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第七十四話
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その事件は王家の一家が勇達のいるハーデルト王国を外遊中に盗賊に襲われた結果なことだ。母親に抱かれていた末の子供である赤ん坊は母親ごと襲われ飛んで行ってしまったのだ。川の近くを通っていたため赤ん坊は川に赤ん坊が落ちたとも言われている。
民衆、冒険者、軍隊、ハーデルト王国総出で探しても赤ん坊は現れず悲痛な言い伝えとなる。そのため現代でも有名であり勇も知っていたのだ。
そのことで同じ時期に教会に拾われたエルハをリンネ達がじっと見る。
「いや、違うと思うんですけど…………」
エルハは思わぬ疑いに首を傾げた。行方不明になった自分が王族の一人など彼女には信じられないのだ。昔から一介の孤児として育ってきたためその実感も予感もまるでなかった。
憧れの後輩の婚約者になり王族と繋がりになれだけでもすごいのに自身も元から王族と言われても聞き入れられないのだ。
「なにか親の手がかり的なのないのかよ」
クリム王女が気になりさらに尋ねる。
「うーん。強いて言うなら、これだと思います。拾われた時に身につけてたみたいで」
エルハが取り出したのは十字に星のついたペンダントだった。
「あ、それセルスティネの紋章じゃねえか!マジで例の行方不明のやつぽいぞ!」
クリム王女はその形状に衝撃を受ける。王女である彼女は他の国の紋章を担当の者から教えられており認識可能なのだ。
「ほんとだ。これ、王家やお城の関係者しか持てないものだから本物なら本当に王族ってことになるよ」
アステリア王女もそれを確かめると目を見開いた。
「偽物なら、どうなりますかね…………」
エルハはそれでも自分が王族だと信じたくないと苦笑いする。
「不敬罪で逮捕」
にこやかにアステリア王女は残酷な事実をつきつけた。
「そう、ですか…………」
エルハは顔が青くなる。本物になるのも恐ろしいし、不敬罪で逮捕も恐ろしいという二重の恐怖に逃れられない板挟みに逢ってしまった。もはや袋小路も同然、不敬罪になれば処刑されることもあると聞く、いっそのこと王族なら楽なものだと納得することにする。
民衆、冒険者、軍隊、ハーデルト王国総出で探しても赤ん坊は現れず悲痛な言い伝えとなる。そのため現代でも有名であり勇も知っていたのだ。
そのことで同じ時期に教会に拾われたエルハをリンネ達がじっと見る。
「いや、違うと思うんですけど…………」
エルハは思わぬ疑いに首を傾げた。行方不明になった自分が王族の一人など彼女には信じられないのだ。昔から一介の孤児として育ってきたためその実感も予感もまるでなかった。
憧れの後輩の婚約者になり王族と繋がりになれだけでもすごいのに自身も元から王族と言われても聞き入れられないのだ。
「なにか親の手がかり的なのないのかよ」
クリム王女が気になりさらに尋ねる。
「うーん。強いて言うなら、これだと思います。拾われた時に身につけてたみたいで」
エルハが取り出したのは十字に星のついたペンダントだった。
「あ、それセルスティネの紋章じゃねえか!マジで例の行方不明のやつぽいぞ!」
クリム王女はその形状に衝撃を受ける。王女である彼女は他の国の紋章を担当の者から教えられており認識可能なのだ。
「ほんとだ。これ、王家やお城の関係者しか持てないものだから本物なら本当に王族ってことになるよ」
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「偽物なら、どうなりますかね…………」
エルハはそれでも自分が王族だと信じたくないと苦笑いする。
「不敬罪で逮捕」
にこやかにアステリア王女は残酷な事実をつきつけた。
「そう、ですか…………」
エルハは顔が青くなる。本物になるのも恐ろしいし、不敬罪で逮捕も恐ろしいという二重の恐怖に逃れられない板挟みに逢ってしまった。もはや袋小路も同然、不敬罪になれば処刑されることもあると聞く、いっそのこと王族なら楽なものだと納得することにする。
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