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『月明かり』VS……
じゃじゃーん
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駆けつけた騎士団により、男たちは捕縛された。
男たちは冒険者崩れで、王都外から来た冒険者との問題を、これまでも少なからず起こしていたらしい。
アマタも一緒に連行されそうになったが、慌てて駆けつけたエイミーによって、その場の事情聴取のみで解放された。
あまり悪目立ちするな、そう言うと、エイミーは職務に戻って行った。
アマタたちは気を取り直し、今度こそ、と意気込んで、目的の店へと入って行った。
“染み渡る幸せ亭“、の料理は絶品であった。
魚料理は、素材の持ち味を生かし、かつ少しスパイスを効かせたスペイン料理に近く、麺は歯応えのある仕上がりで、イタリアンに近かった。
クロは、やたらと甲殻類のようなものを食べていたが、アレルギーは大丈夫なんだろうか。
この世界の猫は平気なのか、それともクロだから問題無しなのか。
恐らく後者であろう、アマタはそう勝手に納得した。
満足過ぎる程に、王都での食事を堪能したアマタたちは、レイラが用意してくれた宿屋に向かった。
「え? こんなとこ良いのかな??」
まず到着時に、ちょっとした城のような外観に、アマタとルルは面食らった。
そして部屋に案内され、装飾や調度品の、あまりの煌びやかさを目の当たりにし、2発目の大ダメージを受けた。
「これは凄いな……」
アマタもルルの横で、目の前の光景に驚き、口を大きく開ける。
そんな2人の足元をすり抜け、クロは躊躇う事無く、部屋の中へと進んで行く。
「お、おい。クロ。」
アマタたちは、堂々とした態度のクロを慌てて追いかけた。
その後2人は、ふんわりもっちりなソファに座り、明日の王女への謁見について話をした。
いくら王女がお忍びで来るとは言え、国の権力者の1人である事に変わりはない。
最低限の作法くらいなら何とかなりそうではあるが、それ以上の、特に王族への礼儀など、アマタには思い付きもしなかった。
無駄に不敬罪なんか食らったら、たまったもんじゃない、と言うアマタに、
「私だって礼儀作法なんて知らないよぉ……」
困ったようにルルは答える。
ルルは、高級宿屋の雰囲気に緊張しているのか、いつも以上に、アマタに、ピタッ、と引っ付いている。
王女はきっと、こちらの状況は全て知っている。
情報はレイラ経由で筒抜けになっているはずである。
ならば、多少の事には目を瞑ってくれるだろう。
万一失態を犯した場合には、その時は諦めて、逃げよう!
そう言って笑うアマタに、釣られてルルも笑う。
(やれやれ、仕方ないの。)
「ん? ルル、何か言ったか?」
気のせいか、と思いつつも、一応アマタはルルに問う。
「え? 私じゃないよ! 私にも聞こえたし!」
そう答えた後、ルルはキョロキョロと周りを見回す。
「もしかして……オバケ??」
サーっ、と顔に青筋を立てるルル。
(アマタ、ルル、驚くで無いぞ??)
再び頭の中に響いた声に、立ち上がろうとするアマタであったが、恐怖に飛び上がり、そのままコアラのようにしがみ付いて来たルルによって、動きを阻まれる。
「アマタくんっ!!」
ギリギリと腕を締め付ける痛みに耐えながら、ルルの背中を摩るアマタ。
(声は俺たちの名前を呼んだ……)
アマタたちには、悲しいかな、知り合いが少ない。
もちろん、日々の生活や仕事の中で接する人間は居るが、親しく接する人間は限られている。
そんなアマタたちの名前を親しげに呼ぶ声。
そして、声は驚くな、と言った。
それはつまり、驚くような事が起きる、と言う事である。
アマタがそんな事を考えていると、
「ニャァン」
不意にクロが鳴き声を上げる。
パッ、とクロに目を向けるアマタ。
クロの体は、薄く青白い光に、ぼんやりと覆われている。
「え? クロちゃん!?」
何故か光り出したクロを見て、ルルは慌てた声を上げる。
クロを包む光は段々と強くなり、白い光の球体になる。
クロの姿はもう見えない。
真っ白な光の玉は、ゆっくりと大きくうねり始め、少しずつ形を変えていく。
アマタもルルも、ただ固唾を飲んで見守った。
一体何が起きているのかさえも、2人には分からなかった。
やがて、クロであったはずのものは、星のような形になると、パッ、と一気に光を放つ。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
突然の強い光に目が眩むアマタとルル。
目を閉じながらも、ルルを抱き寄せ、庇う体制を作ると、アマタは、浄化魔法と、再生魔法を同時に発動する。
ただの状態異常であれば、浄化魔法で良いのだが、あまりの強い光に、網膜が焼かれている可能性もある。
そう考え、アマタは魔法を二重掛けしたのであった。
「ルル! 大丈夫か??」
自分の目が回復している事を確かめ、アマタはルルに確認する。
「う、うん。大丈夫。ありがとう。」
アマタとルルは目を合わせ、お互いに、ホッ、と胸を撫で下ろす。
それからすぐに、今起きた事を思い出し、振り返ると、クロが居たはずの場所に目をやる。
「お、おい……」
「クロちゃん? う、うそ……」
唖然としたアマタとルルは、か細い声しか出ない。
「じゃじゃーん!!」
そこには、左手は腰に当て、右手をグーにして突き上げる、ルルよりも背が低い少女が、アマタとルルに満面の笑みを見せていた。
男たちは冒険者崩れで、王都外から来た冒険者との問題を、これまでも少なからず起こしていたらしい。
アマタも一緒に連行されそうになったが、慌てて駆けつけたエイミーによって、その場の事情聴取のみで解放された。
あまり悪目立ちするな、そう言うと、エイミーは職務に戻って行った。
アマタたちは気を取り直し、今度こそ、と意気込んで、目的の店へと入って行った。
“染み渡る幸せ亭“、の料理は絶品であった。
魚料理は、素材の持ち味を生かし、かつ少しスパイスを効かせたスペイン料理に近く、麺は歯応えのある仕上がりで、イタリアンに近かった。
クロは、やたらと甲殻類のようなものを食べていたが、アレルギーは大丈夫なんだろうか。
この世界の猫は平気なのか、それともクロだから問題無しなのか。
恐らく後者であろう、アマタはそう勝手に納得した。
満足過ぎる程に、王都での食事を堪能したアマタたちは、レイラが用意してくれた宿屋に向かった。
「え? こんなとこ良いのかな??」
まず到着時に、ちょっとした城のような外観に、アマタとルルは面食らった。
そして部屋に案内され、装飾や調度品の、あまりの煌びやかさを目の当たりにし、2発目の大ダメージを受けた。
「これは凄いな……」
アマタもルルの横で、目の前の光景に驚き、口を大きく開ける。
そんな2人の足元をすり抜け、クロは躊躇う事無く、部屋の中へと進んで行く。
「お、おい。クロ。」
アマタたちは、堂々とした態度のクロを慌てて追いかけた。
その後2人は、ふんわりもっちりなソファに座り、明日の王女への謁見について話をした。
いくら王女がお忍びで来るとは言え、国の権力者の1人である事に変わりはない。
最低限の作法くらいなら何とかなりそうではあるが、それ以上の、特に王族への礼儀など、アマタには思い付きもしなかった。
無駄に不敬罪なんか食らったら、たまったもんじゃない、と言うアマタに、
「私だって礼儀作法なんて知らないよぉ……」
困ったようにルルは答える。
ルルは、高級宿屋の雰囲気に緊張しているのか、いつも以上に、アマタに、ピタッ、と引っ付いている。
王女はきっと、こちらの状況は全て知っている。
情報はレイラ経由で筒抜けになっているはずである。
ならば、多少の事には目を瞑ってくれるだろう。
万一失態を犯した場合には、その時は諦めて、逃げよう!
そう言って笑うアマタに、釣られてルルも笑う。
(やれやれ、仕方ないの。)
「ん? ルル、何か言ったか?」
気のせいか、と思いつつも、一応アマタはルルに問う。
「え? 私じゃないよ! 私にも聞こえたし!」
そう答えた後、ルルはキョロキョロと周りを見回す。
「もしかして……オバケ??」
サーっ、と顔に青筋を立てるルル。
(アマタ、ルル、驚くで無いぞ??)
再び頭の中に響いた声に、立ち上がろうとするアマタであったが、恐怖に飛び上がり、そのままコアラのようにしがみ付いて来たルルによって、動きを阻まれる。
「アマタくんっ!!」
ギリギリと腕を締め付ける痛みに耐えながら、ルルの背中を摩るアマタ。
(声は俺たちの名前を呼んだ……)
アマタたちには、悲しいかな、知り合いが少ない。
もちろん、日々の生活や仕事の中で接する人間は居るが、親しく接する人間は限られている。
そんなアマタたちの名前を親しげに呼ぶ声。
そして、声は驚くな、と言った。
それはつまり、驚くような事が起きる、と言う事である。
アマタがそんな事を考えていると、
「ニャァン」
不意にクロが鳴き声を上げる。
パッ、とクロに目を向けるアマタ。
クロの体は、薄く青白い光に、ぼんやりと覆われている。
「え? クロちゃん!?」
何故か光り出したクロを見て、ルルは慌てた声を上げる。
クロを包む光は段々と強くなり、白い光の球体になる。
クロの姿はもう見えない。
真っ白な光の玉は、ゆっくりと大きくうねり始め、少しずつ形を変えていく。
アマタもルルも、ただ固唾を飲んで見守った。
一体何が起きているのかさえも、2人には分からなかった。
やがて、クロであったはずのものは、星のような形になると、パッ、と一気に光を放つ。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
突然の強い光に目が眩むアマタとルル。
目を閉じながらも、ルルを抱き寄せ、庇う体制を作ると、アマタは、浄化魔法と、再生魔法を同時に発動する。
ただの状態異常であれば、浄化魔法で良いのだが、あまりの強い光に、網膜が焼かれている可能性もある。
そう考え、アマタは魔法を二重掛けしたのであった。
「ルル! 大丈夫か??」
自分の目が回復している事を確かめ、アマタはルルに確認する。
「う、うん。大丈夫。ありがとう。」
アマタとルルは目を合わせ、お互いに、ホッ、と胸を撫で下ろす。
それからすぐに、今起きた事を思い出し、振り返ると、クロが居たはずの場所に目をやる。
「お、おい……」
「クロちゃん? う、うそ……」
唖然としたアマタとルルは、か細い声しか出ない。
「じゃじゃーん!!」
そこには、左手は腰に当て、右手をグーにして突き上げる、ルルよりも背が低い少女が、アマタとルルに満面の笑みを見せていた。
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