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第二百四十六話 それで、カイルナさん。抜け駆けとはどういうことでしょうか?
しおりを挟む「イサミさん、ありがとうございます。こちら、預かりますね」
「あ、どうも」
ドリミーア王女が部屋からでてきてお盆ごとイサミからケトルを受け取って部屋に届けた。
勇も部屋に戻りカイルナが続こうとするとドリミーア王女が現れ外に戻す。
「それで、カイルナさん。抜け駆けとはどういうことでしょうか?」
ドリミーア王女は努めて笑顔で、だが凄みを持ってカイルナに迫った。
「な、なんの話かしら…………」
カイルナは思わず押されて顔を逸らす。
「とぼけないでください。わたしに無断でイサミさんを独り占め、しようとしましたよねぇ?」
ドリミーア王女はその返答などものともせず低い声で問い続けた。
まるで悪夢のような恐ろしい顔にカイルナは息を飲む。
「してないわよ、そんな卑怯なまね…………」
「声が、うわずってますよ。はあ…………、彼はわたしとあなたとの共同財産と昔から言ってるじゃないですか?なのに、なんて真似してるんですかぁ?」
ドリミーア王女は言い切るとため息をついてから脅すように続けた。
「む…………。でもこうでもしないとあいつ、その気にならないわよ」
カイルナは冷静に言い返す。
「なら、彼が本当にその気になったらわけてくださいますね」
「当然じゃない。わたし達、親友でしょ」
カイルナは穏やかに答えた。
「ありがとうございます。カイルナさん、ずっと一緒にいてくださいね」
そこでドリミーア王女も穏やかになる。
カイルナと同じように貴族でありながら気取らず勇者になるような予感がし惹かれていたのは彼女も同様だったのである。
その気持ちを共有するがゆえにもしその時のがくれば共にイサミを手にしようと誓い合ったのだ。
そして抜け駆けや独り占めは厳禁というのも二人の約束である。
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