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※※※
しおりを挟む…ちょ、ちょっと!
な、何なんですか、あなた!
部外者が勝手にウチの部室を使わないで下さいよ!…ちょっ、ああっ!
それって僕のノートパソコンでしょ!
ちょ、ちょっとちょっと!
それ返して下さいよ、もう!
…っていうかアンタ、アカウントもパスワードもなしにどうやってネットに繋いだんだよ!
…っていうか部室に鍵掛かってたじゃん!
マジありえねー!不法侵入じゃん!
…ああ、もう!
こんなに散らかして!
刑事さんならせめて担当の先生に許可を貰ってからにしてよ。
後で怒られんの僕なんですから!
大体、何なんですかアンタ!
そんなホストだかヤクザだかわかんないような妙な恰好して!
…ん?待てよ。
アンタ、まさか…。
ははぁん…わかったぞ。
近頃、警察以外に校内をうろついてる変な奴がいるって聞いたけどアンタのコトじゃないのか?
ふ、ふん…。
ところでアンタ、えらくモテてるらしいな。早くもウチの学校の女子どものハートを鷲掴みにしてるらしいじゃないか。
まぁ人をオタクだのキモいだの見た目だけで決めつけて騒ぐような女共が何を騒ごうが、僕には関係ないけどね!
理事長だか校長だに雇われたイケメン探偵だか何だか知らないけど、調査とかなら他でやってよ。
…え?依頼人がよくわかったなって?
ふふん…ナメちゃいけませんよ。僕はこう見えても情報通なの。
この電算室のパソコンや携帯があれば学校の噂や事件なんて筒抜けなの。
…さあさあ、わかったらさっさと出ていって下さい。
あんまり迷惑だと本当に警察呼びますよ。
どうせあの人達も近くにいる事ですしね!
まったく…。
アレ?
…あっ!ちょっと!
何やってんですか!?
勝手にキーボードに触らないで下さいよ!
…って、タイピング早っ!
しかも上手い!
おいおい!アンタ一体何者だよ!?本当に探偵やってる人?
ありえね~し!
うわ~!すっげぇ!
ウチの部のホームページ作ろうと思ってレイアウトに難儀してたのにさ。
うわ~!うお~!こりゃなかなか…。
こんなに綺麗に早く出来るもんなんだな~!
いやはや…。
おみそれしました。
…あ、椅子あるんで適当に使って下さい。
この通り、部員は僕を含めて三人しかいないし、部活どころじゃないのはどこも同じなんで、なんのおかまいもできませんけどね。
…キットカット食います?
…で、探偵さんも警察の人と同じでやっぱ知りたいのは川島の事なんですか?
昨日も何人か警察の人が事件のコト聞きにきましたよ。
え?あ、ああ…。
僕、放課後は大抵ここにいるんで学校の中のコトは噂とかでよく知ってますよ。
…ええ、いいっスよ。僕みたいな奴でよかったら協力しますよ。
まぁ、あの事件でウチのクラスも雰囲気が悪くなったっていうか。
なんか、お互いの顔色を窺い合ってるみたいになって無性に居心地が悪くなったっていうか…。
じっとしてられない気分っていうんですかね…。
成瀬や須藤や沢木とか学校にも来なくなっちゃうし。
…あ、ああ。クラスメートで目立つ連中なんですけどね…。
まだ二年生だし前までは皆、あっけらかんと明るかったのに、いきなり女子達や担任の山内先生も心ここにあらずって感じで…。
やり切れないですよね…。
川島はね…実際クラスのムードメーカーみたいなトコがあったんですよ。
そりゃ死んだ今になって、やれ売春してただの、おかしなクスリやってただの、いろんな悪い噂とか耳にするけど、僕に言わせれば、今時の高校生がなんにも抱えずに生きてる方がどうかしてると思いますよ。
少なくとも僕は信じちゃいませんね。口さがない噂だし。
川島は芯が強いっていうか、正義感が強い奴でね。僕みたいにイジメられてそうな奴にでも気さくに話しかけてくれたし…。
アイツの笑った顔って、結構見てて本当にホッとする感じだったな。
…好きだったのかって?
あはは、僕には好きな人はいませんよ。
プラモデル作ったり、フィギュア集めたり、まだまだ二次元のキャラに萌えてる方が性に合ってるみたいです。
けど川島は違ってたな~。異性をあんまり意識させないっていうか、割と男子からも女子からも誰からも好かれてたんだよなぁ…。
空手部の成瀬とかと仲よかったし須藤とかも満更じゃなかったみたいだし、沢木や鈴木とか、女子全員とも仲良くやってたし…。
誰とでもそつなくコミュニケーションとれるような、今時いないタイプのコではありましたよ。
あの一条先輩も、よく川島を訪ねて教室に来てましたからね~。
事件の前に何か変わったコトはなかったかって?
さぁ…警察の人にも同じコト聞かれたけど、特に何もなかったと思いますよ。
授業中とかも普通にしてたし、放課後には部室に顔を出すからみたいなコト言ってましたからね。あんなふうにいきなり自殺するようなそぶりなんて、何一つ見当たらなかったですから。
あ!そういえば…。
ああ、でも事件とはなんの関係もないかな…。
え…?ああ、わかりましたよ。
といっても、たいした事じゃないですよ。川島…あいつ事件の2、3日前から授業中にやたらと咳をしてましたね。事件の前の日かその前の前…うーん、10日の日くらいになるのかな。
その日にはマスクまでしてたぐらいだから、季節外れにタチの悪い風邪でも引いてたんじゃないですか。
あとは何があるかな~。
あ、最近は川島のトコにちょくちょく違うクラスの女子が来てたことくらいかな。一年生の可愛いコとかギャル系の派手な奴とか色々。新聞部の取材か何かの一環だったんですかね~。
…ね?事件には何の関係もなさそうでしょ?
あ、もう行くんですか?
あ、あの…探偵さん。
この事件、学校側は自殺って言ってるみたいだけど、実際そうじゃないかもしれないんでしょ?
じゃなきゃ探偵なんて雇う筈ないですからね…。
いや、いいんです。
ただ、川島が悪いように言われるのは僕らにとっても辛いんです。僕からもお願いします…。
このままじゃ川島…昔、学校で死んだ生徒みたいに、ただ人を怖がらせるだけの寂しい亡霊みたいになっちゃう気がするんです…。
え? いや、違います。
『時計塔の魔術師』じゃないですよ。あの怪談の方じゃないです。
『後ろに立つ少女』って怪談、知ってます?
…女生徒がね、行方不明になってるんです。ええ、十二年前にね…。
その生徒の名前は忘れたけど、確か殺人事件の前だったとかいう話をネットでチラッと見たコトあるんですよ。
探偵さん…。川島もやっぱり何かの事件に巻き込まれたんですか? そうなんでしょ!?
…あ、探偵さん! ちょっと!
…チェッ!なんだよ、いきなり現れてあっという間に行っちまったな。
…ってか、今時あんな探偵いるんだな~。
黒いスーツに赤いネクタイて!
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