暁の魔術師

久浄 要

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『後ろに立つ少女』

夕方一人で誰もいない廊下を歩いていると、誰かが自分を呼ぶ声がする。

振り返っても誰もいない。

再び歩こうと前を向くと、血だらけで髪の長い女生徒が目の前に立っている。

放課後に一人で学園をうろついてはいけない。

何かを訴えるような寂しげな少女が、あなたの後ろに立っている。


『美術室のマネキン』

美術室に置いてある、一体のマネキン人形。

白い身体に綺麗な顔立ち。人間のように大きく、所々ひび割れて欠けている。

彼女は血の涙を流す。彼女が泣く時、学校で誰かが死ぬ。

マネキンが泣いた姿を見てはいけない。

あなたのよく知る誰かが死んでしまうから…。


『開かずの音楽準備室』

ある生徒が放課後、同級生に虐められ、音楽準備室に閉じ込められた。次の日から生徒は学校に来なくなった。自宅にも帰っていなかった。

その日から夜の音楽室で誰かが啜り泣く声がする。

夜に音楽室に入ってはいけない。

生徒は今もそこにいる…。


『屋上の十三階段』

屋上に続く階段。

昼は十二段しかない階段。

夜になると一段増える階段。

十三段の時に昇ると気が狂って死ぬ、呪いの階段。

夜に屋上に上がってはいけない。気が狂って死んでしまうから…。


『十字架裏の大蜘蛛』

屋上資料館の十字架。

逆さの十字架の裏側には蜘蛛の悪魔がいる。人を惑わす魔女の化身がいる。蜘蛛の魔女は生徒を誘惑して誑かす。悪しき道へと誘う。

夜に聖なる領域を侵してはいけない。

悪しき亡者に姿を堕とすから…。


『銀仮面の怪人』

夜に学園に忍び込む者は仮面の怪人に殺される。

半月型の目に裂けた口。

銀色の仮面の怪人は破壊を許された神の遣い。

仮面の怪人は銀のナイフで胸を刺す。何度も何度も胸を刺す…。


『時計塔の魔術師』

ある生徒が忘れ物を取りに夜の学園に忍び込んだ。

ふと屋上を見上げると、時計塔には、ぼんやりと不思議な明かりが灯っていた。

生徒は好奇心に駆られ、時計塔に行ってしまう。

そこには何百本も立った蝋燭。

床には巨大な魔法陣。

黒いローブを着て、黄色い目をした皺くちゃの老人が黒魔術の儀式を行っていた。

生徒はその日、とうとう家に帰ってこなかった。

生徒の忘れ物と制服だけが時計塔に取り残されていた。

夜に時計塔に入ってはいけない。

裸にされ、呪いの儀式のイケニエにされるから…。


(川島由紀子の取材覚書)

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