ!
少年は右に曲がり、左に曲がりそして右に……っ。
「神のお導きをっ!」
どこからか、祈りの声が聞こえた。
その瞬間っ!
バリバリバリっ!
地面がいきなり、鳴き声を上げたっ!
薄く張られた透明な氷が、一気に地面を走り、そしてっ!
「ぐっ!? そんなっ!?」
ノーティスが、それに足を取られてしまったっ!
驚く彼女は、目線を少年へと――。
「えっ、こんなに早くっ!? しまったっ! 靴が……、抜けないっ!」
ネィンも驚きの声を上げていたっ!
地面に縛り付けられる、ノーティスとネィンっ!
そしてそれは、一段後方にいたジキムートにも迫り……っ!
「やべっ。逃げ場がっ!?」
狭い路地は壁に囲まれ、逃げる場所がないっ!
しかし……っ!
「だったら壁にっ!」
すぐさまジキムートは、壁を蹴るっ!
彼は信じられない程身軽に、壁の上へと逃げ始めたっ!
誰もが予想外の動き。
だが――。
「壁にも来やがっただとっ!?」
逃れられないその魔法。
広範囲に、隅々まで氷が及んでいくっ!
(この感じ、嫌な予感がすっぞっ!)
手に汗握り、ジキムートが走りのギアを上げたっ!
必死に頂上を目指そうとする傭兵。
すると、ジキムートの目の前に突然――。
「……っ!?」
突如の影。
3人の上空。
そこに岩とでもいうべきだろうか?
よく、ダンジョンのトラップで転がってくる位の大きさ。
路地を埋め尽くさんとする岩氷が、いきなり出現していたっ!
「がっ!?」
意味不明に叫ぶしかないその、大魔法っ!
逃げ場がない。
そして岩氷は……っ!
ガラガラガラっ!
「うああっ!?」
重力に引かれ落下っ!
全てを巻き込み、大容量の氷がハジけたっ!
氷風が、辺りを白一色に変えるっ!
ドシャアアアアっ!
……。
「よっしっ!」
少し待ち、取り巻き2人が嬉しそうに笑い、隠れていた場所から出てくる。
モヤがかかるその一帯。
彼ら取り巻きAとBは悠々と、ジキムート達が居たところへと歩き出す。
「おい、終わったかい? 巻き込んで、殺してないよね? まさか」
「えぇ……っと。今確認してま」
ザスザスっ! ザスンッ!
「……ぅぉっ!?」
「……どうしたっ! 早く返事を」
いまだ隠れているゴディンは、周りを見渡す。
まだモヤで見えない。
そして……目の前からナイフがっ!
ヒュンっ!
「うぁあっ!? まっ、前かっ!?」
ドタンっ!
驚いて尻もちをつくゴディンっ!
すでに魔法の障壁は展開していたが、焦ってもう一度貼り直してしまうっ!
ジタバタとしながら、目の前を探す彼の……。
「……っ」
ゴディンのその後ろに突如、気配が現れたっ!
そして……っ!
バキッ!
「ぐっ!?」
ジキムートが後ろへ下がったっ!
目の前には、氷の半透明な盾っ!
「ちぃっ、なんだコレっ! いつの間に後ろまで……っ」
舌打ちをするジキムート。
どうやらこのゴディン、広範囲への魔法障壁をいつの間にか、張っていたらしい。
「つぅ……。なんだこの、汚い男は。傭兵か?」
訝しそうにジキムートを見やるゴディン。
(クソ……。この坊ちゃんがきちんと、俺のペテンを見破ったようには見えないが。なんで後ろまで盾が張られてやがるっ!? 魔力が高いって事か。それならナイフじゃ駄目だ。)
ジキムートの手には今、ナイフしかない。
細いスティレットナイフでは、氷の盾を破れないと踏んだ傭兵が少しゴディンから離れる。
「という事は、3人目がいたのか。奴らめ、きちんと人数は確認しろと言っておいたのにっ。くそっ。なんて不快な格好の、薄汚い奴だ」
後ろに湧いて出て来た傭兵。
それを不快そうに眺めながら立ち上がって、一瞥してくるゴディン。
「3人目? 何を言ってやがるコイツ。だがくそっ、剣を……取れればっ!」
真上を一瞥するジキムート。
ジキムートは剣を失ってしまっていた。
這い寄る氷が壁まで追って来た時に、壁に剣を刺し、それをバネにして飛んだのだ。
そして降り注ぐ氷塊を蹴り超え、軌道を変えて、事なきを得ていた。
「平伏せよ、サル。道を開けよ」
ゴディンの言葉と同時、傭兵の目の前に現れる、無数の氷。
その数なんと、20近くっ!
「なっ、冗談っ!?」
ゴディンから距離を取り、後ろに飛ぶジキムート。
逃げながらもジキムートが、ナイフを手のひらに射出し、投げつけるっ!
パキンっ!
ジキムートの投げたナイフで、大容量の氷の刃に風穴が開いたっ!
その風穴を縫うように、大量の氷をジキムートがかわしていくっ!
「へぇ……」
感心すると、ジキムートに歩いて行くゴディンっ!
それにビクリと、面食らうジキムートっ!
「ちぃっ!? コイツ魔法じゃなく、接近戦するタイプかよっ!?」
思わず叫ぶジキムートっ!
傭兵はゴディンの直進に怯え、ナイフを持って、舌打ちをしたっ!
(やべえぞっ!? 魔法も接近戦も得意だとかっ! この聖地の守護騎士か何かかっ!? まずったっ! ひょろそうなナリ見て騙されちまったかっ!?)
ペテン師がペテンにかかり、ジワリと汗に濡らされてしまうっ!
そして……っ!
「邪魔ね……」
ドン……。
弾かれ、道の端に飛ばされるジキムートっ!
「……っ!?」
そしてジキムートのすぐ隣を、汚い物を避けるようにシールドで避けて、通り過ぎていくゴディン。
意味が分からないジキムート。
「なかなか良い顔だ。ふむ。思った以上だよ……。そうだ。良かった」
何か言葉が聞こえた。
その瞬間……。
ビキキっ!
ジキムートが理解し、青筋を立てたっ!
(この野郎……。舐めやがってっ! 3人目ってのはそういう事かっ。しかも後ろも見せてんだぞっ! 敵に挟まれてるって考えもねえのかよっ!)
怒りと共に、ナイフを両手に出した傭兵っ!
真後ろを向いているゴディンへと投げるっ!
だが――。
「邪魔をするなよ、汚いの」
ゴディンの声と同時にまた、20に迫ろうかという魔法の雨を出現させたっ!
「クソっ!」
ゴディンからの攻撃に、身をよじってなんとか対応するジキムートだが、数本が腕と顔をかすめたっ!
「なんだコイツ!? 魔法の出が異様に早いぞっ」
尖ったゴルフボール。
それが20も一気に湧いているのだっ!
驚きを隠せないジキムートっ!
「〝スペルレス(神の寵愛深き物)″です、気を付けてっ!」
ゴディンを、ジキムートと挟むんで相対するノーティが叫ぶっ!
傷を負った右手を押さえながら、彼女は樹の魔法を放った。
「無駄だよ」
ガギンっ!
音がし、ゴディンの展開済みの氷の障壁に、樹木が阻まれるっ!
だが当たると同時、樹がシールドにへばりついていくっ!
その瞬間に、ゴディンの顔色が変わったっ!
「なにっ!? このマナは……っ」
今まで笑っていたゴディンが、驚きうめくっ!
蒼白の顔をして震え、氷の障壁を何枚も即時展開っ!
後ずさりしているっ!
ビキキ・・グキッ!
へばりついた樹は、氷のシールドに穴を穿つっ!
そしてそこから触手を伸ばし、氷を侵食してゆくっ!
「この魔法は特に、水には良く効くっ! 樹の虫に食い破られたくなければ、観念なさいっ」
虫のように動き、氷を食い破るツタっ!
恐れるゴディンを見て笑うノーティスっ!
「くぅ……。なんとなんと汚らわしいっ。神を侮辱する為に生んだ、こんな呪文を使うとはっ!? 滅せねばなるまいっ」
ゴディンはまた、氷の刃を出したっ!
今度は数十本の刃だっ!
ザスザスザスザスザスっ!
そして執拗に、樹を微塵に切り刻んでいくっ!
すると……っ!
「……っ!」
殺気に気づいたゴディンっ!
パンっ!
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