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第三十七話姫の夢は勇者との結婚

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  好き放題言われた勇は眉を潜める。が、クリムという赤いツインテールの姫に抱きつかれて悪い思いはしなかった。



「で、クリムちゃんはどうして俺と結婚しようと思ったの?伝説だから?親に言われたから?」



   勇はもはや相手が王女でも物怖じせずに聞く。



「違うっつうの!あたしをそんな考えなしの馬鹿なやつと一緒にするなよ!ほんと生意気だよなお前」



    クリム王女は見当違いな話にむっとした。



「じゃあなに?」

 

「そりゃあお前、伝説の勇者様と結婚できるなら王女として本望だろ!」



     クリムは二パーっと満面の笑みで言った。さながらその顔は男子に近くドレスとツインテールとのギャップに勇は目がチカチカした。



   だがふと違和感が出た。



「女の子て、勇者と結婚するのが普通の夢なの?」



「違うよ。そもそもあんな伝説、王家にしか伝わってないし」



    勇の疑問にアステリア王女がキッパリと答える。



「そりゃあまたー、マニアックな夢だね」



    勇は神妙な顔になる。



「あー、普通の女子なら素敵な殿方と結ばれたいてものじゃないかしら」



「あ、大体分かった。普通だね」



    リンネの補足で勇は納得した。



「普通って言うな!女の子って付けろよクソ勇者!ほんと生意気だなお前ー」



   クリムはつくづく心外だとグルルと唸る。その仕草は子供っぽくアステリア王女にはない魅力となった。



「ごめん、気をつけるよ」



    もはやクソだの生意気だの言われても勇はあまり気にならない。



   だが勇の顔が見えないリンネはその侮辱にさらに怒りが溜まった。



「てか勇者てそんなすごいの?勇者がいないと駄目な世界の危機なんて今やっと来たくらいでしょ?」



    勇は勇者という存在にすら疑問を持つ。



「だからだろ。1000年、いや10000年に一人の逸材と結婚できるなんてありえねえだろ!」



「う、うん」



    クリム王女の目は野生の動物のようにキラキラしており勇は神妙になった。女の子の夢と語っていながらやはり歪だ。



    ボーイッシュ女子というのは悪くないが彼女のそれはハイレベルだと勇は実感した。
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