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戦い。殺し、殺され、生き抜く。
傭兵の宿命。
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「来た来た、きっったーっ!」
ぶるるっ! と全身を震わせる傭兵。
その瞬間、ジーガがすぐに退くっ!
目の前にはすでに、ジキムートがいたのだっっ!
「うっっしゃーっ!」
超高速で近づいた彼は、手にした盾。それをパンチグローブの様に、叩きつけていくっ!
右手の剣も同様。
完全に鈍器として、乱れ打つ傭兵っ!
ガンっっ。ガガンっ!
「ぐぎっ!」
流れる様な傭兵の攻撃っ!
ジキムートからの攻撃を嫌がらり、ジーガが高速で逃げて行く。
だが、逃げたその先……。
「ヒァッハアアアーっ!」
ガスンっ!
必ずジキムートがいる。
ぴったりとへばりつき、連打を重ねてくる影っ!
ガスガスッ! ガガッ!
「うへひゃーっっ!」
獣のような雄たけびが響き、傭兵の乱攻撃が続くっ!
「ギャガっ! ギャッ」
逃げるジーガ。
だがどんなにどんなに逃げても、その先にはジキムートがいた。
盾と剣(鈍器)で、ジキムートがジーガを滅多打ちだっ!
「ガっっ、ガっ!」
回避を諦め、パンチを繰り出すジーガっ!
だが、すんでのところ――。
いや、実際はとらえている。
人間ならその温かい触感に、確実に筋肉の動脈を感じるはず。
それなのにジーガのパンチは、皮を切り裂くことさえかなわない。
まるで魔法のようにジキムートは、紙一枚より小さい隙間を見事、すり抜けていくのだからっ!
「何ボサッと、止まってんだよっ!」
避ける勢いで彼は、カウンターを張ったっ!
グシャッ!
その瞬間、血がはじけ飛ぶっ!
「うっひーーっ!」
ジキムートの血だ。そして――。
ボキキっ!
左の小指と中指が、へし折れた音がするっ!
ジーガの体は鋼を凌駕するのだ。
その体にガントレットで殴れば、当たり負けしてしまうのも当然っ!
盾はすでに物理耐性に負けて、崩れ落ちていた。
痛む指にジキムートは……っ!
「ぎゃが……?」
止まった。
ジーガの目の前で、ジキムートが止まったのだ。
そして……。
「おーっ、真っ赤っ赤。肉だ肉か? あれ……ニンジ……ン」
そう言って、自分の拳を食べるジキムート。
ズロッ……とよだれと血がしたたる。
「あぁ~、ニンザン。ニンザンねえかねぇ。あぁ~あぁ~。腹減った?」
突然ボトッと、剣と盾の残骸を落とし、やおら地面を探し始めるジキムート。
傭兵は、不審な動きでふらふらと歩き回る。
「ガッ!」
それに一気に襲い掛かるジーガっ!
だが……。
ヒュンヒュンっ! ヒュンっ!
「こっちはニンザン探してんだっ! 邪魔スンナっ。かぁっぺっ!」
避けに避けまくり、吼えて叫んで唾を吐きつける傭兵っ!
そうかと思えば――。
ガスっ! ガガッガスッ!
流れるように落ちていた盾と、それと、人間の腕。
それを拾って、ジーガを再度殴り倒し始めた傭兵っ!
その姿はまるでボクサー。
「ニンジンジンっ! ジンニン……。おぉー、ニジン~」
鼻歌交じりにジキムートは、剣を持っていたのを忘れてしまったように荒々しく、ジーガを殴り倒すっ!
ガスンッ! ガッガガガっ!
「ギュガっ!」
あまりの連打に耐え切れず、ジーガが体勢を崩してしまうっ!
そこに食らいつくように、殴り込み続けるジキムート。
こう言っては何だが、ジキムートよりもジーガに同情しそうな位に、苛烈な連打だっ!
「おっしっ! 俺が首折りすっぞ、こらぁっ。姉ちゃん見てなよっ!」
ロレツが回らない喋りで、何かを言って……。
彼は何を思ったか、ジーガの上に乗ったっ!
「ぎぎぃっ!?」
ジーガの首を、手に持った人間の腕を使って絞め始めた傭兵っ!
口から血が出るほどに、歯を食いしばっているジキムートっ!
「ギュ……っ」
だが当然、ジーガはゴーレムだ。
首を絞めようと意味はない。
ジーガは上の異物をそのまま、地面に擦りつけようとするっ!
「おっとっとぉ。馬が乗っちまったらごめんなさいね~」
何かをしゃべり、ロデオする傭兵。
いくらジーガが擦っても、その異物の体制は崩れないっ!
どんな凶悪な体制でも彼は、ジーガの上から落ちないのだ。
体バランス、そして、体幹。
「ねぇ、あんたの本気。そんなもんなの?」
「姉……さん」
「あんたの〝カミサマ″に頼ったって、全然私に勝てないじゃない」
そう言って姉は、自分をさす。
「そのカミサマ……。あたしに使ったけど、全然効かなかった」
「ちっ違うっ! 俺はあの時……。あの時」
「私が死んでたらどうしてたの? ねぇ」
「俺は……。僕は姉さんを殺さない……。決して……。殺せないんだ」
「じゃあ……そう。私を犯してたの? ねぇ……。私を犯してめちゃめちゃにして……」
「ちっ、違う。僕はそんなことしないっ!」
「じゃあなんであの時、あの子の手を取らなかった?」
「あの子? 誰だそれ」
「あなたがよく知ってるじゃない? あなたに全部――。穴という穴をささげた、私の敵」
「敵っ? アンタの敵って……。敵ってなんだよっ」
「敵敵敵敵敵敵敵っ」
「なっ……。何のことだ!? なっ……なんの」
「ほら取りなよ、あの手を。ジーク……。私の敵の名前」
「姉さん、俺をその名で呼ばないでくれっ! それはあんたの名前だっ!」
「ジーク……。勝利の名前。勝つためには手段を選ばない、薄汚い、あんたの名前」
「違うっ。それは、それは姉さんの……。勇者の名前だっ! 勝利はアンタにっ! 勇者が名乗るべき――」
「ジーク」
「ジーク」
「ウッ、ウワァああああ! 来るなっ来るなよっ!」
足でジーガの頭を、必死に踏みつけるジキムートっ!
ガスっ、ガスっ!
「ギャッ……。ギャガっ……」
その猛攻に、ジーガの限界が来ていた。
もう少しで、ジーガが倒れ落ちる。
勝利の瞬間は近い――がっ!
シュッ!
「うっ!?」
ゴロゴロゴロ……。
ジキムートが転がる。
「くっ……。致命を外した」
ローラが悔しそうに、血の付いたナイフを見る。
「はぁはぁ……。てめえ。いってえじゃねえか」
顎を押さえ、立ち上がるジキムート。
そこからは脈々と血が流れ、白い骨が見えていた。
「その目、〝クスリ″を決めたか」
ローラが目を細めた。
明らかに、イカれた目をしているジキムート。
雰囲気がおかしい。
汗も異様なほど出て……。
ビクッビクと肉が張って、脈打っている。
「はぁはぁ、おかげ様ですっげぇ気分が良い……うぅええ」
ボタボタっと、吐しゃ物が落ちた。
「ふふっ。貴様は生粋の冒険者だな、確かに。それは信じようか」
ジキムートの醜態に笑うアサシン。
冒険とは言葉の通り、危険を冒す行為だ。
そこには一筋の……。
たった一筋で良いから、たいまつがいる。
勇気を絞り出すための、一縷の光。
恐怖心を取り去り、自分を高めてくれる何か。
すがるべき光。
それはきっと友情……愛情。信心に理想。ではなく、麻薬だ。
人間性などそんなのは、幻想である。断言しよう。
疑うのならば、では聞こう。
あなたは結核を、友情で治すだろうか?
あなたは盲腸を愛情で処置するか?
医者がもし、インフルエンザにかかったあなたに笑って、信心を……神を信じてください。
と言ったら、どう思う?
人間性程度で、何に勝てるというのか?
「私達には、麻薬が必須だからな」
剣の切っ先が喉にかかった人間に、何を処方すべきか?
ドラゴンの牙で、微塵に消えそうな人間に渡すべき薬は、なんだろうか?
ドラゴンはインフルエンザより弱いのか?
グリフィンは盲腸よりひ弱か?
――答えは麻薬。
それが正解でそして、間違い無い言葉だ。
「あぁそうだぜ。地図に迷ってんなら、地図を燃やしゃあ良いんだ。恐怖に怯えてんなら、恐怖を壊せば良いっ! そんな事すりゃ、小心者の俺ら自身も壊れちまうが、まっ、しゃあねえっ。俺ら無能はこうするしか……。ねぇよな」
解決策がないなら、自ら壊れれば良い。
彼らは自分を保つ為、クスリに手を染めそして、自分を失う。
もし、あなたが中東にでも行って、テロリストになり、大いなる信心を試したいならまず、麻薬を買うことを勧める。
それが一歩目で、そして何より、あなたの冒険の最後だ。
口元を拭きながら、ぐらぐらする体を立て直すジキムート。
「てめえは口減らしの類か? それとも、自分に裏切られたか?」
「裏切られた口だ、同胞」
口元をゆがめるアサシン。
彼らの冒険はつらく苦しい……。
例え、自分が無能だと途中で気づいても、還る場所などは無い。
「そうか。俺は口減らしだ。仲良くしようぜ」
「ふんっ」
鼻で笑うとローラはすぐさま、ナイフを投げるっ!
その一閃が投げられるより早く、傭兵は瞬く間に、ローラと距離を詰めていたっ!
「ヒッ!?」
思わず声が出るローラっ!
「でぇりゃっ!」
目にも止まらぬ俊足さで、敵の目の前に到達っ!
そして、必殺の一撃っ!
ジキムートは満を持して放ったっ!
ヒュンっ!
それをなんとか避けるローラっ!
だが剣筋は見事、彼女の肩をかすめ、血を吐き出させるっ!
「……」
アサシンは傭兵と距離を取り、肩を押さえた。
……がしかし、ローラの目は、勝ち誇ったように笑っている。
そしてもう一本ナイフを取り出し、切っ先で傭兵を指し示す。
「ふぅ……。ふふっ。危ない危ない。〝貴様を知らなければ″、私は今ので死んでいただろう。だが私は貴様の手の内を全て、知っているぞ詐欺師」
「……」
その言葉にジキムートは頭を掻き、そっぽを向いた。
ぶるるっ! と全身を震わせる傭兵。
その瞬間、ジーガがすぐに退くっ!
目の前にはすでに、ジキムートがいたのだっっ!
「うっっしゃーっ!」
超高速で近づいた彼は、手にした盾。それをパンチグローブの様に、叩きつけていくっ!
右手の剣も同様。
完全に鈍器として、乱れ打つ傭兵っ!
ガンっっ。ガガンっ!
「ぐぎっ!」
流れる様な傭兵の攻撃っ!
ジキムートからの攻撃を嫌がらり、ジーガが高速で逃げて行く。
だが、逃げたその先……。
「ヒァッハアアアーっ!」
ガスンっ!
必ずジキムートがいる。
ぴったりとへばりつき、連打を重ねてくる影っ!
ガスガスッ! ガガッ!
「うへひゃーっっ!」
獣のような雄たけびが響き、傭兵の乱攻撃が続くっ!
「ギャガっ! ギャッ」
逃げるジーガ。
だがどんなにどんなに逃げても、その先にはジキムートがいた。
盾と剣(鈍器)で、ジキムートがジーガを滅多打ちだっ!
「ガっっ、ガっ!」
回避を諦め、パンチを繰り出すジーガっ!
だが、すんでのところ――。
いや、実際はとらえている。
人間ならその温かい触感に、確実に筋肉の動脈を感じるはず。
それなのにジーガのパンチは、皮を切り裂くことさえかなわない。
まるで魔法のようにジキムートは、紙一枚より小さい隙間を見事、すり抜けていくのだからっ!
「何ボサッと、止まってんだよっ!」
避ける勢いで彼は、カウンターを張ったっ!
グシャッ!
その瞬間、血がはじけ飛ぶっ!
「うっひーーっ!」
ジキムートの血だ。そして――。
ボキキっ!
左の小指と中指が、へし折れた音がするっ!
ジーガの体は鋼を凌駕するのだ。
その体にガントレットで殴れば、当たり負けしてしまうのも当然っ!
盾はすでに物理耐性に負けて、崩れ落ちていた。
痛む指にジキムートは……っ!
「ぎゃが……?」
止まった。
ジーガの目の前で、ジキムートが止まったのだ。
そして……。
「おーっ、真っ赤っ赤。肉だ肉か? あれ……ニンジ……ン」
そう言って、自分の拳を食べるジキムート。
ズロッ……とよだれと血がしたたる。
「あぁ~、ニンザン。ニンザンねえかねぇ。あぁ~あぁ~。腹減った?」
突然ボトッと、剣と盾の残骸を落とし、やおら地面を探し始めるジキムート。
傭兵は、不審な動きでふらふらと歩き回る。
「ガッ!」
それに一気に襲い掛かるジーガっ!
だが……。
ヒュンヒュンっ! ヒュンっ!
「こっちはニンザン探してんだっ! 邪魔スンナっ。かぁっぺっ!」
避けに避けまくり、吼えて叫んで唾を吐きつける傭兵っ!
そうかと思えば――。
ガスっ! ガガッガスッ!
流れるように落ちていた盾と、それと、人間の腕。
それを拾って、ジーガを再度殴り倒し始めた傭兵っ!
その姿はまるでボクサー。
「ニンジンジンっ! ジンニン……。おぉー、ニジン~」
鼻歌交じりにジキムートは、剣を持っていたのを忘れてしまったように荒々しく、ジーガを殴り倒すっ!
ガスンッ! ガッガガガっ!
「ギュガっ!」
あまりの連打に耐え切れず、ジーガが体勢を崩してしまうっ!
そこに食らいつくように、殴り込み続けるジキムート。
こう言っては何だが、ジキムートよりもジーガに同情しそうな位に、苛烈な連打だっ!
「おっしっ! 俺が首折りすっぞ、こらぁっ。姉ちゃん見てなよっ!」
ロレツが回らない喋りで、何かを言って……。
彼は何を思ったか、ジーガの上に乗ったっ!
「ぎぎぃっ!?」
ジーガの首を、手に持った人間の腕を使って絞め始めた傭兵っ!
口から血が出るほどに、歯を食いしばっているジキムートっ!
「ギュ……っ」
だが当然、ジーガはゴーレムだ。
首を絞めようと意味はない。
ジーガは上の異物をそのまま、地面に擦りつけようとするっ!
「おっとっとぉ。馬が乗っちまったらごめんなさいね~」
何かをしゃべり、ロデオする傭兵。
いくらジーガが擦っても、その異物の体制は崩れないっ!
どんな凶悪な体制でも彼は、ジーガの上から落ちないのだ。
体バランス、そして、体幹。
「ねぇ、あんたの本気。そんなもんなの?」
「姉……さん」
「あんたの〝カミサマ″に頼ったって、全然私に勝てないじゃない」
そう言って姉は、自分をさす。
「そのカミサマ……。あたしに使ったけど、全然効かなかった」
「ちっ違うっ! 俺はあの時……。あの時」
「私が死んでたらどうしてたの? ねぇ」
「俺は……。僕は姉さんを殺さない……。決して……。殺せないんだ」
「じゃあ……そう。私を犯してたの? ねぇ……。私を犯してめちゃめちゃにして……」
「ちっ、違う。僕はそんなことしないっ!」
「じゃあなんであの時、あの子の手を取らなかった?」
「あの子? 誰だそれ」
「あなたがよく知ってるじゃない? あなたに全部――。穴という穴をささげた、私の敵」
「敵っ? アンタの敵って……。敵ってなんだよっ」
「敵敵敵敵敵敵敵っ」
「なっ……。何のことだ!? なっ……なんの」
「ほら取りなよ、あの手を。ジーク……。私の敵の名前」
「姉さん、俺をその名で呼ばないでくれっ! それはあんたの名前だっ!」
「ジーク……。勝利の名前。勝つためには手段を選ばない、薄汚い、あんたの名前」
「違うっ。それは、それは姉さんの……。勇者の名前だっ! 勝利はアンタにっ! 勇者が名乗るべき――」
「ジーク」
「ジーク」
「ウッ、ウワァああああ! 来るなっ来るなよっ!」
足でジーガの頭を、必死に踏みつけるジキムートっ!
ガスっ、ガスっ!
「ギャッ……。ギャガっ……」
その猛攻に、ジーガの限界が来ていた。
もう少しで、ジーガが倒れ落ちる。
勝利の瞬間は近い――がっ!
シュッ!
「うっ!?」
ゴロゴロゴロ……。
ジキムートが転がる。
「くっ……。致命を外した」
ローラが悔しそうに、血の付いたナイフを見る。
「はぁはぁ……。てめえ。いってえじゃねえか」
顎を押さえ、立ち上がるジキムート。
そこからは脈々と血が流れ、白い骨が見えていた。
「その目、〝クスリ″を決めたか」
ローラが目を細めた。
明らかに、イカれた目をしているジキムート。
雰囲気がおかしい。
汗も異様なほど出て……。
ビクッビクと肉が張って、脈打っている。
「はぁはぁ、おかげ様ですっげぇ気分が良い……うぅええ」
ボタボタっと、吐しゃ物が落ちた。
「ふふっ。貴様は生粋の冒険者だな、確かに。それは信じようか」
ジキムートの醜態に笑うアサシン。
冒険とは言葉の通り、危険を冒す行為だ。
そこには一筋の……。
たった一筋で良いから、たいまつがいる。
勇気を絞り出すための、一縷の光。
恐怖心を取り去り、自分を高めてくれる何か。
すがるべき光。
それはきっと友情……愛情。信心に理想。ではなく、麻薬だ。
人間性などそんなのは、幻想である。断言しよう。
疑うのならば、では聞こう。
あなたは結核を、友情で治すだろうか?
あなたは盲腸を愛情で処置するか?
医者がもし、インフルエンザにかかったあなたに笑って、信心を……神を信じてください。
と言ったら、どう思う?
人間性程度で、何に勝てるというのか?
「私達には、麻薬が必須だからな」
剣の切っ先が喉にかかった人間に、何を処方すべきか?
ドラゴンの牙で、微塵に消えそうな人間に渡すべき薬は、なんだろうか?
ドラゴンはインフルエンザより弱いのか?
グリフィンは盲腸よりひ弱か?
――答えは麻薬。
それが正解でそして、間違い無い言葉だ。
「あぁそうだぜ。地図に迷ってんなら、地図を燃やしゃあ良いんだ。恐怖に怯えてんなら、恐怖を壊せば良いっ! そんな事すりゃ、小心者の俺ら自身も壊れちまうが、まっ、しゃあねえっ。俺ら無能はこうするしか……。ねぇよな」
解決策がないなら、自ら壊れれば良い。
彼らは自分を保つ為、クスリに手を染めそして、自分を失う。
もし、あなたが中東にでも行って、テロリストになり、大いなる信心を試したいならまず、麻薬を買うことを勧める。
それが一歩目で、そして何より、あなたの冒険の最後だ。
口元を拭きながら、ぐらぐらする体を立て直すジキムート。
「てめえは口減らしの類か? それとも、自分に裏切られたか?」
「裏切られた口だ、同胞」
口元をゆがめるアサシン。
彼らの冒険はつらく苦しい……。
例え、自分が無能だと途中で気づいても、還る場所などは無い。
「そうか。俺は口減らしだ。仲良くしようぜ」
「ふんっ」
鼻で笑うとローラはすぐさま、ナイフを投げるっ!
その一閃が投げられるより早く、傭兵は瞬く間に、ローラと距離を詰めていたっ!
「ヒッ!?」
思わず声が出るローラっ!
「でぇりゃっ!」
目にも止まらぬ俊足さで、敵の目の前に到達っ!
そして、必殺の一撃っ!
ジキムートは満を持して放ったっ!
ヒュンっ!
それをなんとか避けるローラっ!
だが剣筋は見事、彼女の肩をかすめ、血を吐き出させるっ!
「……」
アサシンは傭兵と距離を取り、肩を押さえた。
……がしかし、ローラの目は、勝ち誇ったように笑っている。
そしてもう一本ナイフを取り出し、切っ先で傭兵を指し示す。
「ふぅ……。ふふっ。危ない危ない。〝貴様を知らなければ″、私は今ので死んでいただろう。だが私は貴様の手の内を全て、知っているぞ詐欺師」
「……」
その言葉にジキムートは頭を掻き、そっぽを向いた。
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