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第三十一話転生前後の記憶
しおりを挟む「あと勇者になりたいて言ってたことですわ。騎士学校に行ったのも勇者になるためですもの」
「うんうん、わたしのところにきた時も勇者になりたいって言ってたもん」
勇者になりたいという話題にエルハはまた共感する。
「へえ、それ、いつから言ってたの?」
かなり昔の話なためアステリア王女は興味をそそられる。
「物心ついたころですわね」
「いや、生まれたころじゃないですかね」
リンネの言葉をケイネスが訂正する。
「それは言いすぎですよー」
「いや、ほんとかもしれない」
アステリア王女は笑うが勇は真面目に受け止める。
この世界の話では少なくともそんな気がしていた。だが逆に転生する前の世界では考えてなかった。RPGの勇者に憧れてはいたが大したことではない。
死ぬ前までそんな気毛頭ないはずだ。ボール遊びをする幼い少女を助けトラックに轢かれるその瞬間さえもだ。
記憶が戻った直後の前日はあやふやな部分があったが睡眠を取ったことで転生の前後も鮮明に思い出せるようになった。
その時にクロスデバイスを託したのと同じ声がしたのを思い出した。緑髪に緑ドレスの得体の知れない女だ、いわゆるよくある小説でこういう時に現れる女神というには胡散臭いオーラを放っていた。
その女はこう言った。
「君は面白い、勇者になり魔王を倒せ。世界を、救え」
「いや、何言ってるか分かんない。断るし」
「いいのか?勇者になれば王女にもモテるぞ」
「よし、やるか」
その言葉で安易に受けてしまったのが悔やまれ頭を抱えた。
記憶こそ前日に戻ったが潜在的には残っておりそれが口癖になっていたのだ。
「え、ほんとに?」
真剣な顔な勇を見るとリンネが信じられないという顔をした。
「やだなあ、乗ってみただけだよ」
「そ、そう」
勇は笑って誤魔化す。
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