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イシアの新しい家
しおりを挟む「 ご主人様、 今後はどうなさいますか? 」
「 何もせずともよい。 ルードが言ってくれば、 応えるだけ。
記憶がない時点で、 疑っては来るだろうがな。 上手い具合に刷り込めた。
ショックで混乱したか、 失ったかの判断はつかないだろう。
忘却の魔封石は、 あと一つか? 」
「 はい。 ルード殿下も、 もう作らないでしょうし、 最後でございます。 」
「 このまま、 立太子すればいいのだがな。 生き抜けるなら。 」
「 婚姻すれば、 神の国が護るでしょう。 」
***
イシア様? 眠られたか?
少し出ますね。 お食事を持ってまいります。
さて、 母上に確認だけするか。
「 失礼いたします。 」
「 どんな様子か? 落ち着いておられるか? 」
「 はい。 ようやく眠られたので。 一つお聞きしてもよろしいですか? 」
「 どうされた? 」
「 私が、 作ってしまった忘却の魔封石が、 残ってることはございませんか?
イシア様のご様子が、 気になったので。 」
「 あれは、 共に破壊したであろう? 溶炉で溶かし、 跡形もなくなった。
お互いに、 しばらく忘れてることがあったが、 問題なく過ごせてる。
危険な魔法だ。 常に冷静にな? 」
「 そう、ですよね。 あの時は、 申し訳ありませんでした。
思い出せる呪文があればいいのにと思ってます。
本当に、 私を頼って来てくれたのか、 信じきれなくて。 」
「 そなたを見て、 駆け寄っていたのが、 真実だと、 思ってますよ。
押し殺し、 過ごしていたのかもしれん。
大変素直で、 優しい人柄のようだからね。
あまり、 猶予がない。 早急に決めることではないが、 2年になるか?
お互いに思っていたなら、 早急とも思わないよ。
ユスティレーン国へは、 陛下より正式な書類を書いてもらえるよう、
頼んである。 後は、 当人同士だ。 できることなら、
婚姻し、 内情を知らせたうえで、 共に守っていただくことが一番と思うがな。 」
「 他の王子が脅威になるなら、 私は、 皆を殺してしまうかもしれません。
イシア様をお守りするために。 」
「 そういう国であるからな。 陛下もそうされた。 なのに、 多くの側室、、
これは、 つまらぬ愚痴ですね。 やめましょう。
イシア殿には、 悟られぬようにな? 多くの兄弟がいるとは、
思っていないようだから。 純真な彼女には、 見せない方が良い。 」
「 そうですね。 黒の者たちを動かしてもよろしいでしょうか?
トウは、 生きててほしいです。 」
「 好きに使うがよい。 トウのことは心配いらん。 女性ばかり口説いておるが、
あいつが一番愛しておるのは、 ルードだと気づいてないのか?
男色家だから、 子は生まれない。 頭の切れる子だ。 いい参謀となり、
将来は、 宰相になってくれるだろう。 」
「 知りませんでした。 ただの甘えん坊と、、 」
「 今は気にせず、 イシア殿のことを守ろう。 目覚めたら、 話すのであろう?
決まっているなら、 いつでも式を挙げれる。 よく考えてな。 」
「 お世話は、 私が致します。 しばらく、 公務は減らしていただいても? 」
「 それも、 陛下に許可は頂いてある。
急ぎの時は、 トウが受ける手はずだよ。
心配せず、 イシア殿に付き添ってあげなさい。 」
「 ありがとうございます。 着替えですが、 小柄なのでキキに直してもらうことは?
それに、 落ち着いたら、 お話相手にと思ってます。 」
「 そうだね。 伝えておこう。 」
***
はぁっ。 信じていいのだろうか。 信じたい。 今の私には、 信じるしかない。
黒。 わからぬよう、 王子を皆、 頼む。
私のことが落ち着けば、 死なぬ程度に、 私とトウも狙ってくれ。
~御意~
始めてしまったからには、 腹をくくろう。 迷えば、 無駄になる。
***
ここは、、どこかしら?
あ、 家出をしたんだ。 サイード王国まで来たのよね。
青薔薇の人、、 あれ? ひとり、、? いやだ。 こわい、、
誰もいない、、?
あ、 綺麗な薔薇。 これは? 色水を吸わせ始めたところね。 きれい。
枕元に置いてくれたのね。
少し出ると、 仰ってた気がする。
まだお戻りにならないのかしら?
まぁ、 あちこちに薔薇が、、 さすがだわ。 お花のお国。 すてき。
え? え? これって、 本数の花言葉? かしら?
3本、 4本、 6本、 9本、 21本、
ルード様、、、
「 なぁに? 」
「 あ、 おかえりなさい。 ルード様。 」
「 お食事持ってきたよ。 あと、 これ。 」
イシアは、 12本の青薔薇のブーケをもらった。
「 あ、、、 」
ブーケから、1本の青薔薇を、 取り、 ルードの胸に挿した。
そして、 真っ赤に頬を染め、 俯いた。
「 イシア様、、 本気と受け取ってよろしいですか? 」
「 はい。 家を自分から出たことは思い出したの。 私、 お転婆ですよ? 」
「 いいじゃない。 一緒に庭いじりできそうだね。 どうして、 お転婆と? 」
「 家を出る時にね。 私、 窓に梯子を掛けて、 抜け出したの。 」
「 えっ? なんて危険なことを、、 イシア様。
大冒険をしてきてくれたのでしょうね。 思い出せたら、 お聞きしたいです。 」
「 思い出しても、 いいません! 十分じゃないですか。
窓から抜け出したと言ったのですから。 」
「 ふふふっ。 抱きしめても? 」
「 はい。 」
ブーケをワゴンに置き、 抱きしめる。
「 ルード様? 毎回、 たずねられると、 とても恥ずかしいです。 」
「 じゃ、 急に抱きしめてもいい? 驚くかと思って聞いてたんだけどな? 」
「 あ、 それもそうです。 どうしようかしら? でも、 嫌ではないので、、 」
顎を掬い上げ、 唇を合わせた。
可愛すぎる。 イシア様。 この時期を、 ゆっくり噛み締めたいが、 そうもいかないか。
「 イシア様。 愛しています。 私と結婚して下さいますか? 」
「 はい。 末永く。 私も自信を持って貴方のことを、愛してると言えるように、なりたい。 」
「 可愛すぎます。 式は明日でも大丈夫ですか?
不安があるなら、気持ちが確かになってからにしましょう。 」
「 ルード様が、ハッキリしない私でも、いいと思って下さるなら、
明日がいいです。 自信を持って貴方のそばに居たいの。 」
「 全てを飛ばしてしまうことになり、すみません。
では、今日が恋人として、 最初で最後の日ですね。 」
頭にキスをして、食事を並べ始める。
「 すみません。 少し冷めてしまいましたね。 温めなおしましょう。 」
指先から温かい空気を流し、 料理を温めていると
「 ルード様の魔法。 とても綺麗で優しいですね。 それに、懐かしく胸が熱くなります。 」
「 それは、王都の温室でのことかもしれません。
一生懸命庭師の話を聞きながら、お一人で見学されてました。
ドレスが汚れそうでしたので、防護魔法を。
寒そうでもあったので、暖かな空気を纏っていただいた時がありましたよ。 」
「 あ、初めて見るお花が沢山あって、聞いてた時ですね。 少し離れた所にいらっしゃった?とても綺麗な方だなと、思ったわ。 」
「 思いの外、思い出がありますね。
これからも、増やしていきましょう。
落ち着いたら、 温室にもご案内しますね。 」
「 はい! とても楽しみです。 」
***
翌日、 朝から婚姻式を挙げ、 神の前で愛を誓った。
参列したのは、 国王夫妻、 トウ第2王子、 キキ第1王女
ノーマ王妃の、 サロンで、 紹介がてらの食事をとった。
「 ネメス陛下、 この度は、 行き倒れていたところ、 助け、保護していただき、
何から何までお世話いただき、ありがとうございます。 ここよりの感謝を。
また、 今日の良き日を、 全てご用意いただきましたおかげで、
ルード様と夫婦になれました。
言葉では言い表せないほど、 感謝しております。
幾久しく、 よろしくお願いいたします。 」
「 今より、 正式に家族だ、 楽にせよ。 何かあれば気兼ねなく申せ。
頃合いを見て、 婚姻の報告を祖国に出そう。 早く知らせたいのであれば、
今からでもうまをだすぞ? 」
「 ありがとうございます。 馬でも2~3日ですよね。
早めにお願いしてもようございますか? 」
「 うむ。 今日中に出そう。 」
「 お顔の色が良くなり、 一安心ね。 ゆっくり休めたかしら? 」
「 はい。 よく眠れました。 思い出せたこともございます。
王妃様の仰る通りでした。 ありがとうございます。 」
「 兄さん、 いつの間に恋仲だったの? 知らなかったよ。 」
「 記憶があいまいだが、 出会った時のことや、 言葉を交わしたことも、
思い出してくれた。
いつから想ってくれていたかは、ハッキリしないが、 今は好いてくれてるよ。
結婚し、 生涯添い遂げたいと思うほどにはね。
キキには年も同じだし、 良き友になってもらえたら、 嬉しく思う。
トウも、 今までと変わらず支えてくれると、 助かる。 」
「 そっかー。 幸せにな。 イシア様も、 兄さんとなら、 きっと幸せになれる。
公務や、 風習が違うだろうから、 俺達で助けるよ。
遠慮なく言ってね。 」
「 おめでとう。 儀式が終わったら、 沢山お茶しましょうね。
お兄様のサロンまで伺うわ。 」
「 みなさま、 本当に、 感謝します。
祖国の兄弟が知れば、 お怒りになり、 ご迷惑をおかけするかもしれないのに。
暖かく迎えて頂き、 感謝しかございません。 」
「 さて、 三晩過ごした後の、 昼、 またここで。 」
「 食事と着替えは、 うち扉の前に置くよう、 黒に言っておいたから。
無理せずにね。 イシア殿の体調に合わせてあげるのよ? 」
「 わかってます。 母上。 」
「 ははっ、 あまり何度も言ってやるな。
イシア殿が可愛そうなほどに赤くなっておる。 」
「 トウ、 またしばらく代行を頼む。 キキも、頼むな。 」
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