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<エピローグ>
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「ようこそ、ミカエラちゃん。お父上が戻ってくるまで、何をして遊ぼうか?」
三歳の幼女を置いていかれて、戸惑うように顔を見合わせる兄達を横目に、七歳のダリウスはしゃがみ込んで、ミカエラと目線を合わせた。
「おしめたまごっこ!」
「お姫様ごっこ?判った。じゃあ、ミカエラちゃんがお姫様だね。僕は、何をすればいい?王子様?それとも騎士かな?」
ミカエラは、む、と口先を尖らせて、短い腕を組むと、胸を反らす。
「ちあう!ミカ、おおじたま!おにいちゃん、おしめたま!」
幼いミカエラは、まだ自分の名をきちんと呼べずに、『ミカ』と言っていた。
「え…僕、が、お姫様?」
ダリウスが、目を白黒させると、ミカエラは満足そうに、うんうん、と頷く。
「でも、お姫様は女の子だよ。王子様は男の子だし」
ダリウスが親切のつもりで教えると、ミカエラはぷくりと頬を膨らませる。
ただでさえ丸い頬が、落っこちてしまいそうだ。
「いいの!うそんこなんだから!ミカ、おおじたましゅるの!おにいちゃん、おしめたまだから、ねんねちて。おしめたまは、おちろでねむってるのよ」
「お城で眠るお姫様…あぁ、眠り姫だね」
戸惑いながらも、ダリウスはミカエラに手を引かれるままに、薔薇の木の下へとやって来ると、芝の上にそっと横たわった。
外で横になった事など、一度もない。
服が汚れる事が気になるけれど、幼いミカエラに「出来ない」とは言えなかった。
泣かれでもしたら、どうしていいか判らない。
「えぇと…僕は、此処で寝ていればいいの?」
「あい!ねんねちて!」
「判ったよ…」
昨夜も遅くまで教本を読んでいたから、仰向けになると日の光が眩しい。
目を閉じると、脳内をぐるぐると大人達の言葉が回る。
兄ユリシーズの優秀さ、姉オーレリアの聡明さを褒め称える教師達。
ダリウスだって、努力はしている。
なのに、彼等はいつも、ダリウスを褒めているつもりなのか、兄と姉を引き合いに出す。
「流石、優秀なユリシーズ様の弟君ですな!」
「姉君のオーレリア様とよく似て、聡明でいらっしゃる」
人懐こく、初対面の人間であっても直ぐに懐に入れる兄は、愛想がよいだけではなく、文武共に優秀だ。
一見すると嫋やかながら、母に似て芯の強い姉は、曲がった事を許さない一方で、波風を立てずに相手を懐柔する聡明さがある。
兄の事も姉の事も、好きだ。
けれど、兄達を尊敬しているからこそ、彼等を引き合いに出して賞賛されると、自分は彼等の紛い物に過ぎず、『ダリウス』には価値がないのではないか、と言う不安から逃れる事が出来ない。
ダリウスは、自分が人見知りで無愛想で話下手と言う自覚がある。
兄や姉を真似ようと思っても、どうしても上手く出来ない。
このままでは、ノーレイン公爵家に相応しくない。
もっと、学ばなくては。
もっと、努めなくては。
もっと。
もっと…。
疲れた、と思う。
けれど、此処で立ち止まると、兄達との埋めがたい距離が更に開いてしまいそうで、怖い。
もう二度と立ち上がれなくなりそうで、怖い。
周囲の期待に応えられないのが、怖い。
兄と姉の弟なのだから、もっともっと出来る筈だ。
出来なくては、ならないのだ。
ミカエラの相手をしているのも、理想的な貴公子ならば、自分よりも小さな子供の相手をするものだろう、と思ったからだ。
周囲の人間からの目が、気になる。
だが、子供の遊び相手に戸惑っているのは、何も兄達ばかりではない。
ダリウスもだ。
お陰で、冷たい土の上に横たわる羽目になった。
遠くで、幼い声がする。
跳ねるような声に耳を澄ませてみると、
「やや!これがうわしゃのいばらのちろか!しめたま、しゅぐにまいりましゅ!」
回らない舌で、懸命に台詞らしきものを話している。
楽しそうだな。
怖いものなど、何もないのだろう。
あの子の目には、この世界はどのように映っているのか。
先程まで、この庭は、何の変哲もない単なる庭だった。
丁寧に芝が刈り揃えられ、手入れされた美しい薔薇の咲く庭。
けれど、ミカエラの前には、茨に囲われた高い尖塔を持つ城があるらしい。
「わるいどらごんめ!しめは、ぼくがたしゅける!」
はぁぁぁぁ!だか、ほわぁぁぁ!だか判らないけれど、気合を入れる声がしたかと思うと、
「くぅ!まけないじょ!とぉ!てぁ!でゅくし!」
何やら擬音までつけて、戦っている。
地面が微かに揺れるのは、ミカエラが飛んだり跳ねたり大騒ぎしながら、戦いに興じているからだろう。
ミカエラは、「うそんこ」だと言っていた。
夢想と現実の境が判らないわけではない。
遊びは遊びなのだ、と理解した上で、全力で遊んでいる。
「おぉ、うちゅくちいしめよ。おちてくだしゃい」
漸く、静かになった。
直ぐ傍で声が聞こえたと思うと、額に柔らかく温かなものが、ふにりと押し付けられる。
その感触に驚いて目を開けたダリウスの前に、満足そうな笑みを浮かべたミカエラがいた。
「君、今、僕に、」
「ちゅう、ちたの!おしめたまは、ちゅうでおっきしゅるの!おにいちゃん、おっきちて!」
満面の笑み、キラキラと輝く瞳。
教養の為に学んでいるどんな宝石よりも美しい輝きに、ダリウスは目を奪われた。
額に汗を滲ませて息を弾ませながら、頬を真っ赤に紅潮させて、ミカエラは笑う。
太陽にきらりと反射する青味がかった銀髪は、ただでさえ癖っ毛なのに、もつれてくしゃくしゃになっていた。
頬には泥汚れがつき、可愛らしいドレスは何処に引っ掛けたものか、鉤裂きが出来ている。
『普通の』令嬢ならば、泣き出しても仕方ない状況なのに、ミカエラは、嬉しそうに笑っている。
「たのちいねぇ!」
何て、澄んだ瞳なのだろう。
何処までも深く、吸い込まれてしまいそうだ。
この子の目には、どんな世界が見えているのだろうか。
それは、僕の知る世界とは、違うのだろうか。
…見て、みたい。
これまでのダリウスは、周囲の期待に応えなくては、と自らを追い込んでいた。
自分から、「こうありたい」と願った事は一度もなく、目に見えない圧に追い立てられていただけだ。
だから、生まれて初めて自ら抱き、心の奥底から湧き起こった願いに戸惑う。
けれど、その戸惑いは決して不快なものではなくて、見知らぬ世界への期待と、ワクワクした気持ちが湧き起こる。
楽しい、か。
口の中で小さく呟くと、思い切って顔を上げる。
「…ねぇ、今度はミカエラちゃんが、お姫様をやってくれる?」
「あい!」
それから、ダリウスは、生まれて初めて、泥だらけになって転げ回った。
役柄は、ころころと変わる。
遊びの中で、ダリウスは自由で、何にでもなれた。
大声を出して笑い、全身を使って怪物になり、躊躇なく蹴りやパンチを入れて来るミカエラを優しく往しながら、やられた振りをする。
「うそんこ」なのだから、みっともなくても、負けても、現実のダリウスには関係がない。
恥ずかしくも、悔しくも、思わなくていい。
それで、いいのだ。
眠り姫になったミカエラは、薄目を開けて身動きを堪える為にプルプル小さく震えながら、ちっちゃな両手で口を抑え込んでいる。
その下から、ぷくく、と笑い声が聞こえるのに気づかない振りをして、ダリウスはミカエラの額に優しくキスをした。
唇を離すよりも早く、待ちきれずにパッと目を開けて満面の笑みを浮かべるミカエラに、何とも形容し難い温かな気持ちで胸一杯になった。
遊び疲れる、と言う初めての体験に感慨深いものを感じていると、隣で大はしゃぎしていたミカエラの声が、突然聞こえなくなった事に気が付く。
「ミカエラ?」
「……すぅ」
ミカエラは、座ったまま、眠り込んでいた。
地面に倒れ伏しそうな体を慌てて抱き上げると、あんなに暴れ回っていたのに、七歳のダリウスでも抱えられる位、想像以上に軽く、柔らかい。
幼い子供の、自分よりも高い体温。
甘く優しい香り。
ふに、と肩に押し付けられた頬の膨らみ。
胸の中に湧き上がったものを言葉にするなら、愛おしさだった。
生きている。
この子は、全身全霊で生きている。
生きる事は、こんなにも楽しいのか。
世界は、こんなにも美しかったのか。
この日、ダリウスの世界が変わった。
***
『もしも、あの時、あの決断をしていなければ』。
私にとっては、二十五歳のあの日が岐路だった。
名ばかりの夫と別れる決断をしなければ。
心から慕っている人の手を取る決断をしなければ。
私はきっと、今の幸せを手にする事は出来ていない。
幸せは、決して向こうから歩いて来てはくれない。
ならば、そう。
こちらから、迎えに行けばいい。
自分の幸せは、自分にしか生み出す事は出来ないのだから。
END
三歳の幼女を置いていかれて、戸惑うように顔を見合わせる兄達を横目に、七歳のダリウスはしゃがみ込んで、ミカエラと目線を合わせた。
「おしめたまごっこ!」
「お姫様ごっこ?判った。じゃあ、ミカエラちゃんがお姫様だね。僕は、何をすればいい?王子様?それとも騎士かな?」
ミカエラは、む、と口先を尖らせて、短い腕を組むと、胸を反らす。
「ちあう!ミカ、おおじたま!おにいちゃん、おしめたま!」
幼いミカエラは、まだ自分の名をきちんと呼べずに、『ミカ』と言っていた。
「え…僕、が、お姫様?」
ダリウスが、目を白黒させると、ミカエラは満足そうに、うんうん、と頷く。
「でも、お姫様は女の子だよ。王子様は男の子だし」
ダリウスが親切のつもりで教えると、ミカエラはぷくりと頬を膨らませる。
ただでさえ丸い頬が、落っこちてしまいそうだ。
「いいの!うそんこなんだから!ミカ、おおじたましゅるの!おにいちゃん、おしめたまだから、ねんねちて。おしめたまは、おちろでねむってるのよ」
「お城で眠るお姫様…あぁ、眠り姫だね」
戸惑いながらも、ダリウスはミカエラに手を引かれるままに、薔薇の木の下へとやって来ると、芝の上にそっと横たわった。
外で横になった事など、一度もない。
服が汚れる事が気になるけれど、幼いミカエラに「出来ない」とは言えなかった。
泣かれでもしたら、どうしていいか判らない。
「えぇと…僕は、此処で寝ていればいいの?」
「あい!ねんねちて!」
「判ったよ…」
昨夜も遅くまで教本を読んでいたから、仰向けになると日の光が眩しい。
目を閉じると、脳内をぐるぐると大人達の言葉が回る。
兄ユリシーズの優秀さ、姉オーレリアの聡明さを褒め称える教師達。
ダリウスだって、努力はしている。
なのに、彼等はいつも、ダリウスを褒めているつもりなのか、兄と姉を引き合いに出す。
「流石、優秀なユリシーズ様の弟君ですな!」
「姉君のオーレリア様とよく似て、聡明でいらっしゃる」
人懐こく、初対面の人間であっても直ぐに懐に入れる兄は、愛想がよいだけではなく、文武共に優秀だ。
一見すると嫋やかながら、母に似て芯の強い姉は、曲がった事を許さない一方で、波風を立てずに相手を懐柔する聡明さがある。
兄の事も姉の事も、好きだ。
けれど、兄達を尊敬しているからこそ、彼等を引き合いに出して賞賛されると、自分は彼等の紛い物に過ぎず、『ダリウス』には価値がないのではないか、と言う不安から逃れる事が出来ない。
ダリウスは、自分が人見知りで無愛想で話下手と言う自覚がある。
兄や姉を真似ようと思っても、どうしても上手く出来ない。
このままでは、ノーレイン公爵家に相応しくない。
もっと、学ばなくては。
もっと、努めなくては。
もっと。
もっと…。
疲れた、と思う。
けれど、此処で立ち止まると、兄達との埋めがたい距離が更に開いてしまいそうで、怖い。
もう二度と立ち上がれなくなりそうで、怖い。
周囲の期待に応えられないのが、怖い。
兄と姉の弟なのだから、もっともっと出来る筈だ。
出来なくては、ならないのだ。
ミカエラの相手をしているのも、理想的な貴公子ならば、自分よりも小さな子供の相手をするものだろう、と思ったからだ。
周囲の人間からの目が、気になる。
だが、子供の遊び相手に戸惑っているのは、何も兄達ばかりではない。
ダリウスもだ。
お陰で、冷たい土の上に横たわる羽目になった。
遠くで、幼い声がする。
跳ねるような声に耳を澄ませてみると、
「やや!これがうわしゃのいばらのちろか!しめたま、しゅぐにまいりましゅ!」
回らない舌で、懸命に台詞らしきものを話している。
楽しそうだな。
怖いものなど、何もないのだろう。
あの子の目には、この世界はどのように映っているのか。
先程まで、この庭は、何の変哲もない単なる庭だった。
丁寧に芝が刈り揃えられ、手入れされた美しい薔薇の咲く庭。
けれど、ミカエラの前には、茨に囲われた高い尖塔を持つ城があるらしい。
「わるいどらごんめ!しめは、ぼくがたしゅける!」
はぁぁぁぁ!だか、ほわぁぁぁ!だか判らないけれど、気合を入れる声がしたかと思うと、
「くぅ!まけないじょ!とぉ!てぁ!でゅくし!」
何やら擬音までつけて、戦っている。
地面が微かに揺れるのは、ミカエラが飛んだり跳ねたり大騒ぎしながら、戦いに興じているからだろう。
ミカエラは、「うそんこ」だと言っていた。
夢想と現実の境が判らないわけではない。
遊びは遊びなのだ、と理解した上で、全力で遊んでいる。
「おぉ、うちゅくちいしめよ。おちてくだしゃい」
漸く、静かになった。
直ぐ傍で声が聞こえたと思うと、額に柔らかく温かなものが、ふにりと押し付けられる。
その感触に驚いて目を開けたダリウスの前に、満足そうな笑みを浮かべたミカエラがいた。
「君、今、僕に、」
「ちゅう、ちたの!おしめたまは、ちゅうでおっきしゅるの!おにいちゃん、おっきちて!」
満面の笑み、キラキラと輝く瞳。
教養の為に学んでいるどんな宝石よりも美しい輝きに、ダリウスは目を奪われた。
額に汗を滲ませて息を弾ませながら、頬を真っ赤に紅潮させて、ミカエラは笑う。
太陽にきらりと反射する青味がかった銀髪は、ただでさえ癖っ毛なのに、もつれてくしゃくしゃになっていた。
頬には泥汚れがつき、可愛らしいドレスは何処に引っ掛けたものか、鉤裂きが出来ている。
『普通の』令嬢ならば、泣き出しても仕方ない状況なのに、ミカエラは、嬉しそうに笑っている。
「たのちいねぇ!」
何て、澄んだ瞳なのだろう。
何処までも深く、吸い込まれてしまいそうだ。
この子の目には、どんな世界が見えているのだろうか。
それは、僕の知る世界とは、違うのだろうか。
…見て、みたい。
これまでのダリウスは、周囲の期待に応えなくては、と自らを追い込んでいた。
自分から、「こうありたい」と願った事は一度もなく、目に見えない圧に追い立てられていただけだ。
だから、生まれて初めて自ら抱き、心の奥底から湧き起こった願いに戸惑う。
けれど、その戸惑いは決して不快なものではなくて、見知らぬ世界への期待と、ワクワクした気持ちが湧き起こる。
楽しい、か。
口の中で小さく呟くと、思い切って顔を上げる。
「…ねぇ、今度はミカエラちゃんが、お姫様をやってくれる?」
「あい!」
それから、ダリウスは、生まれて初めて、泥だらけになって転げ回った。
役柄は、ころころと変わる。
遊びの中で、ダリウスは自由で、何にでもなれた。
大声を出して笑い、全身を使って怪物になり、躊躇なく蹴りやパンチを入れて来るミカエラを優しく往しながら、やられた振りをする。
「うそんこ」なのだから、みっともなくても、負けても、現実のダリウスには関係がない。
恥ずかしくも、悔しくも、思わなくていい。
それで、いいのだ。
眠り姫になったミカエラは、薄目を開けて身動きを堪える為にプルプル小さく震えながら、ちっちゃな両手で口を抑え込んでいる。
その下から、ぷくく、と笑い声が聞こえるのに気づかない振りをして、ダリウスはミカエラの額に優しくキスをした。
唇を離すよりも早く、待ちきれずにパッと目を開けて満面の笑みを浮かべるミカエラに、何とも形容し難い温かな気持ちで胸一杯になった。
遊び疲れる、と言う初めての体験に感慨深いものを感じていると、隣で大はしゃぎしていたミカエラの声が、突然聞こえなくなった事に気が付く。
「ミカエラ?」
「……すぅ」
ミカエラは、座ったまま、眠り込んでいた。
地面に倒れ伏しそうな体を慌てて抱き上げると、あんなに暴れ回っていたのに、七歳のダリウスでも抱えられる位、想像以上に軽く、柔らかい。
幼い子供の、自分よりも高い体温。
甘く優しい香り。
ふに、と肩に押し付けられた頬の膨らみ。
胸の中に湧き上がったものを言葉にするなら、愛おしさだった。
生きている。
この子は、全身全霊で生きている。
生きる事は、こんなにも楽しいのか。
世界は、こんなにも美しかったのか。
この日、ダリウスの世界が変わった。
***
『もしも、あの時、あの決断をしていなければ』。
私にとっては、二十五歳のあの日が岐路だった。
名ばかりの夫と別れる決断をしなければ。
心から慕っている人の手を取る決断をしなければ。
私はきっと、今の幸せを手にする事は出来ていない。
幸せは、決して向こうから歩いて来てはくれない。
ならば、そう。
こちらから、迎えに行けばいい。
自分の幸せは、自分にしか生み出す事は出来ないのだから。
END
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3歳の頃 のミカエラ、めちゃ可愛い❤️悶えてます(*/∀\*)
ちゅうする ミカエラに翻弄される ダリウス… 頬が緩みます 。可愛すぎる♪ その純粋な瞳と姿にやられましたね。 ダリウス 射抜かれた…!💘
きょうだい達に対するコンプレックスから自分で自分を追い込んで プレッシャーをかけていた…… そのダリウス の世界を ミカエラが壊してくれた。 ダリウスはミカエラ から 生命を感じたのかな…。
前話で 、ミカエラがダリウスに外見的に引け目を感じるのは分かります…。 でも ダリウス からすると全然そんなこと 関係ないですよね 。
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互いの隣は長い年月をかけて得た場所 ……その想いは深くて強い。 引け目を吹き飛ばすぐらいの力強く、甘々な愛の言葉を言い続けてくれると思ってます (笑)❤️
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その場所に立つ為に カッコ良く決めてくれた!素敵でした💐神回です。😊
余談で…
アルフォンス様、 魔性の天使💕 可愛いから、ゆるす(笑)(*>∀<*)
アラベラ様も 言う言う、ジャブ かましてくれてますね。
ユリシーズ様、 公明正大に 堂々と ミカエラのこと語ってくれた。
ダリウス、 共に並んで 力強く、 意志を示してくれた✨ そしてカオス状態の 園遊会を 、ユリシーズ様がしめてくれましたね✌️