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隠れ家
しおりを挟むトウとキキは、 王都散策をしていた。
3兄妹で、 よく散策はしているので、 何も不審なことはなく、
民衆からも好かれ人気があった。
「 殿下たち、 今日のデートはお2人なんだね。 食べてくかい? 」
「 うん。 串焼き2本ちょうだい 」
「 はいよー! 一本おまけなぁ。 」
一通り散策すると、 両手いっぱいになった。
王都の外れで、 フィリシア達と合流し、 隠れ家に案内する。
「 廃れた屋敷だけど、 中は一応使える。 こんなところで申し訳ないが、
明日まで、 ここにいて欲しい。 」
「 トウ兄様、 意外と綺麗でしたよ。 念の為、 掃除はしました。
食材、 食事共に、 一応用意してありますが、
信用ならないと思いますので、 ご自由になさってください。
警備は、 付けてもよろしければ、 影の物を三名用意します。 」
一通り案内しながら、 自分達でも、 各部屋の確認をする。
「 認識疎外の結界は、 どうされますか? 掛け直すのであれば、
解呪いたします。 中の結界は、 兄様だったわね。 」
「 あなた達、 兄弟は、 優しく美しい魔法を使うのね。
息まいてきたのに、 ずっと調子が狂うわ。 憎めないじゃない。 」
「 殺されて当然のことをしていますよ。 情に流されぬよう、
お願いします。 今この時にも、 殺されても、 捕縛されても
当然ですから。
こんな状況の中、 お話を聞いていただけることに、 感謝します。 」
トウは、 自分たちの状況と、 計画を話した。
「 私は、 ルード殿下と、 少しだけお話ししたい。
あと、 いろいろ差し置いて、 イシアを守っていただき、
国へ帰れるよう、 努力してくれていることに、 感謝します。 」
「 妊娠しているかどうか、 それは、 私が確認できるけれど、
今日ではなく、 明日いたします。 その上で、 記憶消去について
決めましょう。
カイリー、 貴方に一存します。 」
「 あっ、 兄さんがくる。 」
応接室が、 温かく慈愛に満ちた空気に包まれた。
「 これは、 花びらに残ってた魔力と似てる、、、 」
ルードが、 イシアを抱え、 降りてきた。
空色の、 腰まで伸びた真っ直ぐな髪が、 広がり、 ふわりと降りてくる様は、
美しい女神が降臨したかと、 思える光景だった。
イシアを降ろし、
「 初めまして。 ルード・テレウスでございます。
この度は、 このような場所にお呼びたてしたにも拘らず、
応じて頂き、 感謝いたします。 」
みなが、 それぞれに、イシアを呼び、 駆け寄ると、
「 ごめんなさい! ごめんなさい! 怒らないで!!
悪いことしたのは、 わかってます。 ごめんなさい。 」
イシアの声とは思えない、 大きな怯えた声で謝り、
ルードにしがみ付き、 ガクガクと震える。
前に出そうとしても、 泣きじゃくり、 離れない。
ルードは、困った表情を浮かべながら、
「 皆さまの前で、 失礼します。 」
泣きじゃくり、 嗚咽するイシアを抱きしめ、
誰も怒っていない、 心配で駆け付けてくれた
イシアの無事を、 自分の目で確かめたかったんだと、
一生懸命慰めながら、 説明するが、 イヤイヤし、
皆に、 叱られると怯え、 ルードの首に両手を回し、離れない。
キキが側によっても、 ビクビクする。
ルード以外の誰も寄せ付けなかった。
「 ルード殿下に、 抱いてもらえれば、 安心できますか?
誰も怒ってなどいません。 ただ、 貴女を心配してるのです。
お話しできませんか? 」
心をえぐられそうになりながら、 見かねたカイリーが提案する。
こんなに怯えていたら、 何かあったと思うな。
記憶がおかしくても、 恐怖のせいだと思うだろう。
この状態のイシアを、 宥め笑顔を引き出してくれていたのか。
記憶操作はできず、 ただ奪うだけの魔法だと言っていたが、
王妃が、 上手い具合に刷り込んだと考えるのが、 妥当か。
ルードに抱き上げられ、 ようやく会話が出来そうになってきた。
返事をするが、、、 ルードの胸に顔を埋めたまま。
「 落ち着く香りをだしましょうか。 」
ルードが、バラの香りで周囲を満たす。
イシアが、お花も欲しいと言うので、キキが詰んできた。
トウは、ハーブティーを淹れる。
いつも、この様にして世話をして貰ってるのかと思わせる、流れるような作業だった。
フィリシア達は、今引き離すのは、誰にとってもいいことではないと感じた。
「 フィリ姉さま、家出してごめんなさい。 どうしてここまで来れたのか分かりません。
ですが、 ルード様にお会いして、 この為に来たのだと思いました。
ルード様に沢山わがまま言いました。
今すぐお嫁にして欲しいと無理ばかり言いました。
でも、 黙って出たことは、 本当に悪い事をしたと思ってます。
ごめんなさい。
ルード様のおそばに、 居ることは、 許されませんか? 」
「 イシア、 そばにいってもいい? 」
一瞬、 ビクッとするが、
「 はい。 」 と、返事をする。
手を握ると、まだ震えている。 診察をしながら話しかける
「 イシア、 本当に心配したの。 無事でよかった。 命の心配もしてました。
誰かに酷い目に合わされていないかと、 心配でたまらなかった。
いつでも、帰って来なさい。 皆、いつでも貴女を迎え入れます。
ルード殿下とは、 国民同士の思いもあります。
簡単ではないけれど、 一緒に過ごせると思いますよ。
薔薇が好きだったかしら? いい香りね。 」
「 フィリ姉さま、 わがまま言ってごめんなさい。 心配かけてごめんなさい。
私、、 ルディといたいの。 頑張ります。 姉さま。
薔薇は、 大好きです。 他にも沢山ありますよ? 好きなお花。 」
「 イシア、 幸せですか? 」
「 カイリー様、、 ごめんなさい。 勝手なことをしました。
ですが、 幸せです。 」
「 そう、 ですか。 」
フィリシアは、 向かいの席に戻り、 夫とカイリーにだけ届く声で、 そっと告げる。
小さな命が2つ………
なくしますか? 私になら、できます。 まだ不安定な今なら。
無事の確認と、怒っていないことだけ伝えに来たと言って
イシアとルード殿下には、 戻ってもらいましょう。
2人が戻ったあと、 残った者同士で話をする。
「 私は、 明日の騒ぎに乗じて、 イシアを連れ帰る事に賛成です。
カイリーとイシアの結婚を無に戻すことはできますが、
国民が納得する理由を、 だせないわ。
国中に祝ってもらえる2人だったから。
この国の民を恨む者は、多く出ると思われ、
商売にも影響し、 互いにマイナスになると思います。 」
「 俺は、、 民のことがなければ、 イシアをお願いしたいと思った。
記憶を奪うと、 先程のようになるかもしれないのでしょう。
それは、 誰もが不幸になる。
もう、 発端がどうであったか、 思い出のあるなしでは、 済まない事ですよね。
ですが、 そうですね。 フィリ殿下と同じ意見になります。 」
「 あんな半狂乱ともいえる状態のイシア様を支え、
笑顔が戻るまで、 そばに居てくれたことに感謝しかない。
直近で記憶を奪う事は出来ないと言っていたよね?
本当に、 よくみてくれた。 俺もシアの意見に賛成。 」
「 国が絡む立場は、 本当に自由がないね。
国民だけではなく、 諸外国にも話は届いてる。
サイード国に輿入れしたと知れれば、 要らぬ憶測を呼び、 どちらも非難されるだろう。
フィリーの意見に賛成だが、 俺がマメに報告に来るよ。
元が、とても活発な姫だ、 カイリーも、 辛抱強い。
またゆっくり、 幸せになれるよう、 努力するはずだ。 」
トウとキキは、土下座している。
「 本当に申し訳ありません。 また、 寛大な決断をいただき、 ありがとうございます。
では、明日またお願いします。 」
「 頭を下げないでください。
あなた方が、 精一杯世話をしてくれたことはわかりました。
同じ状況でしたら、 きっと同じ選択をとっていたと思います。
イシアを、 妹を守ってくれてありがとう。 」
トウとキキが帰ったあとは、空気が重かった。
「 俺、 死んじまいたい。 キツすぎる。 ルード殿下に怒りの気持ちあったのに、
イシア見たら、 無くなったよ。
操られて、 誰かの策略だったとしても
抱くよな。 婚姻でもなんでもしちまうよな。
でも、 キツい。 辛いな。
ユージン様が、 信頼出来る人柄と言ってただけあって、
人柄よく、 魔力の優しさと多彩性、 戦闘力も、かなりの使い手と感じました。 」
「 リン様、 兄様達はなにか仰ってますか?
通じていたのでしょ? インカム 」
「 絶句だな。 国王の新書が届いたらしい。
先方は、 とても、 詫びてらっしゃる。
ケジメとして、 自分の首で片が付くなら、 差し出すと。
どうか、 2人の結婚を許してやって欲しいと。 」
「 そっか。
子どもについては、 カイリーに任せるけれど、 1人で決めるのが辛いなら、
一緒に考えましょう。 」
「 トウ殿下の希望通りにしようと思う。
1年間、 イシアには寂しい思いをさせますが
表向きには、 襲われたとし、 心の静養として、 王宮深くに匿っていただきたい。
そして、 ひっそり暮らしてもらい、 お子が産まれたら……
ルード殿下に託し、 記憶を消してもらいたい。
それからは、 誠心誠意、 イシアに尽くします。
彼のように、 できるかわかりませんが、 」
「 わかりました。 そのように致しましょう。
皆で、 支えていきましょう。 カイリー、 貴方のことも支えていくわよ? 」
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