【完結】炎輪の姫巫女 〜教科書の片隅に載っていた少女の生まれ変わりだったようです〜

平田加津実

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民衆の前に降り立つ希望

エピローグ 炎輪の女王壱与

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 邪馬台国の宮の中央にある主祭殿の扉が、重い音を立てて左右に大きく開かれた。
 真っ正面から差し込む太陽の光が眩しい。

 扉の外に新しく作られた舞台の左右に、倭国二十八国の首長やその名代がずらりと顔を揃えている。
 伊邪国の新王ミズミタや、己百支国王名代の第四王子の姿も見える。

 建物の周りを黒く取り囲んでいるのは、何千人もの民衆だ。
 城柵内に入りきれなかった人々が、宮の外まで溢れていた。

 繊細な細工が施された金の宝冠が、陽の光を複雑に弾いている。
 茜色の大袖に光に透ける領巾を纏わせ、白い裳を長く引きずった姫巫女が、うねるようなざわめきの中、ゆっくりと舞台の中央に進み出ていった。

 生成りの筒袖に紺青の腰帯を締めた正装のツクスナとヤナナが、磨き上げられた祭祀用の青銅の大剣を手にして後に続く。
 彼らは姫巫女から少し距離を置いて立ち止まり、剣を床に突き立てて片膝を折った。

 舞台の端に背筋を伸ばして立った姫巫女が、両手をすっと前に差し伸べた。
 その小さな手の上に、突如として金色の炎が燃え上がる。
 炎は大きく渦巻いて回転し、真っ正面に輝く太陽を、そのまま手の上に移してきたかのような眩い火球となった。

 掌に炎の玉を浮かび上がらせた少女の姿は、まさしく、光り輝く太陽の化身だった。

 これだけ大勢の人がいるというのに、水を打ったような静けさが広がっている。
 吹き抜ける風が、黄色く染まり始めた波波迦の葉をさらさらと揺らしていく。

 ——この国で、イヨとして生きていく。

 その決意を新たにし、ルイカが顎を上げて宙を睨むと、金色の輝きがその瞳に鮮やかに映り込んだ。



 ルイカの後ろに控えていたツクスナが、そっと目を上げた。

 二つの太陽の完全な逆光になった後ろ姿は濃い影になり、金色の煌めきに縁取られている。
 両腕に掛けられた領巾がはためき、光の色に染まっている。
 風に流される長い髪は細い金の糸だ。

 その凛とした厳かな姿に、ツクスナが眩しそうに目を細めた。
 そして、口元に微かな笑みを乗せ、眼を伏せた。



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