47 / 145
2章 聖地編。
聖地の出迎え。
しおりを挟む
「さてさて~っと。じゃあ偉大で賢くて、マナをタダで配ってくれる、太っ腹の……。えと、まぁなんか、すっげぇ神様に会いに行きますかっ」
笑ってジキムートは、神を敬う言葉を適当に並び立てながら、席を立とうとする。
――が。
「おらっ。早く出ろやっ、ゴミども!」
「邪魔だってんだよっ。お前が歩くのがおせぇんだろがよっ」
「てめが押すからつっかえんだよ、ボケっ。ちょっとは頭使えよっ!」
車内は大混雑だ。
傭兵共は必死に、出口につながる通路に殺到している。
神を前にしても、このならず者たちは――。
いや、神の前だからこそ、だろうか。
傭兵が礼儀や順番を守って、スムーズに、我慢強く並ぶ。
そういった考えが、彼らに浮かぶはずなかった。
似たような物はヤクザ、か。
全員がヤクザで埋まった、満杯のバスを想像しよう。
〝派閥″が違う奴らが、一斉に降りる。と考えてみればいい。
しかも親分(神)に、『はよぅせいやっ!』と恫喝を受けている。
さすればどうなるかなんて話は、至極簡単で、分かり切っていた。
「ふぅ、諦めっか」
醜い争い合いで、ゆっさゆさと揺れる車内。
とりあえずジキムートは、おっさんと、ガラの悪いおばさん達がひしめく、出口付近。
そこに近づくのは、よしておく事とにする。
「……」
じーっと、座って待つ車内。
そんな中にあって、ジキムートが気になった事があった。
それは、一人の傭兵。
物憂げ? なのだろうか。
なんともボーっと、外を見ている人間が一人。
「……」
白いマントで全身を覆った、小柄の傭兵らしき者。
そいつは、ゆっくりと座って残っている。
少し違和感を覚えたジキムート。
(なんだアイツ。神様にいち早く、会いたくないのか?)
ジキムートは異世界の人間。
信仰心なんて無くて、当たり前だ。
が、この世界。
マナが基本無料で、気前よく配ってくれる『我らの真の支配者。崇高なるマナの仕手』。
そんな太っ腹の神に、敬愛を欠く者がいるとは到底、信じ難かった。
「……」
何より違和感を感じさせるのは、その傭兵の目線。
世界中の人間が目指すハズの、神の城。
それが立っている町の中央の逆方向を、平然と見ている事だ。
「早くしろ、ボケがっ!」
ガッ!
「てめぇっ!」
短気な奴も多い。
コブシで語り合っているらしい。
「クソゴミ共っ! いい加減にしろよ、毎回毎回……っ」
時間が過ぎ続ける。
「……」
窓際の傭兵は相も変わらずじっと、神殿とは逆方向を見ていた。
ジキムートは、足で貧乏ゆすりしなが待つ。すると……。
「なんだ、あのガキ」
すっと出て来た、目の端の子供。
そこに、ジキムートの視点が定まる。
そしてもよおす、嫌な予感。
瞬間、ジキムートが中腰になったっ!
「この聖都から……っ。神の地から出ていけっ! 神を愚弄する者どもめぇーーーっ」
唐突に叫ぶと、小さな瓶を子供が投げたっ!
小瓶の軌道を注視するジキムート。
少し遅れて異変に気づいた、白マントっ!
白マント傭兵も立ち上がって、フードの奥から小瓶を凝視するっ!
「くっ……」
用心の為に二人とも、瓶が投げ込まれる地点。
一番傭兵が密集している出入口。
そこから距離を取るべく、体を準備させたっ!
バリンっ。
甲高い音。
それが耳に響くと同時……っ!
「おっ……。おぉ、なんだこれっ!? なっ……」
前の方で、何か異変を察知する声。
そして……。
ビキビキビキィっ!
一気に車内に、冷気の蛇のうねりが走ったっ!
「がぁっ!?」
「ぎゃぁっ!」
ぴしゃっ!
前の方で悲鳴が同時に唱和し、血が飛ぶっ!
「っと!?」
ジキムートが襲い来る氷から逃げようとしたその時、冷気の一端が――。
新しく新調した左のマントに触れて、冷気に巻かれてしまうっ!
ジュッ!
焼きつくように、マントが凍り付いていくっ!
「クソがっ!」
威力を察した瞬間っ!
シュルルっ!
音を立てながらスライディングして、距離を取るっ!
その後イスを2つ、サルの様に器用に飛び越え、後ろに逃げ込んだジキムートっ!
すると、冷気は大人しくジキムートの手前で、動きを止めた。
なんとか魔法の効果範囲から出たのを、確認できた傭兵。
「ふぅっ! おいっ、頭を低く……」
念の為に、マントの凍った部分を切り取りながら、ジキムートが白マントに目線をやる。
「いや、大丈夫のようだな」
ジキムートが言うまでもなく、白マント傭兵はきちんと体勢を低くし、外を警戒をしている。
どうやらそこそこは、戦闘の経験があるらしい。
「前はダメですね」
前から血が流れてきている。
魔法の発生源たる、馬車の出入り口を見やる、白マント傭兵。
「あぁ」
苦々しく、ジキムートが同意して前を見る。
そこには人型の群れ。
氷の尖った部分に刺さって、苦しんでいるのが見えた。
時折、救助を求める声が聞こえてくる。
「やべぇ。逃げ道がねえぞっ。後ろは壁に、前は地獄」
「外に行くだけなら、窓が。他にはない」
白マント傭兵が目線を這わせ、つぶやく。
非常に窮屈な馬車の中。
出入口は一か所だけで、そこはもう通れない。
「だが、窓も狭い。無理やりに突っ込めば、なんとかなる程度だな」
ジキムートが窓をチェックする。
そこにふと、ジキムートの脳裏に案が――。
そう、妙案が浮かんだ。
A案。
出入口を塞ぎ、そのまま逃げ遅れた奴らを掃討するために何か、大きな力で馬車ごとつぶす。
B案。
パニックになり、窓から無理に出てくる奴らを狙い撃ち。
「俺なら……2つともだぜ」
舌なめずりする、哀れな処刑対象。
ジキムートは相手を思いやる、優しい心を使って戦場を分析してやる。
一刻を争う場面。そう長く考える余裕はないっ!
「よしっ……。ささっと安全に、外に出よう。チラッとだが駅には、相当に〝ガラの悪い″奴らが見えた。それの悲鳴が聞こえないって事は、だ」
「えぇ、外を狙わないのならば、狙いを私達に絞っている。目標以外への各個牽制は、しない方針だっ! そうなると、引きこもるのは得策ではないっ!」
「問題はどこから逃げるか、だぜ」
「見やすい場所から逃げれば即、攻撃が飛んでくる恐れがあるっ。 どこかの建物の上から、私達を見てますね。一刻を争うでしょう」
「狙いは俺らだけ。目立てば即、攻撃。そんでもって、時間はねぇっ! ふぅ、人気者はつれぇぜっ! だったら、アッチかコッチだ」
ジキムートが指をさした、2つの方向。
後ろと下。
「ならば私は、こちら選択しますっ!」
即時、白マントが2択の答えを出した。
出入口でも、窓でも下でもない。
完全に終点の壁っ!
「良いねっ!」
悪くない白マントの判断に、笑うジキムートっ!
「火……火……火。我に……って、ちょっと!?」
「よしっ、行っくぜーーっ!」
呪文を唱えるフード傭兵の隣。
いきなり叫んで走り出すジキムートっ!
左肩を構え……。
バキバキィっ!
「なっ!?」
フード傭兵は驚嘆の声を上げるっ!
だがすぐにジキムートに続き、そのコミカルな――。
洋画アニメよろしく、人間を型抜きでもしたかのような穴。
筋肉の力だけでぶち抜かれた壁を通って、抜け出そうと……っ!
ヒューッ。
落下音がした。
突然、氷の塊が馬車の上に出現。
大きさは、20人乗りの馬車、その質量の2倍くらいはある。
超大物だっ!
「おっ……おいおいっ! 冗談だろっ!? 逃げろーっ!」
辺りは騒然となったっ!
馬車から一目散に逃げて行く、他の傭兵達っ!
しかし間もなく、氷がそのまま落下っ!
バキバキっ!
馬車の天井を突き破って、馬車を破壊っ!
耳をつんざく音と共に、大破する馬車っ!
「ぐっ!?」
衝撃が走り、フード傭兵の体が……弾け飛ぶっ!
「あがっ……っ!? この位置じゃっ!?」
フード傭兵が飛ばされた距離が浅い。
その位置では、飛んでくる馬車と砕けた氷の残骸、双方の餌食になってしまうっ!
もうすでに、白マント傭兵の目の前には、飛んでくる馬車の後輪部分が見えたっ!
「ちぃっ!」
とっさにジキムートが、フード傭兵を庇ったっ!
抱きかかえるように、飛んでくる馬車の残骸に背を向けるジキムート。
バキバキっ!
ジキムートに馬車の後輪が直撃っ!
シュバッ!
直後、鼓膜に衝撃が走ると共に、砂煙に飲み込まれる2人っ!
「ぐぅ……」
「……クッ」
飛んでくるのは、凶器に近い風圧。
馬車の残骸。
そして、尖った氷の破片っ!
それらが2人を飲み込んでいくっ!
バタバタバタっ!
絶えず細かい殺気が、自分達にあたってきているっ!
スパッ! スパパッ!
マントが切れ、服が切れ……。
ドシャァアアッ! ガララっ!
更には何か重い物が、自分達の横に落ちてくだけているっ!
ヒヒーンっ!
馬の断末魔が聞こえた。
体を飲み込む、すさまじい衝撃波っ!
揺さぶられながらも、ジキムート達は体を縮めて身を守る。
バキバキっ、バシャァっ!
そして一面、砂ボコリ……。
彼らは煙の中に、消えてしまっていた。
「くっけほっ。誰かっ、無事な奴はいねえかっ! 大丈夫かよっ」
大きな衝撃。
20人乗りの大型馬車が一瞬でペッシャンコになり、辺りは騒然となっている。
だが……。
「……あぁ。俺は、俺たちは大丈夫だ」
声が……。
ジキムートの声がした。
煙の中一人だけが、外へと歩き出す。
「……ふぅ。ありがとうございます」
抱えられながらもう一人のフード傭兵が、礼を告げた。
「そうか、全然かまわんぞ。だがそう思うんなら……ヤらせろっ」
ガスっ!
「はいはい。私は男ですよ」
お姫様抱っこで砂の中から2人、格好良く登場しそうだった。
だが紳士で平等なハズの交渉……。
一発ヤりたい折衝案は横暴にも、否決されてしまう。
そして2人は別々に、煙の中から出てくる。
「おぉ。すげえなおめえら」
「ええ。まぁ、当然のことですよ。私の実力なら……ね」
そう言って笑い、白マント傭兵はフードを取って……。
「ふぅ、全く。たまらない」
「……」
陽にさらされた、フード傭兵の中身。
それを見るや否や、血相を変える周りの傭兵達っ!
「なっ……。おめえ、おめえはっ!? 大変だっ。ケガしてるっ! 手当してやるよ。ほれっほれっ」
ササッと傭兵達が、そのフードの傭兵に取り付こうとするっ!
ジキムートなんぞ、全く誰も寄り付く気配も無いの、だ。
「ほら包帯をっ。包帯をせにゃな~。特に足元なんかは、大切よぉ。ほらぁ」
傭兵達数人、有象無象の指が、白マント傭兵の太ももに伸びる。
「……どっっ、せいゃッ!」
「ぎゃあっ!」
「ぐぇっ」
回し蹴り一閃っ!
白マント傭兵に蹴られ、苦しみもがく傭兵達。
だが。
「足っ……。足だけで良いんだ、おりゃぁよぉ」
「結構ですっ!」
「俺は……。俺は脇を……。脇の臭いだけで、それはそれだけでも……っ」
ガっ!
「私は男だ。オ・ト・コ」
魑魅魍魎どもの頭を踏みつけ、その女――。
いや、自称男が言い放つっ!
「じゃ……じゃあ男で良いから、太ももを」
「し・つ・こ・い」
顔面にかかとをぶち込んでさし上げる、自称男。
――男共が躍起になるのは無理もない。
そこに立っていたのは非常に……。
そう、べらぼうに美しい自称男。
腕は細くそして何より、体の全体が丸い。
確かにケヴィンは女性っぽかったが、だがしかし。
やはり、男性の体のフォルムは抜け出していない。
それに対してこの自称男。
体の成りは完全に、女性だ。
背丈は小柄で、比較的丸っこい、女性らしい可愛いフォルムをしている。
……胸は無いに等しいかったが。
服はクリーム色の上下と、大きめの白のマントを羽織っていた。
装備は魔法士ならは重装、前衛としてならゴミだと言える程度。
肌の露出は低く、顔と手以外は表に出ていない。
目は一際美しいブラウン。
少しピンク色にも見えたその瞳と、なんとなく拗ねたような目元。
顔の作りは端正で美しく、スッキリとしたフェイスラインだ。
髪は銀色で前以外はさっぱりと、後ろに細く括らせている。
その括った髪を結ぶ布には、小さい黄色の花。
肌は白くて、傷も全くないと言えた。
雰囲気は大人びており、全体的に清潔で繊細、そして潔癖。
傭兵には似つかわしくない、貴族にも見える優雅さがある。
そんな美少女的な、自称男。
「全くあなた達、そんなにこの顔が良いのですか? いい加減に……」
ドドドオっ!
「何を遊んでいる、虫けらどもめーーっ!」
白マント傭兵の声を遮るように、遠くから怒鳴り声が聞こえたっ!
遠くから一団がやってくる。迅速に、そして怒涛にっ!
「やっ、やべぇ。軍の連中だっ」
「13連隊の奴らが来たぞっ」
傭兵達が一斉にピンっと棒立ちになり、緊張した面持ちになるっ!
何人かは、どこかに走って逃げてしまった。
もう間近に迫る、馬の蹄が地を蹴る音。
だがその馬が止まるよりも先に、怒鳴り声の一撃が刺さるっ!
「被疑者の確保はどうしたこの、傭兵どもがっ!」
その声の主は、最も頑丈そうな鎧をまとい、一際豪華なフルフェイスで全身を守った男。
どう見ても、隊長格である者が言葉を発するっ!
そして……。
ヒヒーンっ!
遅ればせながら、砂埃をあげながら馬が止まる。
「どうしたっ、返事をせんか傭兵っ!」
そして馬上から下りもせず、見下しながら、隊長格が怒声を続けてきたっ!
男の後ろには大群、総勢20もの兵がいる。
その中には女性の姿も多い。
半数以上が女と見えた。
「さっさと答えろっ! この下賤な男どもがっ」
し……んと黙りこくる傭兵達に、女の甲高い声が響くっ!
「えらく多いな」
ジキムートが、引き連れられている女性の多さに驚き、声を上げた。
「何言ってるんです。普通ですよ、このくらい。」
「普通、か。シャルドネの騎士はほとんど、野郎ばっかだったがな」
「あぁ。それは、田舎ですからねぇ。王都行くとこんなの、日常茶飯事です」
「へぇ」
(この異世界じゃ、そうなのか。だとすると女の多さの理由は恐らく、魔法だな。アイツらの恰好はどう見ても、近接やろうって感じじゃねえ)
女性騎士団員の姿を見ながら、ジキムートが考える。
私達の世界では想像に難いが、この世界は魔法がある。
魔法が使えれば、肉体が貧弱かどうかなんて、そんな事は関係はない。
実際、実力伯仲と言える魔法士女と、剣士男。
これなら十中八九、魔法士が就職に優位だ。
(うちらの世界でも、魔法士は引く手あまただった。いや、むしろ人材が枯渇しまくってたから、女でもなんでもウェルカムだったしな。)
魔法士は引く手あまた。
武門の道も、極道の世界でさえも。
女だからと言うハンデはある程度、少なくなっている。
しかし……。
「女かよ……。鬱陶しい」
憂鬱そうにどこかから、傭兵の舌打ちが聞こえてくる。
「いやらしい眼でこっちを見るな、下賤共っ!」
その一方馬上からは、女騎士たちの見下した声。
(まぁ所詮、女で魔法士だ。傭兵にとっちゃあんまり、かんばしい話じゃねえ。それにどうやら騎士の女は相当に、雑草臭えときてる。うちらの世界じゃ数は限られてたし、良い所出のお嬢様も多かったが……。)
ジキムートの世界の女騎士は大体、良家の長女などが多かった。
生まれた時すぐに、ラグナ・クロスを開けさせられた者達だ。
女が家を継ぐにはどうしても、致死率を覚悟してでも、力を手に入れるしかなかったからである。
「汚らしいんだよ、傭兵共っ! さっさと質問に答えて消えろっ!」
「ちっ……後ろに隠れるだけが能の、“アス・アーティスト・プロ(ケツ絵描き)”の癖しやがって」
(ふふっ。雑草女が騎士になると、こうなんのか。うちの世界じゃ平民の女は、致死率を聞いた瞬間逃げ出す奴が大半だ。って、クソ神父が言ってたな。だから魔法なんて使える平民女はそもそも、貴族以上に希少種だった)
ジキムートの世界はこの異世界と違って、最大の障壁があった。
ジキムートは、自分の腕の入れ墨を見る。
その、致死率30パーの彫り物を。
笑ってジキムートは、神を敬う言葉を適当に並び立てながら、席を立とうとする。
――が。
「おらっ。早く出ろやっ、ゴミども!」
「邪魔だってんだよっ。お前が歩くのがおせぇんだろがよっ」
「てめが押すからつっかえんだよ、ボケっ。ちょっとは頭使えよっ!」
車内は大混雑だ。
傭兵共は必死に、出口につながる通路に殺到している。
神を前にしても、このならず者たちは――。
いや、神の前だからこそ、だろうか。
傭兵が礼儀や順番を守って、スムーズに、我慢強く並ぶ。
そういった考えが、彼らに浮かぶはずなかった。
似たような物はヤクザ、か。
全員がヤクザで埋まった、満杯のバスを想像しよう。
〝派閥″が違う奴らが、一斉に降りる。と考えてみればいい。
しかも親分(神)に、『はよぅせいやっ!』と恫喝を受けている。
さすればどうなるかなんて話は、至極簡単で、分かり切っていた。
「ふぅ、諦めっか」
醜い争い合いで、ゆっさゆさと揺れる車内。
とりあえずジキムートは、おっさんと、ガラの悪いおばさん達がひしめく、出口付近。
そこに近づくのは、よしておく事とにする。
「……」
じーっと、座って待つ車内。
そんな中にあって、ジキムートが気になった事があった。
それは、一人の傭兵。
物憂げ? なのだろうか。
なんともボーっと、外を見ている人間が一人。
「……」
白いマントで全身を覆った、小柄の傭兵らしき者。
そいつは、ゆっくりと座って残っている。
少し違和感を覚えたジキムート。
(なんだアイツ。神様にいち早く、会いたくないのか?)
ジキムートは異世界の人間。
信仰心なんて無くて、当たり前だ。
が、この世界。
マナが基本無料で、気前よく配ってくれる『我らの真の支配者。崇高なるマナの仕手』。
そんな太っ腹の神に、敬愛を欠く者がいるとは到底、信じ難かった。
「……」
何より違和感を感じさせるのは、その傭兵の目線。
世界中の人間が目指すハズの、神の城。
それが立っている町の中央の逆方向を、平然と見ている事だ。
「早くしろ、ボケがっ!」
ガッ!
「てめぇっ!」
短気な奴も多い。
コブシで語り合っているらしい。
「クソゴミ共っ! いい加減にしろよ、毎回毎回……っ」
時間が過ぎ続ける。
「……」
窓際の傭兵は相も変わらずじっと、神殿とは逆方向を見ていた。
ジキムートは、足で貧乏ゆすりしなが待つ。すると……。
「なんだ、あのガキ」
すっと出て来た、目の端の子供。
そこに、ジキムートの視点が定まる。
そしてもよおす、嫌な予感。
瞬間、ジキムートが中腰になったっ!
「この聖都から……っ。神の地から出ていけっ! 神を愚弄する者どもめぇーーーっ」
唐突に叫ぶと、小さな瓶を子供が投げたっ!
小瓶の軌道を注視するジキムート。
少し遅れて異変に気づいた、白マントっ!
白マント傭兵も立ち上がって、フードの奥から小瓶を凝視するっ!
「くっ……」
用心の為に二人とも、瓶が投げ込まれる地点。
一番傭兵が密集している出入口。
そこから距離を取るべく、体を準備させたっ!
バリンっ。
甲高い音。
それが耳に響くと同時……っ!
「おっ……。おぉ、なんだこれっ!? なっ……」
前の方で、何か異変を察知する声。
そして……。
ビキビキビキィっ!
一気に車内に、冷気の蛇のうねりが走ったっ!
「がぁっ!?」
「ぎゃぁっ!」
ぴしゃっ!
前の方で悲鳴が同時に唱和し、血が飛ぶっ!
「っと!?」
ジキムートが襲い来る氷から逃げようとしたその時、冷気の一端が――。
新しく新調した左のマントに触れて、冷気に巻かれてしまうっ!
ジュッ!
焼きつくように、マントが凍り付いていくっ!
「クソがっ!」
威力を察した瞬間っ!
シュルルっ!
音を立てながらスライディングして、距離を取るっ!
その後イスを2つ、サルの様に器用に飛び越え、後ろに逃げ込んだジキムートっ!
すると、冷気は大人しくジキムートの手前で、動きを止めた。
なんとか魔法の効果範囲から出たのを、確認できた傭兵。
「ふぅっ! おいっ、頭を低く……」
念の為に、マントの凍った部分を切り取りながら、ジキムートが白マントに目線をやる。
「いや、大丈夫のようだな」
ジキムートが言うまでもなく、白マント傭兵はきちんと体勢を低くし、外を警戒をしている。
どうやらそこそこは、戦闘の経験があるらしい。
「前はダメですね」
前から血が流れてきている。
魔法の発生源たる、馬車の出入り口を見やる、白マント傭兵。
「あぁ」
苦々しく、ジキムートが同意して前を見る。
そこには人型の群れ。
氷の尖った部分に刺さって、苦しんでいるのが見えた。
時折、救助を求める声が聞こえてくる。
「やべぇ。逃げ道がねえぞっ。後ろは壁に、前は地獄」
「外に行くだけなら、窓が。他にはない」
白マント傭兵が目線を這わせ、つぶやく。
非常に窮屈な馬車の中。
出入口は一か所だけで、そこはもう通れない。
「だが、窓も狭い。無理やりに突っ込めば、なんとかなる程度だな」
ジキムートが窓をチェックする。
そこにふと、ジキムートの脳裏に案が――。
そう、妙案が浮かんだ。
A案。
出入口を塞ぎ、そのまま逃げ遅れた奴らを掃討するために何か、大きな力で馬車ごとつぶす。
B案。
パニックになり、窓から無理に出てくる奴らを狙い撃ち。
「俺なら……2つともだぜ」
舌なめずりする、哀れな処刑対象。
ジキムートは相手を思いやる、優しい心を使って戦場を分析してやる。
一刻を争う場面。そう長く考える余裕はないっ!
「よしっ……。ささっと安全に、外に出よう。チラッとだが駅には、相当に〝ガラの悪い″奴らが見えた。それの悲鳴が聞こえないって事は、だ」
「えぇ、外を狙わないのならば、狙いを私達に絞っている。目標以外への各個牽制は、しない方針だっ! そうなると、引きこもるのは得策ではないっ!」
「問題はどこから逃げるか、だぜ」
「見やすい場所から逃げれば即、攻撃が飛んでくる恐れがあるっ。 どこかの建物の上から、私達を見てますね。一刻を争うでしょう」
「狙いは俺らだけ。目立てば即、攻撃。そんでもって、時間はねぇっ! ふぅ、人気者はつれぇぜっ! だったら、アッチかコッチだ」
ジキムートが指をさした、2つの方向。
後ろと下。
「ならば私は、こちら選択しますっ!」
即時、白マントが2択の答えを出した。
出入口でも、窓でも下でもない。
完全に終点の壁っ!
「良いねっ!」
悪くない白マントの判断に、笑うジキムートっ!
「火……火……火。我に……って、ちょっと!?」
「よしっ、行っくぜーーっ!」
呪文を唱えるフード傭兵の隣。
いきなり叫んで走り出すジキムートっ!
左肩を構え……。
バキバキィっ!
「なっ!?」
フード傭兵は驚嘆の声を上げるっ!
だがすぐにジキムートに続き、そのコミカルな――。
洋画アニメよろしく、人間を型抜きでもしたかのような穴。
筋肉の力だけでぶち抜かれた壁を通って、抜け出そうと……っ!
ヒューッ。
落下音がした。
突然、氷の塊が馬車の上に出現。
大きさは、20人乗りの馬車、その質量の2倍くらいはある。
超大物だっ!
「おっ……おいおいっ! 冗談だろっ!? 逃げろーっ!」
辺りは騒然となったっ!
馬車から一目散に逃げて行く、他の傭兵達っ!
しかし間もなく、氷がそのまま落下っ!
バキバキっ!
馬車の天井を突き破って、馬車を破壊っ!
耳をつんざく音と共に、大破する馬車っ!
「ぐっ!?」
衝撃が走り、フード傭兵の体が……弾け飛ぶっ!
「あがっ……っ!? この位置じゃっ!?」
フード傭兵が飛ばされた距離が浅い。
その位置では、飛んでくる馬車と砕けた氷の残骸、双方の餌食になってしまうっ!
もうすでに、白マント傭兵の目の前には、飛んでくる馬車の後輪部分が見えたっ!
「ちぃっ!」
とっさにジキムートが、フード傭兵を庇ったっ!
抱きかかえるように、飛んでくる馬車の残骸に背を向けるジキムート。
バキバキっ!
ジキムートに馬車の後輪が直撃っ!
シュバッ!
直後、鼓膜に衝撃が走ると共に、砂煙に飲み込まれる2人っ!
「ぐぅ……」
「……クッ」
飛んでくるのは、凶器に近い風圧。
馬車の残骸。
そして、尖った氷の破片っ!
それらが2人を飲み込んでいくっ!
バタバタバタっ!
絶えず細かい殺気が、自分達にあたってきているっ!
スパッ! スパパッ!
マントが切れ、服が切れ……。
ドシャァアアッ! ガララっ!
更には何か重い物が、自分達の横に落ちてくだけているっ!
ヒヒーンっ!
馬の断末魔が聞こえた。
体を飲み込む、すさまじい衝撃波っ!
揺さぶられながらも、ジキムート達は体を縮めて身を守る。
バキバキっ、バシャァっ!
そして一面、砂ボコリ……。
彼らは煙の中に、消えてしまっていた。
「くっけほっ。誰かっ、無事な奴はいねえかっ! 大丈夫かよっ」
大きな衝撃。
20人乗りの大型馬車が一瞬でペッシャンコになり、辺りは騒然となっている。
だが……。
「……あぁ。俺は、俺たちは大丈夫だ」
声が……。
ジキムートの声がした。
煙の中一人だけが、外へと歩き出す。
「……ふぅ。ありがとうございます」
抱えられながらもう一人のフード傭兵が、礼を告げた。
「そうか、全然かまわんぞ。だがそう思うんなら……ヤらせろっ」
ガスっ!
「はいはい。私は男ですよ」
お姫様抱っこで砂の中から2人、格好良く登場しそうだった。
だが紳士で平等なハズの交渉……。
一発ヤりたい折衝案は横暴にも、否決されてしまう。
そして2人は別々に、煙の中から出てくる。
「おぉ。すげえなおめえら」
「ええ。まぁ、当然のことですよ。私の実力なら……ね」
そう言って笑い、白マント傭兵はフードを取って……。
「ふぅ、全く。たまらない」
「……」
陽にさらされた、フード傭兵の中身。
それを見るや否や、血相を変える周りの傭兵達っ!
「なっ……。おめえ、おめえはっ!? 大変だっ。ケガしてるっ! 手当してやるよ。ほれっほれっ」
ササッと傭兵達が、そのフードの傭兵に取り付こうとするっ!
ジキムートなんぞ、全く誰も寄り付く気配も無いの、だ。
「ほら包帯をっ。包帯をせにゃな~。特に足元なんかは、大切よぉ。ほらぁ」
傭兵達数人、有象無象の指が、白マント傭兵の太ももに伸びる。
「……どっっ、せいゃッ!」
「ぎゃあっ!」
「ぐぇっ」
回し蹴り一閃っ!
白マント傭兵に蹴られ、苦しみもがく傭兵達。
だが。
「足っ……。足だけで良いんだ、おりゃぁよぉ」
「結構ですっ!」
「俺は……。俺は脇を……。脇の臭いだけで、それはそれだけでも……っ」
ガっ!
「私は男だ。オ・ト・コ」
魑魅魍魎どもの頭を踏みつけ、その女――。
いや、自称男が言い放つっ!
「じゃ……じゃあ男で良いから、太ももを」
「し・つ・こ・い」
顔面にかかとをぶち込んでさし上げる、自称男。
――男共が躍起になるのは無理もない。
そこに立っていたのは非常に……。
そう、べらぼうに美しい自称男。
腕は細くそして何より、体の全体が丸い。
確かにケヴィンは女性っぽかったが、だがしかし。
やはり、男性の体のフォルムは抜け出していない。
それに対してこの自称男。
体の成りは完全に、女性だ。
背丈は小柄で、比較的丸っこい、女性らしい可愛いフォルムをしている。
……胸は無いに等しいかったが。
服はクリーム色の上下と、大きめの白のマントを羽織っていた。
装備は魔法士ならは重装、前衛としてならゴミだと言える程度。
肌の露出は低く、顔と手以外は表に出ていない。
目は一際美しいブラウン。
少しピンク色にも見えたその瞳と、なんとなく拗ねたような目元。
顔の作りは端正で美しく、スッキリとしたフェイスラインだ。
髪は銀色で前以外はさっぱりと、後ろに細く括らせている。
その括った髪を結ぶ布には、小さい黄色の花。
肌は白くて、傷も全くないと言えた。
雰囲気は大人びており、全体的に清潔で繊細、そして潔癖。
傭兵には似つかわしくない、貴族にも見える優雅さがある。
そんな美少女的な、自称男。
「全くあなた達、そんなにこの顔が良いのですか? いい加減に……」
ドドドオっ!
「何を遊んでいる、虫けらどもめーーっ!」
白マント傭兵の声を遮るように、遠くから怒鳴り声が聞こえたっ!
遠くから一団がやってくる。迅速に、そして怒涛にっ!
「やっ、やべぇ。軍の連中だっ」
「13連隊の奴らが来たぞっ」
傭兵達が一斉にピンっと棒立ちになり、緊張した面持ちになるっ!
何人かは、どこかに走って逃げてしまった。
もう間近に迫る、馬の蹄が地を蹴る音。
だがその馬が止まるよりも先に、怒鳴り声の一撃が刺さるっ!
「被疑者の確保はどうしたこの、傭兵どもがっ!」
その声の主は、最も頑丈そうな鎧をまとい、一際豪華なフルフェイスで全身を守った男。
どう見ても、隊長格である者が言葉を発するっ!
そして……。
ヒヒーンっ!
遅ればせながら、砂埃をあげながら馬が止まる。
「どうしたっ、返事をせんか傭兵っ!」
そして馬上から下りもせず、見下しながら、隊長格が怒声を続けてきたっ!
男の後ろには大群、総勢20もの兵がいる。
その中には女性の姿も多い。
半数以上が女と見えた。
「さっさと答えろっ! この下賤な男どもがっ」
し……んと黙りこくる傭兵達に、女の甲高い声が響くっ!
「えらく多いな」
ジキムートが、引き連れられている女性の多さに驚き、声を上げた。
「何言ってるんです。普通ですよ、このくらい。」
「普通、か。シャルドネの騎士はほとんど、野郎ばっかだったがな」
「あぁ。それは、田舎ですからねぇ。王都行くとこんなの、日常茶飯事です」
「へぇ」
(この異世界じゃ、そうなのか。だとすると女の多さの理由は恐らく、魔法だな。アイツらの恰好はどう見ても、近接やろうって感じじゃねえ)
女性騎士団員の姿を見ながら、ジキムートが考える。
私達の世界では想像に難いが、この世界は魔法がある。
魔法が使えれば、肉体が貧弱かどうかなんて、そんな事は関係はない。
実際、実力伯仲と言える魔法士女と、剣士男。
これなら十中八九、魔法士が就職に優位だ。
(うちらの世界でも、魔法士は引く手あまただった。いや、むしろ人材が枯渇しまくってたから、女でもなんでもウェルカムだったしな。)
魔法士は引く手あまた。
武門の道も、極道の世界でさえも。
女だからと言うハンデはある程度、少なくなっている。
しかし……。
「女かよ……。鬱陶しい」
憂鬱そうにどこかから、傭兵の舌打ちが聞こえてくる。
「いやらしい眼でこっちを見るな、下賤共っ!」
その一方馬上からは、女騎士たちの見下した声。
(まぁ所詮、女で魔法士だ。傭兵にとっちゃあんまり、かんばしい話じゃねえ。それにどうやら騎士の女は相当に、雑草臭えときてる。うちらの世界じゃ数は限られてたし、良い所出のお嬢様も多かったが……。)
ジキムートの世界の女騎士は大体、良家の長女などが多かった。
生まれた時すぐに、ラグナ・クロスを開けさせられた者達だ。
女が家を継ぐにはどうしても、致死率を覚悟してでも、力を手に入れるしかなかったからである。
「汚らしいんだよ、傭兵共っ! さっさと質問に答えて消えろっ!」
「ちっ……後ろに隠れるだけが能の、“アス・アーティスト・プロ(ケツ絵描き)”の癖しやがって」
(ふふっ。雑草女が騎士になると、こうなんのか。うちの世界じゃ平民の女は、致死率を聞いた瞬間逃げ出す奴が大半だ。って、クソ神父が言ってたな。だから魔法なんて使える平民女はそもそも、貴族以上に希少種だった)
ジキムートの世界はこの異世界と違って、最大の障壁があった。
ジキムートは、自分の腕の入れ墨を見る。
その、致死率30パーの彫り物を。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。


ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる