【R18】統べる者見守る者

寿 智子

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朝練、反省

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 夜明け前の鍛練場。静かにたたずむ影。周囲にはほんのりと薔薇の香りが漂っていた。

 いつも通り、ロイジンはコリン、レイリーと共に、フェージンは、ジェイク、サイファと共に鍛練場に向かう。
 鍛練場前でクージンに会ったので挨拶しようとするが、’’待て’’の指示が出る。鍛練場内を指さし、ロイジンとフェージンだけついて来いとの指示。
 残りの4人は様子を見て後で来いとのことだった。

 3人は剣を抜き、息を整える。合図とともに一気に入り、鍛練場の影に飛び掛かった。
クージンが先陣を切り頭上から、フェージンが防御魔法を張り背後から攻撃魔法を構える。ロイジンは剣に風魔法を乗せ横から攻撃、を仕掛けた。

 が、剣は軽くいなされ、魔法は一筋の光とバラの香りと共に、かき消された。
第2段、3段と攻撃を仕掛けるが、全く通らない。

 後から入ってきた4人は、3王子の苦戦する姿に、驚き加勢しようとするが、コリンだけが何かに気付き、静止した。鍛練場の壁際で戦闘の様子を見守る。

 しばらく、薄暗い中で撃ち合い王子たちが3人で掛かっても歯が立たない様子。だが、その剣筋と動きはとても美しかった。中心に居る誰かは、後ろや横からの攻撃も正面見たままいなしてるようだ。

 日が昇り始め、その影が何者かわかった。王妃様だ。騎士服を纏い、にこやかに捌く姿は美しい。
王子たちの動きも無駄なく素早いが、全く入らない。

「クー、力に頼りすぎ足と空中をもっと使って。ロイ、剣武じゃないのよ?休憩せずしっかり相手みて手数出しなさい。フェー、もっと多方向から多属性の攻撃と剣も使い、回復と防御も展開なさい。3人掛かりで、まだ一太刀も当てられないの?鍛練してる?基礎から学ぶ?息が上がってるわよ?がんばんなさいな。」

 レイピアを抜き、空に飛びあがる、クージンとロイジンはお互いの攻撃にやられそうになる。レイピアで2人の剣が弾かれ、間一髪助かった。フェージンは背後をとられ、頭にポンと手を置かれた。

「敵が棒立ちなわけないでしょ?何油断してるの。同士討ちで、おしまい。んー。公務が少し落ち着いたから身体を動かしに来たのに、あなた達はまだまだね。準備運動にもならないわよ?もう、老いが入ってきてるのに。」

「強くなってきてると胡坐をかいていたかもしれません。精進します。」

 全く呼吸を乱すことなくニコニコ喋る王妃に対し、王子は肩で息をし、汗だくだ。所々ケガもある。

「おはようございます!王妃陛下。」礼をとり膝をついていた4人だったが
「ここでは必要ないわ、ただのお母さんよ?楽にしてね。」
「ありがとうございます。しかし、ただのお母さんの強さではありませんね。驚きました。」

「うふっ。この子達の師のようなものよ。そうそう撃たせないわ。」

「母上は、元0番隊長だ。全盛期の時は、恐ろしいほど強かったと聞く。」
「え?あの【光の薔薇騎士】様??」
「んー。そう呼ばれてた気もするわ。このバラの香りのせいね。潜伏できないから邪魔なんだけど、これだけは克服できなかった。集中すればするほど濃くなるのよ。とんでもない弱点よね。居場所が常にばれる。」

 ジェイクとサイファの鍛練はどんな感じ?ソルドの息子ですから、期待してますのよ?私に勝ったことがないとはいえ、クー達よりは強いお方でしたから。

 王妃様…大団長よりお強いのですか?

 昔はね?今はきっと無理、引退してからほとんど剣を握ってませんもの。王子たちとチャンバラごっこしてるだけです。ソルドはあれからも鍛練を続けてますからね。

 王妃陛下は負け知らずなのですね。

 ん?負けあるわよ?完敗だった。
最後は髪が燃えて終了、慌てた陛下に土下座されたけどね。
 髪くらい気にしてなかったけど必死だったから、嫁にしてくれたら許す。って言っちゃったのよねー。王太子様ってこと失念してて…

 懐かしい話しをしてるね。ゼノは間違いなく随一の剣士だよ。完敗というが、本当にギリギリだった。勝てたらプロポーズの予定が髪を燃やしてしまったのだ、それは焦るよ。

 さて、ゼノシャ、一本お願いできますか?
 もちろん。レイティーン。


 ロイジンは、遅れてきたユージンとレオンも含め皆に、勉強になるからしっかり見よう。最高峰の手合わせだ。と告げる。


 2人の手合わせは、異次元だ。高速で空中戦が繰り広げられる。到底真似できるはずもない。だが、ここまで到達したい。そう思う騎士達だった。
 大太刀の使い手国王陛下、扱いが難しすぎることから、後継者がいない。クージンも挑戦したが、どうしても扱いきれなかった。
 レオンがとても興味深くみていた。挑戦してみるのもありかもしれん。

 こうも素早く魔法を繰り出しながら、戦える人は少ない。多くの戦場を戦い抜いた経験も大きいだろう。両親が騎士の時代、まだ多くの魔物が世界に巣食っていた。一掃したのは両親が所属する特殊騎士団だった。

 おかげで今は、時折り次元の隙間から出てくる魔物を退治し昇華するだけですんでる。実戦経験を積める場が少ない今、歴戦の猛者に学ぶことは多い。
 改めて思う。この二方の動きは異次元に見えるが、実践に必要だと思う。多彩で多方向へ警戒し戦う、大人数に対する戦い方は基本になるのだろう。

 本気の紅白戦を考えたほうがいいかもしれん。強くあらねば。クロノス神が最優先で次元を塞ぐ指導をしてるのは、必要なんだろう。
  数人の魔法士が数日掛けて塞いでいた隙間を、俺とロイは2人で数時間で塞ぐが、ユージンは1人で素早くこなすようになりそうだ。

 近い未来、世界を脅かすのは、魔物たちなのだろう。恐らく1000年毎に出現すると言われてる暗黒期は目の前に来てる。その証拠に魔物や亀裂の目撃情報が多発している。
 古い文献を見直す必要もあるだろう。また、後世の為に書き記さねば。

 前回が1000年だったとすれば、1990年の今、魔物との戦いが、始まってもおかしくない時期なのだろう。言い伝えやおとぎ話も調べなおそう。フィリシアに頼む方がよさそうだな。



 レイティーンとゼノシャの手合わせに変化が見え始めた、閃光のようなゼノシャの動きが心なしかスピードが落ちてきた気がする。それでも王子たちは追い付けないのだが。

 空中で膝をついたゼノシャ、レイティーンは大太刀を納め、ゼノシャを担いだ。地上に降りた2人に飲み物とタオルを渡す。

「もう、勝てる見込みはありませんね。気力体力がもたないわ。老いるのは嫌ね。今の私なりの戦い方を探さなきゃいけないわ。」
「おはよう、みんな。ちょっと夢中になっちゃったわ。ユージとレオンも偉いわね。あなた達も今の自分なりの戦い方を探すのよ?力が付いてきたら、またアップグレードすればいいと私は思うの。先輩やお兄様たちを見習いながら、’’今’’できる戦い方を持ってないと、目指す域に到達するまで、無茶な戦い方になっちゃうでしょ?」

「はい。今の僕の戦い方。考えたことなかった。大人になってから、戦えるようにと思ってました。」

「がんばりましょうね?一掃したときの気持ちよさったらないわよ~。」

「ゼノ、そのくらいにしなさい?君の一掃は伝説なんだからね?本当によくやったよ。さて、今日は皆ゆっくり過ごしなさい。料理塔の氷室に食事はしっかり用意してある。ユージンが作ったバッグに入れて、持ち帰るといい。これを伝えに来たのだが、私もつい血が騒いでしまった。」

「ありがとうございます。父上、後で少しだけお時間ください。」
「うむ。朝食後サロンに着なさい。」

 それぞれ、もてなしと休日を過ごしたのだった。

 クージンは、ミディとの婚姻式の相談をしていた。婚約の儀を滞りなく済ませた報告はしていたが、避妊もせず交わってしまった事を告げた。父親としてしかり飛ばされたのだった。

 ベスとミーシャの場合は他の要因もあったので仕方ない部分もあったが、ミディとは普通の婚姻だ。
 手本とならなければいけない立場なのに、それを忘れ欲望のまま行動するとは情けないと。

 また、女性を大切にする気持ちがない、メノーンと早くから関係を持っていた弊害か下半身がだらしない。
 散々叱られた後、昨日より迎賓館に泊っているから、このあとすぐ謝罪に行く。
 父上の妹が嫁いだ先なので、ばつが悪いと嘆かれた。

 クージンはミディのご両親より兄であるフランの怒りを恐れた。妹だけでなく弟レオンも溺愛してる。妹弟思いで、両親を敬愛する、出来た人柄の男だ。ロイジンも年下ながら見習うとこが多いと一目置く存在。
 婚約破棄だけは避けられるよう、誠心誠意謝罪しようと思った。

 そして、ラズビーン家が泊まる迎賓館で話し合いが始まった。
 案の定、フランは怒り、ミディを連れ去ってしまった。どのような結果になろうと、夏休みが終わるまで会わせないと言われた。

 万が一妊娠していたら、王妃教育を理由に学園をやめ、遅くとも9月には婚姻式を挙げ王宮に入ってもらう。

 妊娠が確認されなければ、学園は止めることなく専門科で世界史と貴族を専攻し、二十歳になれば式を挙げる。約2年後だ。王宮に入るのは式を挙げてからと言われた。

 クージンは盛大に項垂れた。それが一般的とはいえ、2年も触れられないのかと。

 親たちは盛大に落ち込む王子を見、反省してると思い。当初の予定を話し出す。
 王太子であり、神よりたくさんの子をなせと告げられていることから、学園が冬休み入ると同時に式を挙げ、卒業までは長期休暇毎に、聖域の屋敷で過ごしてもらう。
 その間の公務や祭事は出来る限り振り分ける。

 そう、5か月間の婚約期を過ごせば、子作り最優先の生活だったのだ。それでは気持ちがないようにも感じるので、ミディを不憫に思い、どう調整するか、親たちとフランで相談していたのだった。

 あからさまに喜びを表すクージンに親たちは苦笑いするしかなかった。
しかし、この夏休み中は、接見禁止と言われ、レオンの鍛練の付き添いもなくなったのだ。
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