4 / 40
深い森には精霊がいるから気をつけろ
君が助けたのは僕だよ
しおりを挟む
なにかしら……?
カティヤは夢うつつの中で、ぼんやりと考えていた。
さっきの悪夢とは正反対の心地よさだ。
自分の粗末な固いベッドとはちがう、ふかふかで温かな感触。
髪を撫でる優しい手が、ときどき悪戯っぽく頬や鼻をつつく。
「あぁ、もう。お兄ちゃんったら、やめて」
幸せな気分でくすくす笑いながら軽く身体をねじると、ふわふわしたものに鼻をくすぐられた。
くしゅん。
そのくしゃみで、はっきりと目が覚めた。
「あ……れ?」
そこは、明らかに自分の部屋の中ではなかった。
視界を塞いでいるのは、黒い斑点が入った金色の毛皮。
それがもぞもぞと動いたかと思うと、耳元をざらりとした温かなものがかすめていった。
「ひゃあ!」
小さな悲鳴を上げて逃げようとしたが、身体が鉛のように重くてまともに動けない。
かろうじて顔を上げると、金色の二つの瞳と目が合った。
オオヤマネコ!
この森で出会うのは愛らしい小動物ばかりだったから、こんなに大きな獣を見るのは初めてだった。
見るどころか、自分はその獣にもたれ掛かっており、黒い鼻先は間近にある。
どうしよう……。
あまりの恐ろしさに身体が竦む。
自分をじっと見つめる金色の瞳から目をそらすことすらできずにいると、いきなり頬をぺろりと舐められた。
「きゃああ! ごめんなさい、食べないで!」
思わず出たその台詞に、ぷっと吹き出すような気配。
「その子はヘルカ。おとなしい良い子だから、大丈夫。君を食べたりなんかしないよ」
続いて聞こえてきた声に、カティヤは恐る恐る顔を向けた。
すぐ近くに屈み込んでこっちを見ていたのは、白いシャツ姿の、銀色の長い髪を後ろで緩く三つ編みにした美しい……少年?
彼はカティヤと目が合ったとたん、トウヒの若葉を思わせる明るい緑の瞳を大きく目を見開いた。
「あなた……は、誰?」
そう問いかけても、凍ったように身動き一つしない少年を、カティヤは怪訝に思いながら見つめる。
さっき倒れていたのは小さな子どもだったが、今ここにいるのは、自分と同じぐらいの年頃の少年だ。
鼻筋の通った整った顔立ちはそっくりだが、頬が少しほっそりしていて、大人っぽい。
あの子が成長したら、きっとこんな感じになるだろうと思えた。
「そうだ! あの子は? あの子は無事なの?」
勢いで身を起こすと、自分の身体の上から、蔦の模様が入った青い布がするりと落ちた。
よく見ると、大きさは違うが、あの子が着ていた上着と同じものだ。
「さっきここに、小さな男の子が倒れていたの。これと同じ服を着ていて、あなたにそっくりな……。あの子がどこへ行ったのか、知らない?」
カティヤは言葉を続けたが、美しい少年は固まったままだ。
「もしかして、あなたの弟なんじゃないの? 本当に、あなたとそっくりだったのよ」
「…………」
「ねぇ、どうして固まっているの? 聞いてる?」
何度問いかけても、相手の耳には届いていないようだ。
ただ、大きく見開かれた緑の瞳が、自分の目を覗き込んでいる。
「ねぇってばっ!」
一日中休みなく走り回ったかのように全身が疲れ切っていたが、必死に手を伸ばして彼のシャツの袖を掴んだ。
しかし、そこで力付きで、彼の腕にがくりと倒れ込む。
ふわりと、深い森の緑の匂いがした。
とっさにカティヤを抱きとめた少年は、そこでようやく正気に戻ったらしい。
「……そうか。そういうことか。君は……」
耳元で聞こえた震える声は、しかし、カティヤの質問には全く答えていなかった。
「だからっ、あの子はどこ? 無事なの?」
「…………無事だよ」
ようやく聞きたかった答えを得ることができて、ほっと息をつく。
「よかった。じゃあ、あの子はもうお家に帰ったの?」
「……いや。ここにいる」
「え? どこ?」
カティヤは子どもの無事な姿が見たくて、辺りを見回そうとしたが、できなかった。
彼にいきなり強く抱きしめられて、驚きで息が止まりそうになる。
しかし彼の方はそれに全く気付かない様子で、カティヤの頭に愛おしそうに頬ずりしながら、ますます腕を締めてきた。
そして、嬉しそうな声で告げてくる。
「君が助けたのは僕だよ」
「や……めて。放して」
彼の言葉は謎だった。
けれども、同じ年頃の見知らぬ少年に抱きしめられている今の状況の方が、カティヤにはよほど信じられない。
必死に彼の腕を振りほどこうもがくが、全身に力が入らない状態だ。
少年に抵抗できるはずもなかった。
「君のおかげで、僕は助かったんだよ」
「何、言ってるの……よ。いいから、放して!」
「まさか、君がそうだったなんて」
「だから、放してって言ってるじゃない!」
嬉しそうに言葉を続ける少年に、カティヤが非力な抵抗を続けていると、地面に寝そべっていたヘルカがのそりと立ち上がった。
音も立てずに二人に近づいてくると、少年をいさめるように彼の背中に両前足をかけた。
「あ……ごめん。僕……」
少年は自分がしていることにようやく気付いて、慌てた様子で腕を緩めた。
「もおっ! 信じられないっ!」
「ごめん。つい……嬉しくて。本当にごめんね」
「ごめんじゃないわよ」
カティヤは憤慨しながら腕をつっぱって彼から離れると、その場にへたり込んだ。
「ごめんね。ごめんね」
少年は目の前に膝を付き、必死に謝罪を繰り返した。
「もしかして……あの……、怒ってる?」
上目遣いで顔を覗き込んでくるその瞳には強い不安が滲んでいる。
このまま腹を立て続けるのは、かわいそうなほどだ。
本当に、悪気はなかったらしい。
「……いいよ。もう」
そう伝えると、彼は「よかったぁ」と心底ほっとしたように、その場に座り込んだ。
そんな彼の背中を、ヘルカが身体をすり寄せながらぐるりと回った。
それから、元いた場所に移動して地面に横たわり、二人をじっと見つめてきた。
短い尾が誘うようにひらりと動く。
「うん。頼むよ」
彼はヘルカに小さく頷いて、カティヤを支えるようにして立ち上がった。
そして、ヘルカの体に預けるように座らせてくれた。
オオヤマネコの毛皮はふわふわで温かい。
不思議とお日さまのような匂いがする。
「ありがとう」
カティヤが頭を撫でてやると、ヘルカは嬉しげに目を細め喉をゴロゴロと鳴らした。
「ねぇ、あなたって、オオヤマネコが言ってることが分かるの?」
「……いや、言葉は分からないよ……もう。でも、長い付き合いだから、ヘルカの考えていることは分かるよ」
そう言って彼は少し寂しげに笑いながら、地面に落ちていた青い上着を拾い上げ、体の上にかけてくれた。
「寒くない? 夜は冷えるから」
「え? もう、夜なの?」
「うん。夕暮れの鐘が、もうずいぶん前に聞こえたよ」
「うそっ!」
カティヤは驚いて空を見上げた。
トウヒの葉の隙間から見える細切れの空は、言われてみれば、ほんのりと黄味を帯びていた。
その色から、まだ深夜ではなさそうだが、確かに夜だ。
今日は一年でいちばん昼の長い夏至。
夏場のこの地方は、一日中、太陽が沈むことがなく、夜でも明るい。
だから、時間の感覚が麻痺してしまう。
「どうしよう。きっとお兄ちゃんが心配してる。今日は、家から出ないようにって、言われていたのに……。きっと、こっぴどく叱られるわ」
普段は優しい兄だが、大柄な体格で目元に傷跡のある強面のせいもあって、怒ると身が縮み上がるほど怖いのだ。
「わたし、すぐに帰らなきゃ……」
慌てて身を起こしたものの、両腕を突っ張って上半身を支えるだけで精一杯だ。
立ち上がろうにも、足に全く力が入らなかった。
一刻も早く帰らなきゃならないのに、こんな状態ではどうしすることもできない。
「無理しちゃだめだよ」
心配そうな顔をした少年に軽く肩を押され、ぽすりとヘルカの腹に逆戻りする。
「でも、お兄ちゃんが心配してる」
「大丈夫だよ。トゥオモに、君のお兄さんを呼びに行かせたから」
「トゥオモ? ……って、誰?」
「この森でいちばん大きいフクロウだよ」
「そう、フクロウ…………は?」
「あいつはすごく賢いから、きっと君の兄さんを呼んできてくれる。思ったより時間がかかっているけど、心配しなくてもいいよ」
当たり前のことのように言いながらにっこり笑う少年に、カティヤは身体だけでなく、頭の中まで疲れ果てている気がした。
夢か現実かは分からないが、ヒイシの大群に出くわしたときから、今日という日はどうかしている。
倒れていた小さな子どもも、動物たちを操る目の前の少年も、まともに動けないほどに疲弊している自分も。
何もかもが謎めいていた。
だけど、きっと彼は何かを知っている。
そう確信したカティヤは、少年に詳しく話を聞いてみることにした。
でも、その前に。
「ねぇ、あなたの名前はなんていうの?」
その問いかけに、少年は困ったようにちょっと眉を寄せた。
「えぇと……ニュー…………ニューリ。そう、ニューリっていうんだ」
「ニューリね。わたしはカティヤよ」
自分の名前のはずなのに、答えに詰まる不自然さ。
しかし、挨拶として差し出した手を握った彼が、あまりにも嬉しそうに笑ったから、カティヤはそのことに気付けなかった。
カティヤは夢うつつの中で、ぼんやりと考えていた。
さっきの悪夢とは正反対の心地よさだ。
自分の粗末な固いベッドとはちがう、ふかふかで温かな感触。
髪を撫でる優しい手が、ときどき悪戯っぽく頬や鼻をつつく。
「あぁ、もう。お兄ちゃんったら、やめて」
幸せな気分でくすくす笑いながら軽く身体をねじると、ふわふわしたものに鼻をくすぐられた。
くしゅん。
そのくしゃみで、はっきりと目が覚めた。
「あ……れ?」
そこは、明らかに自分の部屋の中ではなかった。
視界を塞いでいるのは、黒い斑点が入った金色の毛皮。
それがもぞもぞと動いたかと思うと、耳元をざらりとした温かなものがかすめていった。
「ひゃあ!」
小さな悲鳴を上げて逃げようとしたが、身体が鉛のように重くてまともに動けない。
かろうじて顔を上げると、金色の二つの瞳と目が合った。
オオヤマネコ!
この森で出会うのは愛らしい小動物ばかりだったから、こんなに大きな獣を見るのは初めてだった。
見るどころか、自分はその獣にもたれ掛かっており、黒い鼻先は間近にある。
どうしよう……。
あまりの恐ろしさに身体が竦む。
自分をじっと見つめる金色の瞳から目をそらすことすらできずにいると、いきなり頬をぺろりと舐められた。
「きゃああ! ごめんなさい、食べないで!」
思わず出たその台詞に、ぷっと吹き出すような気配。
「その子はヘルカ。おとなしい良い子だから、大丈夫。君を食べたりなんかしないよ」
続いて聞こえてきた声に、カティヤは恐る恐る顔を向けた。
すぐ近くに屈み込んでこっちを見ていたのは、白いシャツ姿の、銀色の長い髪を後ろで緩く三つ編みにした美しい……少年?
彼はカティヤと目が合ったとたん、トウヒの若葉を思わせる明るい緑の瞳を大きく目を見開いた。
「あなた……は、誰?」
そう問いかけても、凍ったように身動き一つしない少年を、カティヤは怪訝に思いながら見つめる。
さっき倒れていたのは小さな子どもだったが、今ここにいるのは、自分と同じぐらいの年頃の少年だ。
鼻筋の通った整った顔立ちはそっくりだが、頬が少しほっそりしていて、大人っぽい。
あの子が成長したら、きっとこんな感じになるだろうと思えた。
「そうだ! あの子は? あの子は無事なの?」
勢いで身を起こすと、自分の身体の上から、蔦の模様が入った青い布がするりと落ちた。
よく見ると、大きさは違うが、あの子が着ていた上着と同じものだ。
「さっきここに、小さな男の子が倒れていたの。これと同じ服を着ていて、あなたにそっくりな……。あの子がどこへ行ったのか、知らない?」
カティヤは言葉を続けたが、美しい少年は固まったままだ。
「もしかして、あなたの弟なんじゃないの? 本当に、あなたとそっくりだったのよ」
「…………」
「ねぇ、どうして固まっているの? 聞いてる?」
何度問いかけても、相手の耳には届いていないようだ。
ただ、大きく見開かれた緑の瞳が、自分の目を覗き込んでいる。
「ねぇってばっ!」
一日中休みなく走り回ったかのように全身が疲れ切っていたが、必死に手を伸ばして彼のシャツの袖を掴んだ。
しかし、そこで力付きで、彼の腕にがくりと倒れ込む。
ふわりと、深い森の緑の匂いがした。
とっさにカティヤを抱きとめた少年は、そこでようやく正気に戻ったらしい。
「……そうか。そういうことか。君は……」
耳元で聞こえた震える声は、しかし、カティヤの質問には全く答えていなかった。
「だからっ、あの子はどこ? 無事なの?」
「…………無事だよ」
ようやく聞きたかった答えを得ることができて、ほっと息をつく。
「よかった。じゃあ、あの子はもうお家に帰ったの?」
「……いや。ここにいる」
「え? どこ?」
カティヤは子どもの無事な姿が見たくて、辺りを見回そうとしたが、できなかった。
彼にいきなり強く抱きしめられて、驚きで息が止まりそうになる。
しかし彼の方はそれに全く気付かない様子で、カティヤの頭に愛おしそうに頬ずりしながら、ますます腕を締めてきた。
そして、嬉しそうな声で告げてくる。
「君が助けたのは僕だよ」
「や……めて。放して」
彼の言葉は謎だった。
けれども、同じ年頃の見知らぬ少年に抱きしめられている今の状況の方が、カティヤにはよほど信じられない。
必死に彼の腕を振りほどこうもがくが、全身に力が入らない状態だ。
少年に抵抗できるはずもなかった。
「君のおかげで、僕は助かったんだよ」
「何、言ってるの……よ。いいから、放して!」
「まさか、君がそうだったなんて」
「だから、放してって言ってるじゃない!」
嬉しそうに言葉を続ける少年に、カティヤが非力な抵抗を続けていると、地面に寝そべっていたヘルカがのそりと立ち上がった。
音も立てずに二人に近づいてくると、少年をいさめるように彼の背中に両前足をかけた。
「あ……ごめん。僕……」
少年は自分がしていることにようやく気付いて、慌てた様子で腕を緩めた。
「もおっ! 信じられないっ!」
「ごめん。つい……嬉しくて。本当にごめんね」
「ごめんじゃないわよ」
カティヤは憤慨しながら腕をつっぱって彼から離れると、その場にへたり込んだ。
「ごめんね。ごめんね」
少年は目の前に膝を付き、必死に謝罪を繰り返した。
「もしかして……あの……、怒ってる?」
上目遣いで顔を覗き込んでくるその瞳には強い不安が滲んでいる。
このまま腹を立て続けるのは、かわいそうなほどだ。
本当に、悪気はなかったらしい。
「……いいよ。もう」
そう伝えると、彼は「よかったぁ」と心底ほっとしたように、その場に座り込んだ。
そんな彼の背中を、ヘルカが身体をすり寄せながらぐるりと回った。
それから、元いた場所に移動して地面に横たわり、二人をじっと見つめてきた。
短い尾が誘うようにひらりと動く。
「うん。頼むよ」
彼はヘルカに小さく頷いて、カティヤを支えるようにして立ち上がった。
そして、ヘルカの体に預けるように座らせてくれた。
オオヤマネコの毛皮はふわふわで温かい。
不思議とお日さまのような匂いがする。
「ありがとう」
カティヤが頭を撫でてやると、ヘルカは嬉しげに目を細め喉をゴロゴロと鳴らした。
「ねぇ、あなたって、オオヤマネコが言ってることが分かるの?」
「……いや、言葉は分からないよ……もう。でも、長い付き合いだから、ヘルカの考えていることは分かるよ」
そう言って彼は少し寂しげに笑いながら、地面に落ちていた青い上着を拾い上げ、体の上にかけてくれた。
「寒くない? 夜は冷えるから」
「え? もう、夜なの?」
「うん。夕暮れの鐘が、もうずいぶん前に聞こえたよ」
「うそっ!」
カティヤは驚いて空を見上げた。
トウヒの葉の隙間から見える細切れの空は、言われてみれば、ほんのりと黄味を帯びていた。
その色から、まだ深夜ではなさそうだが、確かに夜だ。
今日は一年でいちばん昼の長い夏至。
夏場のこの地方は、一日中、太陽が沈むことがなく、夜でも明るい。
だから、時間の感覚が麻痺してしまう。
「どうしよう。きっとお兄ちゃんが心配してる。今日は、家から出ないようにって、言われていたのに……。きっと、こっぴどく叱られるわ」
普段は優しい兄だが、大柄な体格で目元に傷跡のある強面のせいもあって、怒ると身が縮み上がるほど怖いのだ。
「わたし、すぐに帰らなきゃ……」
慌てて身を起こしたものの、両腕を突っ張って上半身を支えるだけで精一杯だ。
立ち上がろうにも、足に全く力が入らなかった。
一刻も早く帰らなきゃならないのに、こんな状態ではどうしすることもできない。
「無理しちゃだめだよ」
心配そうな顔をした少年に軽く肩を押され、ぽすりとヘルカの腹に逆戻りする。
「でも、お兄ちゃんが心配してる」
「大丈夫だよ。トゥオモに、君のお兄さんを呼びに行かせたから」
「トゥオモ? ……って、誰?」
「この森でいちばん大きいフクロウだよ」
「そう、フクロウ…………は?」
「あいつはすごく賢いから、きっと君の兄さんを呼んできてくれる。思ったより時間がかかっているけど、心配しなくてもいいよ」
当たり前のことのように言いながらにっこり笑う少年に、カティヤは身体だけでなく、頭の中まで疲れ果てている気がした。
夢か現実かは分からないが、ヒイシの大群に出くわしたときから、今日という日はどうかしている。
倒れていた小さな子どもも、動物たちを操る目の前の少年も、まともに動けないほどに疲弊している自分も。
何もかもが謎めいていた。
だけど、きっと彼は何かを知っている。
そう確信したカティヤは、少年に詳しく話を聞いてみることにした。
でも、その前に。
「ねぇ、あなたの名前はなんていうの?」
その問いかけに、少年は困ったようにちょっと眉を寄せた。
「えぇと……ニュー…………ニューリ。そう、ニューリっていうんだ」
「ニューリね。わたしはカティヤよ」
自分の名前のはずなのに、答えに詰まる不自然さ。
しかし、挨拶として差し出した手を握った彼が、あまりにも嬉しそうに笑ったから、カティヤはそのことに気付けなかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

【完結】百年に一人の落ちこぼれなのに学院一の秀才をうっかり消去しちゃいました
平田加津実
ファンタジー
国立魔術学院の選抜試験ですばらしい成績をおさめ、百年に一人の逸材だと賞賛されていたティルアは、落第を繰り返す永遠の1年生。今では百年に一人の落ちこぼれと呼ばれていた。
ティルアは消去呪文の練習中に起きた誤作動に、学院一の秀才であるユーリウスを巻き込んでしまい、彼自身を消去してしまう。ティルア以外の人の目には見えず、すぐそばにいるのに触れることもできない彼を、元の世界に戻せるのはティルアの出現呪文だけなのに、彼女は相変わらずポンコツで……。
野良竜を拾ったら、女神として覚醒しそうになりました(涙
中村まり
恋愛
ある日、とある森の中で、うっかり子竜を拾ってしまったフロル。竜を飼うことは、この国では禁止されている。しがない宿屋の娘であるフロルが、何度、子竜を森に返しても、子竜はすぐに戻ってきてしまって!
そんなフロルは、何故か7才の時から、ぴたりと成長を止めたまま。もうすぐ16才の誕生日を迎えようとしていたある日、子竜を探索にきた騎士団に見つかってしまう。ことの成り行きで、竜と共に城に従者としてあがることになったのだが。
「私って魔力持ちだったんですか?!」
突然判明したフロルの魔力。 宮廷魔道師長ライルの弟子となった頃、フロルの成長が急に始まってしまった。
フロルには、ありとあらゆる動物が懐き、フロルがいる場所は草花が溢れるように咲き乱れるが、本人も、周りの人間も、気がついていないのだったが。
その頃、春の女神の生まれ変わりを探し求めて、闇の帝王がこちらの世界に災いをもたらし始めて・・・!
自然系チート能力を持つフロルは、自分を待ち受ける運命にまだ気がついていないのだった。

私のアレに値が付いた!?
ネコヅキ
ファンタジー
もしも、金のタマゴを産み落としたなら――
鮎沢佳奈は二十歳の大学生。ある日突然死んでしまった彼女は、神様の代行者を名乗る青年に異世界へと転生。という形で異世界への移住を提案され、移住を快諾した佳奈は喫茶店の看板娘である人物に助けてもらって新たな生活を始めた。
しかしその一週間後。借りたアパートの一室で、白磁の器を揺るがす事件が勃発する。振り返って見てみれば器の中で灰色の物体が鎮座し、その物体の正体を知るべく質屋に持ち込んだ事から彼女の順風満帆の歯車が狂い始める。
自身を金のタマゴを産むガチョウになぞらえ、絶対に知られてはならない秘密を一人抱え込む佳奈の運命はいかに――
・産むのはタマゴではありません! お食事中の方はご注意下さいませ。
・小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
・小説家になろう様にて三十七万PVを突破。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】炎輪の姫巫女 〜教科書の片隅に載っていた少女の生まれ変わりだったようです〜
平田加津実
ファンタジー
昏睡状態に陥っていった幼馴染のコウが目覚めた。ようやく以前のような毎日を取り戻したかに思えたルイカだったが、そんな彼女に得体のしれない力が襲いかかる。そして、彼女の危機を救ったコウの顔には、風に吹かれた砂のような文様が浮かび上がっていた。
コウの身体に乗り移っていたのはツクスナと名乗る男。彼は女王卑弥呼の後継者である壱与の魂を追って、この時代に来たと言うのだが……。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる