【R18】統べる者見守る者

寿 智子

文字の大きさ
上 下
79 / 92

イシアの新しい家

しおりを挟む




「 ご主人様、 今後はどうなさいますか? 」


「 何もせずともよい。 ルードが言ってくれば、 応えるだけ。 

記憶がない時点で、 疑っては来るだろうがな。 上手い具合に刷り込めた。

ショックで混乱したか、 失ったかの判断はつかないだろう。

忘却の魔封石は、 あと一つか? 」


「 はい。 ルード殿下も、 もう作らないでしょうし、 最後でございます。 」


「 このまま、 立太子すればいいのだがな。 生き抜けるなら。 」


「 婚姻すれば、 神の国が護るでしょう。 」





***




 イシア様? 眠られたか?


少し出ますね。 お食事を持ってまいります。




 さて、 母上に確認だけするか。 





「 失礼いたします。 」


「 どんな様子か? 落ち着いておられるか? 」


「 はい。 ようやく眠られたので。 一つお聞きしてもよろしいですか? 」


「 どうされた? 」


「 私が、 作ってしまった忘却の魔封石が、 残ってることはございませんか?

イシア様のご様子が、 気になったので。 」


「 あれは、 共に破壊したであろう? 溶炉で溶かし、 跡形もなくなった。

お互いに、 しばらく忘れてることがあったが、 問題なく過ごせてる。

危険な魔法だ。 常に冷静にな? 」


「 そう、ですよね。 あの時は、 申し訳ありませんでした。

思い出せる呪文があればいいのにと思ってます。

本当に、 私を頼って来てくれたのか、 信じきれなくて。 」


「 そなたを見て、 駆け寄っていたのが、 真実だと、 思ってますよ。

押し殺し、 過ごしていたのかもしれん。

大変素直で、 優しい人柄のようだからね。

あまり、 猶予がない。 早急に決めることではないが、 2年になるか?

お互いに思っていたなら、 早急とも思わないよ。

ユスティレーン国へは、 陛下より正式な書類を書いてもらえるよう、

頼んである。 後は、 当人同士だ。 できることなら、 

婚姻し、 内情を知らせたうえで、 共に守っていただくことが一番と思うがな。 」



「 他の王子が脅威になるなら、 私は、 皆を殺してしまうかもしれません。

イシア様をお守りするために。 」



「 そういう国であるからな。 陛下もそうされた。 なのに、 多くの側室、、

これは、 つまらぬ愚痴ですね。 やめましょう。 

イシア殿には、 悟られぬようにな? 多くの兄弟がいるとは、

思っていないようだから。 純真な彼女には、 見せない方が良い。 」


「 そうですね。 黒の者たちを動かしてもよろしいでしょうか?

トウは、 生きててほしいです。 」


「 好きに使うがよい。 トウのことは心配いらん。 女性ばかり口説いておるが、

あいつが一番愛しておるのは、 ルードだと気づいてないのか?

男色家だから、 子は生まれない。  頭の切れる子だ。 いい参謀となり、

将来は、 宰相になってくれるだろう。 」



「 知りませんでした。 ただの甘えん坊と、、 」


「 今は気にせず、 イシア殿のことを守ろう。 目覚めたら、 話すのであろう?

決まっているなら、 いつでも式を挙げれる。 よく考えてな。 」


「 お世話は、 私が致します。 しばらく、 公務は減らしていただいても? 」


「 それも、 陛下に許可は頂いてある。

急ぎの時は、 トウが受ける手はずだよ。

心配せず、 イシア殿に付き添ってあげなさい。 」


「 ありがとうございます。 着替えですが、 小柄なのでキキに直してもらうことは?

それに、 落ち着いたら、 お話相手にと思ってます。 」


「 そうだね。 伝えておこう。 」



***



 はぁっ。 信じていいのだろうか。  信じたい。  今の私には、 信じるしかない。




 黒。 わからぬよう、 王子を皆、 頼む。

私のことが落ち着けば、 死なぬ程度に、 私とトウも狙ってくれ。


~御意~



 始めてしまったからには、 腹をくくろう。 迷えば、 無駄になる。



***





 ここは、、どこかしら? 


あ、 家出をしたんだ。 サイード王国まで来たのよね。


青薔薇の人、、 あれ?  ひとり、、?  いやだ。  こわい、、


 誰もいない、、?

 あ、 綺麗な薔薇。  これは? 色水を吸わせ始めたところね。 きれい。

 枕元に置いてくれたのね。



 少し出ると、 仰ってた気がする。 

まだお戻りにならないのかしら?



 まぁ、 あちこちに薔薇が、、  さすがだわ。 お花のお国。 すてき。


え? え?  これって、 本数の花言葉?  かしら?


3本、 4本、 6本、 9本、 21本、  


 ルード様、、、




「 なぁに? 」


「 あ、 おかえりなさい。 ルード様。 」


「 お食事持ってきたよ。  あと、 これ。 」


 イシアは、 12本の青薔薇のブーケをもらった。


「 あ、、、 」


 ブーケから、1本の青薔薇を、 取り、 ルードの胸に挿した。

 そして、 真っ赤に頬を染め、 俯いた。 



「 イシア様、、 本気と受け取ってよろしいですか? 」


「 はい。 家を自分から出たことは思い出したの。 私、 お転婆ですよ? 」


「 いいじゃない。 一緒に庭いじりできそうだね。 どうして、 お転婆と? 」


「 家を出る時にね。 私、 窓に梯子を掛けて、 抜け出したの。 」


「 えっ?  なんて危険なことを、、 イシア様。 

大冒険をしてきてくれたのでしょうね。 思い出せたら、 お聞きしたいです。 」


「 思い出しても、 いいません! 十分じゃないですか。 

窓から抜け出したと言ったのですから。 」


「 ふふふっ。 抱きしめても? 」


「 はい。 」



 ブーケをワゴンに置き、 抱きしめる。  


「 ルード様? 毎回、 たずねられると、 とても恥ずかしいです。 」


「 じゃ、 急に抱きしめてもいい? 驚くかと思って聞いてたんだけどな? 」


「 あ、 それもそうです。 どうしようかしら? でも、 嫌ではないので、、 」



  顎を掬い上げ、 唇を合わせた。 


可愛すぎる。 イシア様。 この時期を、 ゆっくり噛み締めたいが、 そうもいかないか。


「 イシア様。 愛しています。   私と結婚して下さいますか? 」


「 はい。 末永く。 私も自信を持って貴方のことを、愛してると言えるように、なりたい。 」


「 可愛すぎます。 式は明日でも大丈夫ですか? 

不安があるなら、気持ちが確かになってからにしましょう。 」


「 ルード様が、ハッキリしない私でも、いいと思って下さるなら、 

明日がいいです。 自信を持って貴方のそばに居たいの。 」


「 全てを飛ばしてしまうことになり、すみません。 

では、今日が恋人として、 最初で最後の日ですね。 」


頭にキスをして、食事を並べ始める。


「 すみません。 少し冷めてしまいましたね。 温めなおしましょう。 」


指先から温かい空気を流し、 料理を温めていると


「 ルード様の魔法。 とても綺麗で優しいですね。 それに、懐かしく胸が熱くなります。 」


「 それは、王都の温室でのことかもしれません。

一生懸命庭師の話を聞きながら、お一人で見学されてました。

ドレスが汚れそうでしたので、防護魔法を。

寒そうでもあったので、暖かな空気を纏っていただいた時がありましたよ。 」


「 あ、初めて見るお花が沢山あって、聞いてた時ですね。 少し離れた所にいらっしゃった?とても綺麗な方だなと、思ったわ。 」


「 思いの外、思い出がありますね。

これからも、増やしていきましょう。

落ち着いたら、 温室にもご案内しますね。 」


「 はい! とても楽しみです。 」





***




 翌日、 朝から婚姻式を挙げ、 神の前で愛を誓った。


参列したのは、 国王夫妻、 トウ第2王子、 キキ第1王女 




 ノーマ王妃の、 サロンで、 紹介がてらの食事をとった。




「 ネメス陛下、 この度は、 行き倒れていたところ、 助け、保護していただき、

何から何までお世話いただき、ありがとうございます。 ここよりの感謝を。

また、 今日の良き日を、 全てご用意いただきましたおかげで、 

ルード様と夫婦になれました。

言葉では言い表せないほど、 感謝しております。

幾久しく、 よろしくお願いいたします。 」



「 今より、 正式に家族だ、 楽にせよ。 何かあれば気兼ねなく申せ。 

頃合いを見て、 婚姻の報告を祖国に出そう。 早く知らせたいのであれば、

今からでもうまをだすぞ? 」




「 ありがとうございます。 馬でも2~3日ですよね。 

早めにお願いしてもようございますか? 」


「 うむ。 今日中に出そう。 」





「 お顔の色が良くなり、 一安心ね。 ゆっくり休めたかしら? 」

「 はい。 よく眠れました。 思い出せたこともございます。

王妃様の仰る通りでした。 ありがとうございます。 」 



「 兄さん、 いつの間に恋仲だったの? 知らなかったよ。 」


「 記憶があいまいだが、 出会った時のことや、 言葉を交わしたことも、

思い出してくれた。 

いつから想ってくれていたかは、ハッキリしないが、 今は好いてくれてるよ。 

結婚し、 生涯添い遂げたいと思うほどにはね。 

キキには年も同じだし、 良き友になってもらえたら、 嬉しく思う。

トウも、 今までと変わらず支えてくれると、 助かる。 」


「 そっかー。 幸せにな。 イシア様も、 兄さんとなら、 きっと幸せになれる。

公務や、 風習が違うだろうから、 俺達で助けるよ。

遠慮なく言ってね。 」


「 おめでとう。 儀式が終わったら、 沢山お茶しましょうね。

お兄様のサロンまで伺うわ。 」



「 みなさま、 本当に、 感謝します。

祖国の兄弟が知れば、 お怒りになり、 ご迷惑をおかけするかもしれないのに。

暖かく迎えて頂き、 感謝しかございません。 」



「 さて、 三晩過ごした後の、 昼、 またここで。 」


「 食事と着替えは、 うち扉の前に置くよう、 黒に言っておいたから。

無理せずにね。 イシア殿の体調に合わせてあげるのよ? 」


「 わかってます。 母上。 」

「 ははっ、 あまり何度も言ってやるな。 

イシア殿が可愛そうなほどに赤くなっておる。 」



「 トウ、 またしばらく代行を頼む。 キキも、頼むな。 」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】

うすい
恋愛
【ストーリー】 幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。 そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。 3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。 さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。 【登場人物】 ・ななか 広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。 ・かつや 不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。 ・よしひこ 飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。 ・しんじ 工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。 【注意】 ※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。 そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。 フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。 ※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。 ※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

【R18】やがて犯される病

開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。 女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。 女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。 ※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。 内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。 また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。 更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。

性欲の強すぎるヤクザに捕まった話

古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。 どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。 「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」 「たまには惣菜パンも悪くねぇ」 ……嘘でしょ。 2019/11/4 33話+2話で本編完結 2021/1/15 書籍出版されました 2021/1/22 続き頑張ります 半分くらいR18な話なので予告はしません。 強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。 誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。 当然の事ながら、この話はフィクションです。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】今夜、私は義父に抱かれる

umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。 一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。 二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。 【共通】 *中世欧州風ファンタジー。 *立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。 *女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。 *一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。 *ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。 ※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...